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【書籍2巻9/25発売】追放後の悪役令嬢は、森の中で幸せに暮らす~うさぎの呪いを解きたくない~  作者: かのん
第二章

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6話


 翌日、昨日同様にサマンサが私の支度を手伝ってくれた。


 本来ならば、五人ほどの侍女の手で整えられていく仕度。けれど、私が人との関りが苦手なため、レイス様がサマンサ一人に頼んだとのことであった。


 サマンサは王妃殿下付きの筆頭侍女だそうで、その仕事は段取り欲進んでいく。


「貴方にも仕事があるのに、私のことまでごめんなさいね」


 そう告げると、サマンサは最後私の胸元にコサージュを付け、首を横に振る。


「いいえ。滅相もございません」


 鏡に映る私は、今日は蝶々のデザインのドレスを身に纏っている。


 明るい色合いのドレスはとても可愛らしく、くるりと回れば花が開くようにドレスが広がった。


「よくお似合いです」


「ありがとう」


 部屋をノックする音が響き、レイス様が私と揃いの色合いの衣装を身に纏って現れた。


「まぁ、素敵ね」


「ミラ嬢こそ。とても可愛らしい。母上とは趣味は合わないと思っていたのだが……こうして可愛らしく着飾る君を見ると、母上の血を私も引いていたのだと実感するよ」


「まぁ」


「昔は母上にひらひらの洋服を着せられそうになるたびに、逃げていたんだ」


「ふふふ。想像できるわ」


 幼い頃のレイス様もきっと可愛らしかっただろうな。


「さて、では行こうか」


「えぇ。覚悟は決まっているわ」


「ふっ……あー。感慨深い」


「え?」


「君とこうして一緒にいられることが。まぁ、まだうさぎの呪いは完全にとけてないんだがな」


「それは、そうね」


 挨拶が終わって落ち着いたら、薬草をそろえてレイス様の解呪薬も調合しなければいけないだろう。


 薬を服用していけば呪いも解けることだろう。


 ただ問題は、私がうさぎ姿が結構気に入っているということ。


 レイス様は不便だろうが、自由自在にうさぎ姿になれたらいいのにな。


 そんなことをたまに考えてしまう。


 レイス様と並んで廊下を歩いていくのだが、今日は渡り廊下には騎士が立っていた。


 ご令嬢達の姿もないようだ。


「サマンサが手配を頼んだ。昨日はすまなかったな」


「いいえ。別に、問題ないわ」


 そう答えながらも内心少しほっとしていた。やはり、敵意を向けられるような視線は受けたいものではないから。


 そして謁見の間へと着くと、私は深呼吸をする。


 扉が開かれると、扉の中には王座があり、そこに国王陛下、そしてレイス様のお兄様と思われる二人の男性がいた。


 アグネスお母様やお姉様達はいないようだ。


 緊張しながら、私はレイス様にエスコートをされて前まで進み出ると、深く一礼を行う。


「堅苦しい挨拶はなしだ。無事に帰国できてよかった。今回は色々あったようだな」


 低い国王陛下の声は、どこかレイス様に似ていた。


 そんな国王陛下に向かって、レイス様は背筋を伸ばすとはっきりと告げた。


「本日は紹介したい女性を伴っております。彼女の名前はミラ嬢。私は彼女との結婚を考えております」


「そうか。認めよう」


 その言葉が聞こえた瞬間、私は聞き間違いかと思った。


「ありがとうございます」


 そして当たり前のように、返事を返すレイス様にも驚き、視線を向ける。


 今、認められたのか。


 あまりにも早くないだろうか。


 ふわりと森の香りが鼻をかすめていき、私は戸惑いの中で一瞬動きを止める。


 本当に一瞬だけど、森の中の香りがしたのだ。


「どこから……?」


 周囲を見回しても、ここは部屋の中であるし窓も開いていない。


 そう思っていると、国王陛下が私の方へと視線を向けると言った。


「ルーダ王国での一件、話しはすでに聞いてる。大変であったな」


「い、いえ」


 とんとん拍子に進みすぎて、現状が呑み込めないでいるとレイス様のお兄様が前に出た。


「私は第一王子でありレイスの兄のアルゼウスだ」


「私は第二王子でありレイスの兄のダミアンです」


 二人はこちらに優しい視線を向けると微笑んだ。


 アルゼウスお兄様は、国王陛下によく似ている。凛々しく、長い髪を後ろで縛っていた。


 ダミアンお兄様はアグネスお母様似のようだ。垂れ目であり肩ほどまでの髪は真っすぐに切りそろえられている。


「さて、ではそろそろ隣の部屋が騒がしくなってくるころだ」


「移動しましょうか。ミラ嬢、内扉から隣の部屋へと移動しましょう」


 二人に促され、一体どうなっているのだろうかと思っているとレイス様が私の手を引いた。


「堅苦しくてすまなかったな。アレクリード王国の王族は国王陛下に許しを謁見の間にて正装で正式に受ける義務があるのだ」


「え?」


「昔からの仕来りであり、守らないと天罰が下るらしくてな。さぁ、隣の部屋へ移動しよう」


「え? 天罰?」


 戸惑っている中で私は手を引かれて隣の部屋へと移動をすると、そちらはたくさんの花で部屋が飾り付けられており、食事の席が用意されていた。


 そしてそこにはアグネスお母様やお姉様達の姿もあった。


 先ほどの森の香りは、ここから? そう考えたものの、花の香りと森の香りとは違う。


 一体あの香りは何だったのだろうか。


 そう思っていると、アグネスお母様が私の方へと駆けてきて、私の周りをくるくると回る。


「まぁまぁまぁ! 本当に可愛らしい子。さぁ、座って座って。今日はお祝いをしましょう。きっと精霊様が祝福してくれるわ」


「精霊?」


「えぇ。アレクリード王国の祖は精霊。神殿は精霊神を崇めているの。きっと精霊様もミラを大歓迎している頃よ」


 すると二人のお姉様が私の両脇に来て笑顔で言った。


「そうそう。さっきの謁見の間での仕来りも精霊神への挨拶らしいわ」


「堅苦しくってびっくりしたでしょう? でもここからは気楽にね」


 すると、二人のお姉様達を割って、お兄様達が前へとやってくる。


「ミラ嬢、この二人はうるさいから、いつでも逃げておいで」


「そうですよ。私達、お兄様はミラ嬢のいつでも味方ですからね」


 二人のお兄様達が微笑むとレイス様にやはり似ていて、私は血が繋がっているのだなとそう思った。


 五人兄妹の一番下に生まれたレイス様。


 きっとこのお兄様お姉様方にたくさん可愛がられてきたのだろうなと想像をしていると、私のことをレイス様が後ろから抱きしめながら言った。


「……あまり近寄らないでください。私のミラ嬢です」


 むすっとした様子のレイス様。それに、お兄様とお姉様、アグネスお母様までもが笑いをこらえるように唇を噛む。


 その様子に、国王陛下は息をつくと、真面目な声で言った。


「……我が子が妻となる女性を見つけられたことはめでたい。だが、ここからしっかりと対策は立てなければならんぞ」


 対策?


 首を傾げる私をレイス様は促し、食事の席へと座る。すると他の面々も真面目な面持ちで席へとついた。


 机を囲みながら、国王陛下は静かに話を続ける。


「ミラ嬢が聖女であるということは、我が王国にある神殿も口を出してくるだろう。しっかりとその話もせねばならんぞ。私の可愛い娘になるのだからな。神殿に取られてなるものか」


 皆が無言でうなずいた。


 真面目な話なのは分かるのだけれど、国王陛下からも歓迎されている雰囲気に、私は内心動揺し続けていた。


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