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間章Ⅳ:商学部三年 蓮見陽希の場合

 ふう。俺はこのゲームが開始されてから三体目になるゾンビの頭を破壊し、動かなくなったことを確認すると息を吐いた。

 俺は血まみれになった手を汚れまみれになった白シャツでぞんざいに拭う。袖と付属のタイの原色の柄が好みど真ん中で一目惚れして買った服だったが、ここまでゾンビの体液やら血液やらで汚れてしまってはもう捨てるしかないだろう。まあ、服を捨てるという行為も最後まで勝ち残って無事生還できなければできないことなのだけれども。

 比較的早い段階でポイントと交換した包丁は濁った色のゾンビの血と脂で汚れてしまっていて、使い物にならなくなってきてしまっていた。今もどちらかというと無理やり刃先をゾンビの頭部に押し込んで、勢いと体重を活かして脳味噌ごと頭蓋骨をへし切った形だった。

 この戦法でまだ戦えなくはないが、そろそろ他の武器が欲しい。「GJ」「おつおつ」俺を労うコメントに対してガッツポーズを作って応えて見せながら、配信画面上部に表示されたポイントを確認する。

 十万と八千ポイントと少し。それが今の俺の手持ちのポイントだった。

 俺は包丁をズボンのベルトに挟んで利き手を開けると、左手首につけたブラックとゴールドを基調としたごつごつとしたデザインのスマートウォッチに指先で触れる。

 ゲーム開始時に大雅から送られてきたアイテムカタログを開くと俺はページを繰っていく。

「鉈……は三万ポイントか。悪くねーけど、せっかくならもう少しリーチが欲しいよな。リーチだけ見たら、包丁と大して変わらないし。んで、スコップは七万五千ポイントでバールが九万八千ポイントか。んー、迷うな、お前らどっちがいいと思う?」

 俺が視聴者たちに意見を求めると、コメント欄は二つに割れた。それを眺めながら俺は悩み続ける。

 スコップのほうが消費ポイントは手頃だが、振り回し続けるには少々重い。今の手持ちポイントでは少々厳しい感はなくもないが、バールの方が取り回しはしやすい。

(もうすぐ二十一時のランキング発表か……けど、どうせポイント一万も稼げてねえ奴くらいいるだろ。香坂と行動してる成瀬はともかく、和泉とかこういうの下手くそそうだしな)

 それなら、今手持ちのポイントで新しい武器を交換してしまっても、どうにかなるだろう。だんだんとゾンビと遭遇する頻度が上がってきている今、少しでも早く新しい武器を手にして安心したい。

(よし、決めた。バールにしよう)

 俺はバールの画像の下に表示されたアイコンをタップする。ここまでゾンビと何回も戦闘を繰り返してきて勘所も掴めてきたし、バールのポイント分くらい取り返せるだろう。かこん、天井が開き、上から降ってきたバールを俺は危なげもなく受け止めた。

 俺は手の中のバールの感触を確かめながら、ゾンビを求めてフロアの中を彷徨い始めた。この決断が吉と出るか凶と出るかこのときの俺にはまだわかっていなかった。


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