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第二章:ファック・マイ・ライフ④

 二階の廊下を歩いていると、あたしは誰かがゾンビと争ったらしき痕跡を見つけた。

 散乱した小物類。放り出された真新しいナイフ。床を汚す、ゾンビのものと思われる海松色の体液。被害者の元と思われる赤や透明の液体も点々と床に模様を描いている。

 この被害者はゾンビになってしまったのだろうか。それとも無事にどうにか逃げおおせたのか。しかし、この遺留品の数々を見る限り、おそらく前者だろうと思われた。

 あたしはちらちらと辺りに視線を走らせる。曲がり角から首を出して、階段のほうへと続く通路を確認すると、青い模様の入ったてろてろとしたシャツに身を包んだ後ろ姿が体をかくつかせながら遠ざかっていくのが見えた。ばたんばたんとした歩き方からして、おそらくあれはゾンビになった後だ。

(――ふうん、ここで被害に遭ったのは雪平か)

 なるほどね、とあたしは独りごちる。雪平があたしの存在に気づいている様子はないし、雪平を襲ったゾンビももうこの辺りにはいないようだ。身の回りに危険がないことを確認すると、あたしはその場で膝を降り、散らばった遺留品たちを検めていく。

 ミントタブレットの黒いケース。試しに振ってみたが残りが少ないのか、かちゃかちゃという軽い音しか聞こえてこない。こんなものは持っていても仕方ない。

 片足だけのレザーサンダル。こんなのはますますいらない。

 風俗の広告が入ったぐちゃぐちゃに縒れたポケットティッシュ。適当に折り畳まれた合宿の日程表。何だかいらないものばかりだ。

(役に立ちそうなものはこのくらいか)

 そう思いながら、あたしは床に転がった真新しいナイフを拾い上げる。さっき、地下一階の階段付近にも誰かがゾンビと争ったらしき痕跡があったが、そちらにはずたぼろになったシュシュが一つ落ちていただけでスカだった。ほとんどがいらないものだったとはいえ、今回は収穫があっただけ上出来だ。

 あたしはナイフの感触を確かめながら、立ち上がる。あたしは黒のバケットハットを目深に被り直すと、元来た道を戻り始めた。


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