4話
「ごきげんよう。はじめまして」
黒色の美しい髪のご令嬢は、こちらをじっと睨みつけており、その雰囲気は好意的とは言い難い物であった。
アレクリード王国での礼儀作法を私も全く知らないと言うわけではない。
基本的にはルーダ王国と似ている点が多く、声を書ける時には高位貴族からというのが基本でる。
このご令嬢の堂々とした態度からいって、かなり高位貴族のご令嬢なのだろう。
どう対処しようかと考えていると、サマンサが冷静な様子で、そのご令嬢に声をかける。
「グラント様、王妃殿下のご命令によって現在、貴賓をご案内しております」
「え? 王妃殿下の?」
「はい。ここにお連れする前に、どなたかに声をかけられた際には、王妃殿下の名を出すように仰せつかっております」
「そ……そうなのね。失礼いたしましたわ」
王妃殿下の名を出した途端に、顔色を悪くしたご令嬢は慌てた様子で一歩後ろへと下がった。
「いえ。それでは失礼いたします」
サマンサは歩き始め、私はご令嬢に一礼してから歩き出したのだけれど、小さな声で囁かれる。
「……王妃殿下に釘をさされるといいわ」
キッと睨みつけられ、私はただ失礼に当たらないように頭を下げて、サマンサの後をついて歩いていく。
廊下を歩いていき、そして今度は階段を上がっていく。
するとその先でサマンサが一度足を止めてこちらを振り返る。
「先ほどは申し訳ございませんでした」
「いいえ、いいのよ」
「ここからは王族の方以外は入れない区域となりますので、先ほどのようなことはもうございませんのでご安心ください」
「ありがとう」
サマンサはまた歩き始め、私はその後ろをついて歩いていく。
そして、大きな白い扉の前にてサマンサが足を止めると、扉の前に控えていた騎士達に告げる。
「王妃殿下のご命令によりミラ様をお連れいたしました」
騎士の一人がそれを伝えに部屋へと入り、そして出てくると扉を開けた。
「入室の許可がなされました。どうぞ」
「ありがとうございます。では、ミラ様、どうぞお入りください」
「えぇ」
私はサマンサと共に部屋へと入室すると、その部屋は、太陽の光が暖かく入る、とても広々とした部屋であった。
そして、部屋の中央に腰掛けている女性は、白を基調とした衣装を身に纏っている。
サマンサに続いて、私はその女性の前へと歩いていく。
「王妃殿下、ミラ様をお連れいたしました」
私は王女殿下の前へと一歩出ると、スカートのすそを持ち上げ、深く片足を後ろに引き、膝を軽く曲げる。
その姿勢のまま、声が駆けられるまで待とうと思っていると、王女殿下が立ちあがる気配がして、次の瞬間には私の目の前に来て手を取った。
「あぁぁぁ。可愛い。可愛いわ! あぁぁ。とても可愛らしいわ。よかった! でっかい巨漢な女性かもと思っていたけれど! ふふふ。ミラと言ったわね。ミラ、貴方の母となる、アグネスよ。あぁ、アグネスお母様と呼んでね」
その勢いに押されて私は目を丸くしてしまう。
ただ返事をしないのは失礼だと思い、急ぎ返事を返す。
「ミラと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「アグネスお母様よ」
「ア……アグネスお母様」
「うふふふふ。さぁさぁ、こちらへ来て。ミラのことを教えてちょうだい」
「は、はい」
一体何がどうなっているのだろうか。
釘を刺されるのではなかったのだろうか。
私は突然のことに動揺しながらも、アグネスお母様に促されるままに席に腰を下ろす。
アグネスお母様が、視線をサマンサへと向けると、サマンサの指示で次々に部屋にカラフルなお菓子が運び込まれてくる。
「たくさん食べて。今日は歓迎会ね!」
「ありがとうございます」
そして香り豊かな懐かしい紅茶が、私の前に置かれた。
「これは、ルーダ王国の紅茶ですか?」
そう尋ねると、アグネスお母様は嬉しそうに微笑みを浮かべるとうなずいた。
「そうよ」
「お気遣い、ありがとうございます」
「いいのよ。ふふふ。ねぇ、ミラ。これから息子のレイスのことをどうぞよろしくお願いね」
全面的に応援されているその雰囲気に、私は戸惑ってしまう。
「は、はい。もちろんです」
そんな私の反応に、アグネスお母様はくすくすと笑うと口を開いた。
「もしかして、反対されると思っていたのかしら?」
「あ……」
「ふふふ」
アグネスお母様は紅茶を一口飲むと、満面の笑顔で言った。
「反対なんてしないわよ! 大賛成よ! だって、あの、レイスがやっと連れて来た女性ですもの! それにこんなに可愛らしいなんて! 大喜びよ!」
あまりの勢いと圧に押され気味なったものの、歓迎してもらっていると言うのが素直に嬉しい。
「よかったです」
ほっとして微笑むと、アグネスお母様は私のその姿を見て、ほろりと突然涙を流す。
「え? あ、あの、申し訳ありません。何か、ご不安にさせてしまったでしょうか」
「いいえ。違うの。もう、安心して……レイスってね、昔から女性に興味という興味が一切なくてね、だから、なんだか嬉しくって」
「そう、なのですか?」
「えぇ。そうなの。それに私、ずっと貴方みたいな可愛らしい娘が欲しかったの」
「え?」
レイス様にはお姉様が二人いると聞いている。
するとそんな私の考えを読んだかのように、アグネスお母様が口を開いた。
「私の娘達はね、可愛い派ではないのよ。あぁ、念願の可愛い娘だわ。嬉しい」
「え?」
どういうことなのだろうか。そう思っていた時、扉が勢いよく開いたのであった。
3月25日 本日 オーバーラップノベルスf様より書籍1巻が発売です(●´ω`●)
皆様にお届けできるように、編集様方と頑張って作り上げた1冊になります。
お手元にお迎えいただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします!






