文化祭(ファイナル)
いよいよ、3人娘が文化祭のステージに・・・
【フィナーレ】
小休憩が終わり、ざわついていた体育館に静寂が戻る。
(タン、タン、タン、タン・・・)
2年1組委員長の菅井聡子がステージにあがり、丁寧にお辞儀をする。
「本日はお越しいただきまして、ありがとうございます。
今年は各クラスとも合唱となってしまいまして、ご来場の皆様には、少しだけ退屈されたかもしれません。お詫びいたします。」
そう言って、彼女は再び腰を折る。
「でも、実はこれからが本番なんです。
先輩方に無理を言って、私たちみんなのために歌っていただけることになりました。途中でご説明を挟むのもあれですので、一度に説明させていただきます。
まず一組目は、いずれメジャーデビューも夢ではない当校の軽音部より、鶴ヶ峰、北藤、相沢、筒井の各先輩方グループです。
続いて二人目は、そのクールなキャラで男女ともに大人気の、長瀬先輩、三人目、先輩らしからぬ愛らしさでみんなを癒します、本間先輩、そしてトリを務めますのが、わが校のエースにしてヒロイン、白石先輩です。
それでは、よろしくお願いしますっ!!」
◇ ◇ ◇ ◇
鶴ヶ峰さん達がステージに上がっていく。
それは中学生とは思えないくらい堂々とした足取りだ。
今度のライブには、ぜひお邪魔してみよう、そんな風に思った。
観客席に向けてお辞儀をして声を掛けると、大きな声援が上がる。
昨年と同じ、ステージ横のピアノを筒井さんが、アコースティックギター、ベースをそれぞれ、北藤さんと相沢さんが担当する。
都城ちゃんが自作の曲かも?って言ってたから、『どんな曲なんだろう』とワクワクしていた・・・
のだけど、ギターから始まったイントロは聞きなれたアニソン。
『歌ってほしい歌投票』にあった最後の曲だった。
会場を盛り上げるために、あえて知名度が高くて要望の多かった曲にしたんだ。
自作曲、聞きたかったな・・・。
ライブ、次のライブは行きます!
彼女たちのグループは、歌も演奏も上手で、観客の盛り上げ方もとっても慣れていた。
高校行ったらデビューとかしちゃうのかな。
( (パチパチパチパチ・・・) )
大きな歓声に包まれて、彼女たちがステージから降りてくる。
『やり切った』感のあるすがすがしい笑顔に、気持ちよいくらい汗が浮いていた。
「じゃ!行ってくるよー!」
私たちは胸の前でグーを作って美沙ちゃんを応援する。
袖からステージに上がると、再び大きな歓声が彼女を迎えてくれた。
歌いだしから一気に盛り上がるこの曲はとてもハイトーン。
いつもの美沙ちゃんは、音程をとても大事にして歌うのだけど、『だから響かないんだよなー』って本人がちょっと悩んでいた。
この曲は緩急、強弱がとっても激しい、音域の幅もある。
だけど、今日の彼女は見事に思いを乗せて歌っている。
ちゃんと皆に響いているよ!美沙ちゃん!
そして、最後のサビに差し掛かった時には会場の皆も立ち上がらんばかりに盛り上がっていた。
( (パチパチパチパチ・・・) )
汗だくの美沙ちゃんが階段を下りてくる。
「美沙ちゃん! すっごい良かった!」
「うん! パフォーマンスも最高だった!」
「ありがと! なんとかなったかな!」
この盛り上がり、私のところで止めるわけにはいかない!
皆に応援をもらい、ステージに上がる!
言葉を大事に!
気持ちを乗せて。
空気を大事に!
みんなの呼吸を感じて。
目線はしっかり前を!
みんなを見つめて。
◇ ◇ ◇ ◇
(都城美鈴)
待ちに待った梨桜先輩だ!
イントロからいきなりテンション全開のハイトーン!
私は一期のこの曲が一番大好きだ!
先輩がこの曲を選んでくれるなんて!
そしていつも静かな先輩が、こんな! こんなに!
今踊っているダンス、オリジナルのPV!
両端にいる子の踊りだ!
その小さな全身で私たちに訴えかけてくる!
とてもアグレッシブに!
そして、僅かな間奏、その間でさえ先輩は私達から目を離さない。
むしろこの間こそが先輩の本領!??
チラッと交錯した一瞬の視線で私の心は完全に射抜かれた!
あぁ! もう、死んでもいい!
と、そこで私の頭の中に鮮明に浮かび上がるものがあった。
この視線!
あっ!
あーーーーーーーっ!!
あのっ、あのっ! あの金髪の歌姫っ!!
最高潮の盛り上がりの中、梨桜先輩はステージを降りていく。
・・・。
気づいちゃったこと、どうしよう。
◇ ◇ ◇ ◇
梨桜さんの歌に、会場は総立ちになった。
美沙さんの時で、既にピークに近づいていた盛り上がりは、ここに来てとうとうはち切れてしまったようだった。
本当にこうして歌っている間、彼女は別人のようになる。
Shadow of the moon の時は妖艶に、
そして今はアニメの主人公のようにエネルギッシュに。
◇ ◇ ◇ ◇
最後、白石先輩がゆっくりとステージに上がって来る。
じっと正面を見てイントロを待つ。
二期目の曲はミドルトーン主体でかなり情感豊かな歌詞だ。
アニメの内容と歌詞がリンクしていて人気も高い。
梨桜先輩はPVの子のダンスだったけど、白石先輩はオリジナルのダンスを付けている。その姿はとてもきれいで目が離せない。
・・・間違いない。
銀髪の歌姫は白石先輩だ。
間奏・・・
そして、突然盛り上がるエレキギターのソロパートでリアルの音が入った。
会場は大きくどよめく。
北藤先輩だ!
北藤先輩がソロパートを弾きながら袖を上がってきたのだ!
そこからの先輩二人の絡みは、もうどこのライブよりも凄かった。合わせる時間なんて無かったはずなのに?!
二人の楽しそうな駆け引きが私達へ向かって投げかけられて来る。
感動しすぎて泣き出す子さえあちこちにいた。
私は、今だけは泣かずに我慢する!
◇ ◇ ◇ ◇
玉のような汗を額に浮かべて紗奏が降りてくる。
「どうだったっ!??」
「最高でしょ!」
「お客さん泣かすなよ!(笑)」
「ごめん、急に混ざって!」
「ううん! サンキュ!
すっごい助かった!
おかげで最高に盛り上がったね!」
そんな話をしているとドアが開き、都城さんが『タタタッ』と駆け寄ってきた。
目を真っ赤にしている。
「ありがとうございました。感動しました!
一生忘れません!」
「ありがと。おおげさだよ。(笑)」
そう言ったか言わないうちに、思いっきり抱き着いてきた。
(子犬みたい。そんな風に思いながら、背を撫でてあげる。)
「それじゃ、お先~~。お疲れ~~。」
「あ、お疲れ様~。」
この子のテンションにちょっと居づらくなったのか、鶴ヶ峰さん達はそう言って出ていった。
「あの、先輩、私気づいちゃったんです。
内緒にしてるんですよね?」
そう言って上目づかいに見上げてくる。
この子の方が背が高いんだけど、なんとなくそう言う構図になっちゃってる。
バレちゃったか~・・・
見た目は全然違う(と思う)から、声バレかな?
「うん、騒がれるの嫌だし。」
「はい、内緒にしますね。えへへ」
(トン・トン)
軽くドアがノックされ、入ってきたのはなぜか縁君。
「お疲れさま、凄く良かった。」
「ありがとう。みんなの記念になったら良かったんだけどね。」
そう言葉を交わす。
すると・・・
「土井先輩! 先輩は、梨桜先輩の事、どう思ってるんですか!?」
「・・・。
君もそれか。そう言う時期が来たらちゃんとするよ。」
「美鈴ちゃん、気にかけてくれてありがとう。
私もまだお子様だからね。恋愛は早いかも。」
そう言って、頭を撫でてあげた。
「ねぇ、美沙。
ちょっともやもやするんだけど、これって嫉妬?(笑)」
「アハハっ、梨桜、紗奏が焼いちゃってるぞ。(笑)」
「えへへ。」
私も、紗奏がほかの女子と仲良くしてると、ちょっとだけもやっとするから、多分似た様な感覚なんだろう。
嫉妬、というより自分が一番近くにいたい、そう言う感覚。
・・・・・・あっ。嫉妬か。(笑)
「ところで、二人の事、気づいたっぽい生徒がちらほらいたな。」
そう、濁した言い方をする彼。
「うん。美鈴ちゃんにもバレちゃったみたい。
大丈夫だよ。あれから1年も経ってるし、そんなに騒がしくはならないんじゃないかな?」
そう、少しお気楽に構えている梨桜だった。
お越しいただきありがとうございます。
さてさて、年の瀬も押し迫ってまいりましたね。




