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オーガニックな想い、満タンで(鈴村優子)

ガソリンスタンドスタッフ:優子の恋愛模様

 新城市にあるガソリンスタンドで、鈴村優子は今日も制服姿で給油ノズルを握っていた。


 背は低めで、作業着の袖は少し余り気味。油の匂いと風にさらされながら働く日々だが、優子はこの仕事が嫌いではなかった。なぜなら、この仕事には――あの人と繋がる理由があるからだ。


 優子の趣味はオーガニック料理。その原点は、高校時代に初めて足を踏み入れた、地元のオーガニックカフェだった。色鮮やかな野菜のプレート。丁寧に盛り付けられた料理。そしてもう一つ、優子の視線を奪った存在がいた。


 当時、店でアルバイトをしていた二つ年上の男性――野田。柔らかな物腰で料理を運ぶ姿。忙しい中でも、客一人ひとりにきちんと向き合う姿勢。料理も、人も、全部が憧れだった。


 それから年月が経ち、野田はその店の社員に。優子はガソリンスタンドで働くようになった。立場は違う。場所も違う。それでも、優子は今もあの店に足しげく通い続けている。


 そして最近では、野田がカフェの業務車両の給油やメンテナンスを、優子の店に任せてくれるようになっていた。優子が常連客であることが理由かは分からない。でも、自分の行動で――少しだけ、距離が縮まった気がしていた。


 そんなある日。白い業務車両がスタンドに入ってきた。


「あ……」


 遠目に見ただけで、分かる。運転席から降りてきたのは、野田だった。


 ――今日は、車検の納車日。


 優子の心臓が、目に見えないほど大きく跳ねた。


「ほら、優子ちゃん。彼氏が来たよ」


 背後から、ケイコ先輩の楽しそうな声。


「ちょっと先輩! 彼氏じゃないですから! ……ま、まだ」


 最後の一言が小さくなったのは、優子自身が一番驚いていた。受付に向かう野田と目が合う。


「あ、鈴村さん。今日はよろしくお願いします」


 変わらない、穏やかな笑顔。


「は、はい! こちらこそ……!」


 カフェのエプロン姿は何度も見てきたはずなのに、こうして仕事着で向き合うと、なぜか胸がざわつく。


(私、油まみれの作業着なのに……)


 受付中、横からケイコが絶妙なタイミングで口を挟む。


「二人、ほんとお似合いですよねぇ」

「せ、先輩!」

「えっ、そうですか? でも、こんな可愛い女性、僕にはもったいないですよ」

「あら、『可愛い』って。良かったね、優子ちゃん」

「野田さんまで! 先輩の冗談に乗らないで下さい!」


(ちょっ……『可愛い』って、嬉しすぎるんだけど!)


 野田はケイコ先輩を見て少し照れたように笑った。その反応だけで、優子の心拍数は限界を迎えそうだった。優子は赤面して下を向いてしまい、野田の顔を直視できなかった。代わりに、ケイコ先輩が対応をフォローしてくれた。


 ――私は、まだ“憧れる側”。綺麗な料理を作る人。皆から慕われる接客ができる人。そんな野田の隣に立つには、今の自分はまだ足りない。


 それでも。誕生日が近づくにつれ、優子の心は決まっていった。このまま憧れているだけで、終わりたくない。背中を押したのは、やはりケイコだった。


「優子ちゃん、もうすぐ誕生日なんでしょ? 人生で一番、告白しやすい日じゃん」

「……先輩、軽い」

「軽くないよ。勇気を出す理由がある日って、大事」


 その言葉が、胸に残った。


 ――そして、誕生日当日。カフェの閉店後。灯りが落とされたカフェの駐車場で、優子は野田を待っていた。事前に連絡は入れてある。


『野田さん、明日の夜、伝えたい事があります。駐車場で待ってます』


 制服ではなく、私服。オーガニック料理を学ぶきっかけになった、あの店で。程なくして、野田が現れる。


「鈴村さん、待たせてごめん」

「い、いえ……」


 一瞬、言葉に詰まる。この人の前では、今でも少し子どもに戻ってしまう。それでも、優子は一歩踏み出した。


「あの……私、野田さんのこと……ずっと好きでした」


 声は震えたが、視線は逸らさなかった。


「このお店も、料理も……野田さんも。全部、私の原点です。多分、初めて野田さんを見た時から憧れてました。それが、いつの間にか『好き』に変わっていって……」


 深く息を吸う。


「今日は、私の誕生日です。今までは一人だったけど……今日からの一年は、野田さんと一緒に進んでいきたいんです。お願いします」


 一瞬の沈黙。


 野田は驚いたように目を瞬かせ、それから困ったように笑った。


「……ずるいな、それ」

「え?」

「そんな真っ直ぐ言われたら、逃げ場ない」


 少し照れたように、頭をかく。


「正直に言うとさ。俺も、鈴村さんのこと……気になってた」


 優子の目が大きく開く。


「でも、仕事の立場とか、年齢とか。考えすぎて、踏み出せなかった」


 一歩近づいて、優しく言った。


「一緒に進みたい一年か……いい言葉だね。鈴村さんにそんなふうに言ってもらえるなんて光栄だよ。俺からも是非お願いしたい」


 優子の視界が、一気に滲んだ。


「……本当、ですか」

「本当」


 気付いたら、優子は野田の腕に包まれていた。


(野田さん……この人を好きになって良かった)


 憧れだった人の体温が、自分を包んでくれている。


 オーガニック料理も、仕事も、恋も。すぐ完璧にならなくていい。これから、一緒に育てていけばいい。優子はそう思いながら、満面の笑顔を野田の胸に預けた。


- キャラクター プロフィール -

名前:鈴村優子すずむらゆうこ

職業:ガソリンスタンドスタッフ

好きな事:オーガニック料理

年齢:24

身長:153㎝(5'0")

体重:53㎏(117lb)

誕生日:11月15日

星座:蠍座

血液型:O型


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