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突然ですが、娘ができました。2  作者: ほととぎす
第1章の5 中学3年生編 (日常2)
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縁の回想・そしてお正月

ブックマーケットを振り返る縁。


そして、年も明け・・・。

  【縁の回想】


 年の瀬も押し迫ったある日の夕暮れ、母さんから電話があった。

話の要旨は『年末年始はそっちでよろしくやっていなさい』という内容だった。


どうも会話の節々に、梨桜を射止めるまでは帰ってこなくてよろしいと言うニュアンスが感じられ、

(彼女にはまだ彼氏という存在が必要とは思えないのだがな)

という実感を伴う中では、これは当分家に寄り付けそうもないな、そんなことを思った。


 そして、そんな訳もあって梨桜たちと出かけることになった同人誌即売会だが、それについてクラスメイトの女子からとあるお願いをされたのだった。

せっかくのイベントだからという事で快く受けておくことにしたそのお願いは、コスプレ。なんでも、人気漫画のキャラクターの格好を模して来て欲しいとの事だった。

 そのキャラクターの概要を彼女から受け取り、制服を含むいろいろなグッズを手渡され、出来たら髪型もよろしく言われた。

 アニメにありがちな少しすその長いそのブレザーは、リアルに採用されるとは思えないアダルトなデザインで、一見してコスプレだと分かるのだが、お祭りにはちょうど良いかもしれない。

髪型はまさか地毛を金髪にするわけにもいかず、ネットでかつらを買っておいた。


 当日、4人の護衛も兼ねて・・・というのは少しうぬぼれが過ぎるかもしれないが、いろんなブースを見て回る。

 こういうのもなんだが、整った容姿の女子4人と一緒のせいもあったのか、周りからの視線は感じるものの、撮影のお願いなどはされずに済んでいた。女子4人は何度か頼まれていたようだが。


 漫画やアニメを題材にした同人誌を見て回っていると興味を惹かれるものがいくつもあった。

 いろいろな切り口で自己解釈した二次作品はなかなか面白く、自分でも意外だったのだが5冊ほど購入した。

 しかし、この値付けは・・・。

100円、200円、・・・高いものでも500円、どう考えても採算が取れているとは思えない。

描いたものを見て貰いたい、という気持ち故の事なのだろう。


 本間さんが買った、クラスメイトの作品を読ませてもらうと、どうもこう背中のあたりがムズムズしてきた。

 BL漫画に仕上げてある方、これには思い当たるエピソードがいくつかあった。あの娘め、よもや僕らをネタにしていたとは。

 (思わず笑いが込み上げてくるが、それは押さえておく。)


 さらには、百合漫画の方。

もうそのまんま梨桜と紗奏が題材になっているのが分かる。

もっとも、生徒公認の二人だからどうという事はないのかもしれないが。


 そんな3日間にも及んだ祭りも終わり、自分には珍しく少し物悲しい気分で皆と一緒にホテルへと向かう。


会場のすぐ先、右手に高々とそびえる高級ホテル。

今日のような日によくぞ取れたものだとそれこそ驚愕した。


 そしてその手前、プロムナードと呼ばれる広場にはかなりの人だかりが出来ており、僕たちが近づいていくと、待ってましたとばかりに囲い入れられてしまった。

前を歩く少女二人のコスプレ姿は、会場でも大人気だったと言ってよく、本が無くなってもスペースに人が訪ねてくるあたりはその想像に難くない。


 マイクを手に二人で歌い、踊る姿を、テレビ局のものと思われる大型のカメラと、数十に及ぶ大小さまざまなカメラがその内側に焼き付けている様子を見るに、

(これは正月明けに、またひと騒動ありそうだな)

そんな風に思った。


 メディアにさらされると言う事は、良い事ばかりではなく、必ずよからぬことも引き起こされる。ゆめゆめ注意は怠らないようにしなければ。



  【お正月】


 明けてお正月、僕らはそのままホテルで朝食を取り、なぜか案内されて一つの部屋へ向かう。


「せっかくだからな、正月らしくして、初詣に行こうか。」

隣に立つ保護者は事も無げにそう言った。


   ・・・

      

 (それから数刻・・・)


扉を開けて二人が出てくる。

その艶姿に思考が硬直し一瞬言葉が出てこない。


「どう?縁?」


「・・・・・・綺麗だ。」


 思わず口をついて出た言葉がそれだった。

何とも拙い日本語だと言わざるを得ないのだが、他に表現のしようがなかった。

ピンクを基調とし、右すそから左肩にかけて梅の花が咲き誇るその振り袖姿は彼女のイメージとぴたり重なり、アップに結い上げた髪とも相まって筆舌に尽くしがたいものだった。


 『朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり。』


 唐突にその言葉が浮かんだ。

死んでも悔いはないくらい感動した・・・という事か。


「一応私もいるのよ?」


 僕は少しだけ目線を横に向け、

「もちろん二人とも、二人とも綺麗だ。」


「なーんて。絡んでゴメンね。縁はちゃんと梨桜だけ見てなさい。」


「紗奏、ホント綺麗だよ。

 あっ、直樹さんは来れるって?」


「うん! ブクマに来ることになってすぐに連絡入れておいたから。」


「やったね! でも、お持ち帰りは許しませんよ。」(笑)


「今日は帰りたくない。・・・とか言ってやろうかしら?」(笑)


「二人とも本当によく似合ってる。

 縁君も立派に一人前だな。」



  ◇ ◇ ◇ ◇


 向かった先は、愛宕神社。

出世の石段で有名だ。

険しい角度の男坂、緩いが長い女坂。

これはそれぞれの人生での苦難を現しているようにも感じられた。


「おまたせ。」


 下からその急な石段を眺めていると、後ろから声が掛かった。


「直樹にいさん、おひさしぶり。」


「久しぶり、紗奏。

 とても綺麗だ。」


 そう言われて、頬を染める紗奏。

なるほどな。そう言う事か。


「それじゃ、行こうか。

 女性陣は急だから女坂を上がってくれ。」


「そうね、行こっ、梨桜。」

「うん。 それじゃ、みんな上でね。」


「初めまして、二人の同級生で土井縁と申します。」

「あぁ。初めまして、紗奏の従兄で、白石直樹だ。君の話はよく聞いているよ。」


「びっくりしただろう、直樹君。」

「振袖は不意打ちでしたね、遠目で分かったからまだ心の準備ができました。

 すっかり大人に見える。和服は魔服だな~。」


「魔服か、面白い表現だね。」

「確かに。所作や言葉遣いまですっかり変わってしまって、驚いてます。」


「君の口から綺麗だなんて言葉が出るくらいだからな。

 相当に魔服なんだろう。」


「口にしたのは初めてですね。それ以外の言葉が見つからなかった。」


「褒めるときには正直に褒めていいと思うよ。日本人男性は褒め下手だからな。」



  ◇ ◇ ◇ ◇


 階段を上がり、みんなで初詣のお参りをする。


『ほかの何はどうでもいい。どうか彼女に幸あらんことを。』


・・・


「あっ! 大吉っ!」

「私もっ!」


「俺は・・・おお。俺も大吉だ。」

「あはは。俺も大吉ですね。」


「僕は末吉。年末はいいことがありそうです。」


「あれ~、末吉ってそうなんだっけ?」

「あぁ、おみくじの内容によって、二通りだってね。

 今年の末が吉なのか、末の吉なのか。」


「そうなんだ~~。年末イイことがあるといいね、縁。」


 いい事・・・か。

ずっとこのまま、こういうメンツでいられたら、それだけで十分幸せだと思うのだが。


・・・そうか、この御籤によれば、年の初めは慎重に・・・すぐ先にある甘いイベントは甘く考えないほうが良いと言う事かもしれない。


 甘いものはこれで結構好きなのだけれど。


お立ち寄り頂きありがとうございました。


今後ともどうぞごひいきに。

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