第二章:ファック・マイ・ライフ⑦
二十時のランキング発表が終わった後、あたしは先ほど最下位だった二年の神代星那がいた場所に足を伸ばしていた。
先ほど、香椎製薬の社員らしき白い防護服姿の男たちに連行された際に、抗って暴れた星那の手から何かが転がり落ちたのが、大雅からの定時連絡で共有されてきた映像でちらりと見えた。星那が落としたものが有用なアイテムであれば、回収しておきたかった。
(別に大雅は、他の奴らの落としたものを回収して使うことは禁止してないしね。ポイントだって有限なんだし、使わないで済むところは使わないでいかないと)
このゲームの勝敗を分けるのは動画配信で稼いだポイントだ。生き残るためには稼いだポイントでアイテムと交換し、更にポイントを稼ぐ努力をしなければならない。要は手持ちのポイントの運用がキモになる。
こうやって他者の残したアイテムを漁って回るあたしの動画は、あたしの動向が気になるのか視聴者数は多いが、いいねはそこまで多くない。まあ、やってることを考えればそれもそうかとは思う。あたしが生き残るためには、ポイントの使用を控えて溜め込み続ける必要があった。
階段を上り切ると、同じような小部屋が続く三階の廊下の真ん中に、何かきらきらと光るものが落ちていた。あたしは辺りに何者の気配もないことを確認すると、あたしはそれを拾い上げる。
「『ゾンビコロリン』……」
メタリックグリーンのスプレー缶にはダサい創英角ポップ体ででかでかとそう書かれていた。しかもレインボー。
これ本当に効くのか、と思いながらあたしはスプレー缶を振ってみる。ちゃぷちゃぷと缶の中で液体が揺れる音がして、まだそれなりに容量が残っていることをあたしは知る。
あたしはスプレー缶をぐるりと回して、細かい字で書かれた説明書きにざっと目を通す。どうやら使い方は害虫駆除のスプレーと同じでいいようだが、本当にそんなのでゾンビを退けられるのか。スプレー缶の下部に貼られた『サンプル品』のラベルも相まって、あたしは少々不安になる。
(まあいっか、気休め程度にでも持っておこう)
そう思い直して、あたしは黒いロングTシャツの胸ポケットに小ぶりなスプレー缶を突っ込んだ。他に何かないかと床を見下ろしたが、安っぽい天然石のピアスが転がっている他には何もない。
(とりあえず、他も当たってみるか。もう十人くらいやられてるし、違うとこにもなにかあるかも)
あたしは透明なクリスタルのピアスをスニーカーの底で踏み潰す。ぱきっと軽い音を立てて石が砕けたのを確認すると、あたしは廊下を奥へと進み始めた。




