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突然ですが、娘ができました。2  作者: ほととぎす
第1章の6 中学3年生編 (痴漢事件)
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再び動き出す影

お正月明け、一生懸命勉強する梨桜と縁。


・・・やがて少しづつ変化も・・・。

  【再び動き出す影】


 ほぼすべてが想定内だ。

特に問題はない、僕は自分に言い聞かせる。

手がかかるというのもそれだけ楽しみが増えると思えば悪くない。


 しかし、警察官というやつがこんなにしつこいものだと言うのは、想像していたとはいえ、改めて実体験として理解できた。僕の説明に齟齬は無かったはずだけど、刑事の勘なのかその疑う目は最後まで鋭かった。いや、今でも監視はされていると思ったほうが良いだろう。


ただ悲しむべくはそのつたない捜査手法だな、ほとんどすべて危惧していたことの範囲内で、そんなところに痕跡を残す僕じゃない。付け入る隙など与えはしない。


かつて、彼女にまとわりついていたあるクラスメイトを、人知れずこの学区から追いやった手腕は、我ながらよくできたものだったと満足している。


 さて、もうあまり時間はない。これからひとつづつその障壁を取り除いて、積年の想いを遂げるとしよう。



  【痴漢か冤罪か】


「この人痴漢です!」


帰宅客でそれなりに混みあう電車で、一人の女子学生が声を上げた。


「あぁ? 俺の手はほれこの通り、ずーっとつり革掴んでたよ。

 別の人と勘違いしたんじゃねーか?お嬢ちゃん。」


すると、少し離れたところから援護の声が掛かる。


「私、見てました! 確かにその人、その子のお尻触ってました!」


「あのなぁ、・・・。

 よーし分かった!

 皆さんすんません、俺ぁ今人生の岐路に立たされました。

 横のあなたとそこのあなた、申し訳ねぇが俺がずっとつり革掴んでたの見てましたよね?」


壮年のその男はそう言ってすぐ横にいたビジネスマンと、シートに座る婦人に声を掛け、助けを求めた。



  ◇ ◇ ◇ ◇


 お正月、安藤君は東京にいる両親のところへ帰ってしまい、一人残された縁はうちに来ていることが多くなった。刻一刻と迫る高校入試を控える私にとって、彼と一緒に勉強できるのは大助かりだった。先生につきっきりで見て貰っているのと大差ないのだから。

興味本位で、彼にどこまで勉強が進んでいるのか聞いてみたところ、高校までの履修内容は大体終わっているのだとか。なんて恐ろしい・・・勉強の鬼め。


 紗奏の方は、年末私達とずっと一緒だったから、年明けからはこっちには来ず親孝行しているようで、頻繁に来るLineには振り袖姿を見逃したと言う両親からの責めだとか、こっちでももう一回着てくれと言う懇願だとか、『親をあやすのが大変』だと綴られていた。


 またすぐ見られるのに。(笑)


・・・


 今年の冬休みは、いつもより二日多い。

24日が土曜日で、8日が日曜日だったから。


 炬燵で温まりながら、ラッキーだったな~なんて思う。


はてそう言えば?


私たちの授業時間数は確か決まっているのじゃなかったかしら?

という事は、年間のカレンダーから時間割を作らなきゃいけない?

うわ、先生って大変だ。私には無理かも、なんて勝手に思ってみた。


「どうした?難しい顔して。」

「ん? あ~、先生って大変だな~って。」


 私がそう言うと、彼は『ふむ』とでもいうように顎に手を当てて何かを考える。


「確かに。僕たちの成長期、それも個としての価値観なんかも定まる時期を指導しなきゃいけないんだからな。責任重大だ。僕にはできそうもない。」


 あれ。なんだかとっても難しい答えが返ってきましたよ?

『先生って大変』という一言から、こんなことを思うのはこの彼くらいじゃないかしら?


 私はスマホを操作して、それを彼に渡す。


「精神年齢診断?」


「やってみて。(笑)」


・・・


ポチポチと、スマホを操作していく縁。



「・・・はい。

 35歳だって。


「あれ~~、意外! 70歳位かと思ったよ。(笑)」

そうディスってもどこ吹く風だ。


「できるだけ正直には答えたけど、こういうのって期待値を操作できるからな。」


 そう言って、彼はもう一度繰り返す。


「・・・ほら。16歳。」


「む~~・・・」

私はちょっとむくれてみせる。


この辺、ちょっとあざとく見えるはずだ。

女子がいたらきっと嫌われる仕草。

いや、男子だってあざとい女が嫌いな子はたくさんいるはず。


縁も、彼の人となりからすれば、こういうのは好きじゃないはずなのだけど(たぶん)、どれだけフィルターが掛かっているのか、少し嬉しそうに・・・


「まぁ、ほら、本音でだいたい35歳だって。そんなに爺じゃないだろ?」


なんてことを言ってくる。

なにかにつけて、『どこかに怒りポイント』がないかと探りをいれるのだけれど、今のところちょっとやそっとでは怒りそうにない。

・・・まぁ、あえて嫌われたくはありませんけれど。

でも、長く付き合うのなら、いろいろと知っておいたほうが良いかな・・・なんて思ったりもしているわけで。


 そんなことをあれこれ考えていると・・・。


「そうそう、今日の晩には道兼も帰って来るって言うから、晩飯は家で食べるし。」


「は~い。じゃ、また何か作って差し入れするね。」


 そっか~、冬休みも明日で終わりか~。


『う~ん!』と伸びをしつつ、私はゴロンと横になった。


・・・


 カーペットに黒髪が『ふぁさっ』と広がる。


どうしてこうも無防備なんだ。

正月から一週間、こういう事が何度あったことか。


信頼してくれるのは嬉しいが、僕だってれっきとした男なわけで、少しは『警戒心』というものを持って欲しい。


「梨桜と初めて会ってからたった半年だけど、ずいぶん大人っぽくなった。」


「え? ありがとう。

 どうしたの? 突然。」


 彼女に気付いた様子はない。


「うん。男子に比べて女子が大人になるのは早いなと思って。」


・・・

   ・・・


「あ~~!」


 彼女は慌てて体を起こすと、両腕で胸のあたりを隠すしぐさをする。


やっと気づいたか。


(ほら、男ってこういう生き物なんだから、もっと注意しろ。)


・・・


怒るかと思いきや、一転して蠱惑的な笑みを浮かべ・・・


「ふ~~ん。」


それだけ言うと、じっと僕の目をのぞき込んでくる。


その視線は、心の奥底まで見透かしてくるような気がして、何ともいたたまれなくなったのだが、かといって逃げ出すわけにもいかず、いつもなら助けに入ってくれる紗奏もおらず、覚悟を決めてその視線を受け止めるしかなかった。


・・・


 その時間が一瞬だったのか、はたまた3分程だったのか。


彼女はにっこり微笑むと・・・


「大丈夫だって。

 信頼できる人かそうでないかくらいちゃんと見てるから。」


そんなことを言った。

僕が言わんとすることを正確に見抜いたうえでのその言葉に、ついついそんなに信じないでくれという思いが奔った


「僕は君が好きなんだぞ。だからその・・・」


「うん。

 ありがと。いつも大事にしてくれて。

 もうちょっと待ってね。

 私、まだお子様だから。」


 彼女は僕の言葉を遮るようにしてそう言った。


「あ、・・・あぁ。すまない。

 なんだかあまりに無防備なもんだから、つい。

 信頼してくれているのは、凄く嬉しいんだ。」


「縁は~~・・・

 自分がどれだけ信頼できる人間か、自分で分かってないんだよ。」


 そう言ったかと思うと、その手がすっと伸びて来て、優しく頬を撫でてくる。


(今すぐ抱きしめてしまいたい。)


ただ、それは信頼に反する事なのか?


僕にはわからない。

だから行動に移せない。


   ・・・   ・・・。


ちがうな。そうする勇気が無いと言うだけだ。


  ◇ ◇ ◇ ◇


 あ~~、とうとう言われちゃった。

・・・ちがう、言わせちゃったのかな。

一週間イイ感じに絡んでいったもんね、私。


でも・・・。


 やっぱりそうだと分かってはいても、いざ口に出されると実感として想いがこみあげてくる。


『好き』・・・かぁ。


これが言葉の持つ力なのだろうか。

お立ち寄りくださいまして、ありがとうございます。


コロナ禍故、いろいろなものを読み漁っておりますが、皆さまもご同様でしょうか?

どうぞ楽しいひと時と巡り合えますよう。

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