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■2026年4月7日
公園には遅咲きの桜がある。決まって毎年のこと。春の雨で葉桜になった頃、一本だけ満開になる樹があるのだ。それはきっと、まだ咲いていたかったという桜たちの名残なのだろう。
初夏みたいな暖かさの来る直前、少し肌寒い日。僕は桜の幽霊みたいな花を見ながら、あたたかい缶コーヒーを飲む。
お題・名残の桜
■2026年4月7日
僕は完璧な人生を送らないといけない。なので女優を雇い、恋愛の練習をすることにした。おかげで今ではどんな綺麗な女性に言い寄られたって動揺することはない。さあ後は実際の恋愛をするだけだ。
「どうしたら良いかな?」
「恋というのは唐突に落ちるものですから」
そ、それはどうやれば良いんだ?
お題・恋愛の練習
■2026年4月8日
「このはしわたるべからず」
と看板が立っている。
だが「橋の端」とは何なのか。我々は橋の3Dモデルを作成。いかにすれば渡れるか物理演算を繰り返した。結果できた物理のバグった映像の数々。
「それを見た桔梗家さん、どうなった?」
「正気を失ったみたいでさ。『あちら』から気が帰ってこない」
お題・バーチャル橋
■2026年4月8日
近頃の小説はどれも流行を真似たようなものばかりだ。どいつもこいつもオリジナリティがない。そこで私は全く新しいアイデアを思いついた。これで文学に革命を起こすのだ。
「と言ってましたよ」
「春になると、そういうのが良く現れるよね」
「そのアイデアもごく普通」
「よくあるパターンさ」
お題・普通の文学
■2026年4月8日
ヒーローが結婚した。うちも悪の秘密結社と言うが、表向きはちゃんとした会社だ。挨拶を送らないわけにいかない。
「貴様に死を」新婚にこれはないな。
「ますますのご活躍を」うちがやられるじゃん。
どうしたら結婚祝いになるんだ。
「それは貴様ら悪が滅ぶことではないか?」
貴様、なぜここに!
お題・悪の結婚祝い
■2026年4月8日
塾の帰り、上着を脱いで自転車を走らせる。清明の空、満天の星。まだ風が肌寒いけど大丈夫。今の僕ならきっとへっちゃらだ。
春への期待感。新たな出会い。僕の胸の内は熱くなっている。夜の空気を吸い込んで冷やさないと、破裂しそうだ。
微かに緑の香り。楽しい一年になりそうだ。
お題・清明の春
■2026年4月9日
結婚して分かった。妻は人の言うことを聞くだけの、空っぽな人間だった。実家の金目当てに結婚したんだけどね。手に入れられそうにないから別れたんだ。
と自慢気に語る同僚。帰り道、あいつがいなくなってから皆で話した。
「さも悲劇の主人公みたいに語ってた癖して。なんて空っぽな理由の離婚」
お題・さよなら空っぽ
■2026年4月9日
弟子が仕事に失敗して、しょげている。そこで俺は師匠として教えてやった。
「いいか、仕事は段取りが八分という。お前は今回、準備を怠っていたから失敗したんだ。わかるな?」
はいと元気よく返事する弟子。
くう~、これこれ。この台詞を言いたくて前から構えてたんだよ。準備してた甲斐があった。
お題・段取り八分
■2026年4月9日
私が子育てを失敗するわけがない。なのに受験に落ちたのは、そうだ、ゲームのせいだ。そこで私は子供のゲーム機を目の前で壊してやる。以来うちの子は真面目に勉強し就職もした。気づけば私も年寄りに。
だけど、あの時の復讐だと介護をしてくれない。ほら見たことか。やっぱりゲームは教育に悪い。
お題・ゲームは教育に悪い
■2026年4月9日
独裁者は怒っていた。国民がポンポン子供を産みすぎる。だから我が国は貧しいのだ。そこで人口の抑制計画を立てる。
すると今度は人口が減りすぎた。独裁者は人口を増やすよう命令する。だが今度の計画は上手く行かない。
「なぜだ!」
「人が減りすぎて、計画を立てられる者がいません」
お題・人口計画




