7話
アレクリード王国の祖は精霊と言われ、神殿では精霊神を崇め、自然を愛する国づくりがなされている。
神殿は、精霊神を崇める神官が治めており、神官達は人々の怪我を癒したり病気を治療したりという聖力という能力を有している。
ルーダ王国とはそもそも崇める神が違う。
私は神殿と王国との繋がりについても勉強をしなければと思っていたのだけれど、簡単にレイス様が説明をしてくれた。
「アレクリード王国の王家と神殿は仲はいいんだ。ただ、どちらの権力が強くなりすぎてもいけない故に、常に均衡が図られている。そしてミラ嬢、それ故に聖女という君を神殿も欲しがるだろうと予想しているんだ」
「欲しがる。なるほど……」
聖女という存在は、神殿側からしてみれば利用したいと思うだろうなとは往々に想像できる。
「だからこそ、早々に婚約を結びたいと思っていたんだ。先ほど、謁見の間にて正式に父上の許可は得られた。故にあとは書面として婚約の証明証を提出すれば、いくら神殿であろうとも勝手にミラ嬢を連れていくことは出来ない」
あぁ、だからレイス様は急いで国王陛下との謁見の日取りを決めていたのか。
納得がいくと同時に、では何故事前に自分に説明しなかったのだろうかと疑問を抱く。
「どうして事前に相談してくれなかったの?」
すると、レイス様は視線を伏せ、私にだけ聞こえるように小声で呟いた。
「……君との婚約の方に浮かれていて、そちらの説明を、忘れていた」
私は目を瞬かせる。
レイス様は耳元まで真っ赤に染まり始め、うつむいたまま呟くように謝る。
「すまない」
レイス様のご家族はこちらの方を怪訝に見つめ、アグネスお母様が口を開く。
「どうかしたの?」
うつむくレイス様の姿に、私はまさかの理由に笑いそうになるのをぐっと堪える。
「いえ、なんでもありませんわ」
私の可愛いうさぎの王子様は、たまに垣間見えるこういうところが可愛らしい。
そう伝え、その後の時間も恙なく過ぎていった。
あまりにもレイス様の家族全員が歓迎ムードである。
私にはそれがひっかかり、その場を借りて、しっかりと話をしようと私は顔を上げて切り出した。
「あの、少しお尋ねしても、もよろしいでしょうか」
すると、皆がこちらへと視線を向け聞く姿勢を取ってくれる。
私は小さく息を整えてから背筋をしっかりと伸ばして尋ねた。
「私は、ルーダ王国で色々あり、顔に傷もあります。本当に、私でいいのでしょうか」
事前にルーダ王国であった一件については手紙にて知らせてあるとレイス様からは聞いている。
昨日レイス様は国王陛下に二人で謁見したとのことだったのでその時に補足の説明もされているはずだ。
だからこそ、ご家族は私に何があったかは知っているだろう。
知っていてどうしてこんなにも歓迎してくれるのだろうか。
その理由を、ちゃんと面と向き合って確かめておきたかったのだ。
すると、国王陛下が口を開いた。
「全てを知った上で、私たちはミラ嬢をレイスの婚約者として歓迎している。顔の傷は……痛かっただろうな……私たちは気にしないが、神官に頼めば治療も出来るだろう」
アグネスお母様も口を開いた。
「私たちはちゃんと家族で話をして貴方を家族に迎え入れるつもりよ。何も心配しないで」
それにお姉様達やお兄様達も同意する。
けれど私にはやはり、納得が出来ないのだ。
「何故なのでしょうか。アレクリード王国の王家へ、私のような訳ありで傷のある娘は歓迎されるわけがないと、そう、思うのです」
レイス様のご両親であるから、優しい方々なのだろう。
だからこそ、無理して受け入れてくれているのではないだろうか。
すると、皆が首を横に振る。
「ミラ嬢。ルーダ王国で博雅姫と名高かった君のことは我が国にもその名は轟いていたのだ。我が息子が連れ帰ると聞いた時にはよくやったと思ったくらいだ」
「そうよ。それに私は恋愛事に興味のなかったレイスが連れて来た貴方を歓迎するのは当り前よ。私はね、息子の見る目を信じているの」
お姉様達もそろってうなずきながら言う。
「私はそれに、ただ単に可愛い妹が欲しかったと言うのもあるわ」
「私もー! カルメラお姉様に同意だわ。顔の傷は関係ないわ。それで何か言う人がいたら私達のところにいらっしゃいな。おほほほほ。目に物見せてあげるわ」
それにお兄様達が怖い怖いというように顔を少し引き攣らせつつ口を開く。
「ミラ嬢、聖女という地位は我が国では公爵家と相違ない位置だ。だからこそ地位などで心配しているのであれば問題はない」
「そうそう。それにそもそもね、レイスは頑固で真面目で決めたことは曲げない」
同意するように皆がうなずく。
「そうだな」
「「「「そうそう」」」」
私は、レイス様のご家族を真っすぐに見つめた。
「……私で、いいのでしょうか」
「「「「「「もちろん」」」」」」
笑顔で受け入れてもらえて、私はほっとして、肩の力が抜ける。
自分で思っていた以上に緊張をしていたようだ。
「ありがとう、ございます」
「さぁさぁ、ミラ。顔を上げて、これからは家族でしょう」
アグネスお母様の声は優しい。
家族……。私は顔をあげて皆様を見て、それから少し泣きそうになった。
私に、こんな素敵な家族が出来るのか。
「はい。ありがとうございます」
瞳に涙が浮かぶけれど、私はそれをこぼさないように堪え、そして笑顔を向けた。
「はい。お父様、お母様、お兄様、お姉様、どぞよろしくお願いいたします」
そう告げると、皆が嬉しそうに優しく微笑む。
レイス様の家族はなんて温かいのだろう。
家族となる人達の温かさを感じ、私は胸の中がいっぱいになったのであった。
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