5話
そこに現れたのは、二人の女性であり、身長が私よりもかなり高い。
一体どなただろうかと思っていると、二人はこちらへとつかつかとこちらへとやってくるとキラキラとした瞳で私のことをじっと見つめた。
「可愛いわ」
「予想以上よー!」
「レイスってこういう子が好みだったのね。最高だわ」
「お母様とやっぱりレイスは好みが似ているのねー!」
一体どなただろうかと思っていると、アグネスお母様がため息をつきながら言った。
「レイスの姉のカルメラとジョセフィーヌよ。私の娘。カルメラは公爵家に嫁ぎ、ジョセフィーヌは子爵家に嫁いだの」
私は慌てて立ち上がり一礼しようとしたのだけれど、アグネスお母様にそれを止められる。そして、そんなこと気にしないんといった様子で、カルメラお姉様とジョセフィーヌお姉様は私を挟んで座る。
「よろしくね。あぁぁ。嬉しいわ。私妹が欲しかったの」
「私も私も! 可愛いわ! ねぇ、これからよろしくねー!」
アグネスお母様そっくりなその雰囲気。ただ、見た目はレイス様によく似ていて、ドレスの装飾品やアクセサリーも最低限といった様子であった。
「ミラ。分かるかしら。この子達ったらね、全然、可愛くないのよ」
二人はその言葉に肩をすくめて、まったく気にしていない様子でぺらぺらと話始めた。
「お母様と一緒で、可愛いは好きだけれど自分が可愛くなりたいわけではないのよ」
「そうそう。お母様ごめんあそばせねぇ~」
「それにしてもお母様、自分だけ抜け駆けをしてミラを連れ出したのでしょう? ずるいわ。あ、ミラって呼んでもかまわないかしら?」
「私もミラって呼びたいわ。いいかしらぁ?」
勢いに押されながら、私はうなずき言葉を返す。
「もちろんです。あの、どうぞよろしくお願いいたします」
「私達のことは気軽にお姉様って呼んでね」
「えぇそうね。お姉様って呼んで。それで困ったことがあったら何でも頼って? 私達、妹がずっとほしかったからすごく嬉しいのよー!」
勢いよく話続けるお姉様達に合図地を打っていると、アグネスお母様が言った。
「あら、困ったことがあったら一番にアグネスお母様に頼るのよ?」
「「あ、ずるーい」」
「王妃特権よ」
あまりにも賑やかな楽しそうな様子に、私は思わず笑いをこぼす。
「ふふ」
すると、三人がこちらを驚いた表情を浮かべて止まる。
「あ、申し訳ありません」
慌ててそう言うと、お母様が首を横にブンブンと振って言った。
「いいのよ。いいの。あ、ほら、お菓子も食べて?」
「こちらも食べて? 美味しいわよ」
「食べさせてあげましょうかぁ?」
こちらの世話を一生懸命に焼こうとしてくる姿がレイス様と重なる。
うさぎ姿のレイス様が脳内を駆け巡っていくのだ。
「ふふ。いえ、大丈夫です。でもレイス様とよく皆様似てらっしゃって、ふふふ。ご家族なのだなぁと思いました」
すると、三人は顔を見合わせた後に困ったような表情を浮かべる。
「あら、本当に?」
「レイスと……あの、冒険好きと似ている、ねぇ」
「あまり嬉しくはないわー」
そう告げられて、私は慌てて言った。
「えっと、その、レイス様本当にお優しくて、困ったことがあるとすぐに助けてくれるのです。ですから、そうした優しい姿が、似てらっしゃるなって思って」
そう告げると、今度は三人がぎょっとしたような顔を浮かべる。
「レイスが、優しい……」
「ごめんなさいね。私、息子が女の子に優しく接する姿見たことがないわ」
「私も。レイスって女の子には基本、無。よねぇ?」
三人の言葉に私は首を傾げる。
「無、ですか?」
「「「えぇ」」」
無? あのぴょんぴょこと掃除したことを自慢げに話すレイス様が?
休憩をちゃんとするのだぞと、私をすぐに休ませようとするレイス様が?
そう言えばと、先ほどご令嬢方に話しかけられた時の対応を思い出す。
「……知らなかったのですが、もしや、レイス様は女性が苦手だったのですか?」
そう尋ねると、三人は眉間にしわを寄せ考え込む。
「苦手……」
「そういうことではない気がするわ」
「私もそう思うわー。苦手というか面倒くさがって関わらないと言うかー」
今までそんな素振り感じたこともなかった。
もしかしたら無理させてしまっていたのだろうか。
―――――コンコン。
「レイスです。ここにミラ嬢を連れてきたことは分かっています。入りますよ」
乞えと同時に扉は開き、レイス様が姿を現すとずんずんとこちらにやってきた。
そして、私はひょいと抱き上げられてしまう。
「きゃっ……あの、どうしたの?」
レイス様は三方を見るとはっきりと告げた。
「可愛いのは分かります。可愛がりたい気持ちもわかります。ですが、私の恋人です。勝手に連れ去らないでいただきたい」
恋人……。
私の頭の中はその言葉で埋め尽くされ、顔に熱がどんどんと込み上げてくる。
恋人。そうか。そういう関係になるのか。
知らなかった。
「あらあらあら。恋人!」
「きゃー! 素敵!」
「ねぇ、レイス。あなた今まで全然恋愛興味なさそうだったのにどういう心境の変化?」
レイス様は深々とため息をつく。
「彼女を愛し、大切にしたいとそう思っているだけです。正式な謁見は明日以降にと伝えていたでしょう? 彼女だって疲れているのですから、あまり無理させないでください。では失礼します」
「レイス様」
「いいんだ。ミラ嬢行こう」
そういうとレイス様は私を抱き上げたまま部屋を出ようとし、私は三方へと視線を向けると、きゃーっと三人は三人で盛り上がり、こちらに手をブンブンと振っていた。
怒ってはいない様子だ。
いいのだろうかと思いながらも、レイス様が無言でずんずんと進んでいくので何となく口を挟めない。
そして部屋へと着くと、私をソファの上に下ろした後に、こちらに向かって頭を下げた。
「うちの家族がすまない」
「え? いいえ、別に、いいのよ」
「……疲れているところに、はぁぁぁ。あの人達は昔から俺の色恋ごとに興味津々でな。いつ結婚するのかとすごくうるさくて、嫌な思いはしなかったか?」
こちらの様子を伺うようにそう言われたけれど、私は首を横に振る。
「いいえ。というか、むしろレイス様によく似たご家族だなって思って微笑ましく思っていたの」
「微笑ましく……」
「嫌がられるのではないかなって思っていたから、歓迎の雰囲気に、びっくりしてしまったわ」
「私は元々君がもみくちゃにされそうで怖いくらいだった。だが、嫌な思いをしなかったなら、よかった」
「えぇ。傷物の娘と結婚なんて許しません! くらい言われると覚悟はしていたわ」
「そんなことは言わない」
「そうね。えぇ。貴方の家族は、そんなことを言わないわね」
私は微笑む。
レイス様の家族だ。優しいこの人の家族がそのようなことを言うはずがなかった。
先ほどのことを想いだし、私は笑みをこぼす。
「ふふふ。なんだか、嬉しかったわ」
「え?」
「温かな家族で、レイス様が優しい理由が良くわかるわ」
「……そうだろうか」
「えぇ」
すると、レイス様が真面目な表情でこちらを見ると言った。
「その、明日、両親に、結婚したい相手だと正式に伝えようと思うが、いいだろうか」
真っすぐな瞳。だけどどこか不安げで、自身がなさそうだった。
私が断るとそう思っているのだろうか。
「えぇ。よろしくお願いします」
あえて丁寧にそう告げると、レイス様が立ちあがり、嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「そうか! そうか! 良かった!」
「よろしくお願いします」
「あぁ! もちろんだ!」
いよいよ挨拶か。
私も気を言きしめなくてはいけないなとそう、思っていた時であった。
―――――ボフンッ。
「あ……」
「あら」
レイス様が可愛らしいうさぎの姿になってしまった。
「くっ……こんな時に」
私はレイス様をひょいと抱き上げると、膝の上に乗せてその頭を優しく撫でた。
「ふふふ。明日はよろしくね。可愛いうさぎの王子様」
「……もちろんだ」
ちょっと納得がいっていない様子。
でも、私はレイス様の両親にちゃんと紹介してもらえるというのが、とても嬉しかったのであった。
発売日から1日!
皆様どうぞ、追放後の悪役令嬢をよろしくお願いいたします!
緊張します……どうか、たくさんの方に届いておりますように(●´ω`●)






