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突然ですが、娘ができました。2  作者: ほととぎす
第1章の4 中学3年生編 (謎の圧力)
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圧力、そして更なる事件。

いつものように会社へ出勤すると、社長からの呼び出しが・・・


そして梨桜には・・・

  【圧力】


 月曜日、いつものように二人で朝食を取り、

いつものように出勤し、

いつものように月曜のルーチンワークを終えてひと段落した10時のコーヒータイム。


いつものように机の内線が鳴った。


『お疲れ様です。秘書課の桃井です。今少しお時間大丈夫ですか?』


『ええ、大丈夫です。』


『それでは、社長室までお願いします。』


『はい、わかりました。』


社長が私にどんな用事なのだろう?


不思議に思いながら最奥にある社長室へ向かい、扉を叩く。


「あぁ。悪いねぇ本間君、仕事中。

 ちょっとそこ掛けてもらえるかなぁ。」


そう言って応接用のソファーを指す。


「ちょっと聞きたいんだがねぇ、本間君、

 本社の川東取締役と、面識はあったかねぇ?」


心底心配そうな面持ちでそう聞いてきた。

川東取締役・・・面識どころかその存在すら聞いたことが無い。


うちの会社は旧来からある財閥系大手企業の、子会社的位置づけにある情報処理サービス企業だ。関連会社も多く、手がける仕事はそのほとんどが受注生産(開発)で、市販しても利益になりそうなものは、系列系企業から市販用の改修依頼があって、売り出したりもする。


故に、いち開発課長程度が本社の役員をいちいち覚えていたりはしない。少なくとも私には興味が無かった。


「いえ、面識はありません。」


「なにか、ご不興を買ったような覚えはないかねぇ?」


「いえ、全く。」


「そうだろうねぇ、いやねぇ、私も寝耳に水で驚いたんだ。

 その取締役が、君のことを信頼できないと言うんだ、だから部署を変えろってねぇ。」


「おかしな話ですね、全く心当たりがありませんが。」


「あぁ。本間君の働きは霧島からいつも聞いているから、私としても驚いているんだ。ウチの開発一課と言えば、協力会社の中からも是非にと言って名指しで来るところが多いくらい信用があるのになぁ。

それで、食い下がっては見たんだがね、大ごとにはしたくない、とにかく外せの一点張りでねぇ。」


と、そこではたとその名前に思い至る。

『川東』・・・そういえば、剣崎さんからの報告にあった、梨桜のストーカーの一人、それが確かクラスメイトの川東龍太、これは偶然ではないな。


だが、何か確証があるわけでもなし、ここで言ったところでおそらくどうなるものでもあるまい。


「そうですか、正直言って今から営業とかに回されても困りますし、総務とかその辺のスキルもありませんし、社長はどうお考えですか?」


「それがな、信用できない人間を営業には回せない、総務なんてもってのほかだとなぁ・・・困ってしまうよ。」


なるほど。要は私を排除したいわけだな。


しかし、あの子のことを考えるとこれは丁度良かったのかもしれない。あのビルの3階をオフィスにして、何かを始めるのも悪くないし、そうすれば一緒の時間ももっと取れ、あの子が学校の友達をあそこへ呼んでも、何の問題も無くなる。むしろ良いことづくめだ。


それに、仮に想像通りだとして、本社の取締役にそんな馬鹿がいたのでは、この先どうなるか知れたものではない。最悪なのは在籍を許す代わりに娘を嫁によこせとか・・・考えただけでそいつを叩っ切ってしまいそうだ。


「分かりました。それでは依願退職という事にしましょうか。

 私もやりたいことがありますし。」


「いや、なにもそこまで・・・。

 取締役が交代するまで、何か部署を作ってと思っているんだがねぇ。

 本間君の功績を考えるとそれ位はさせて欲しいんだが・・・?」


「いえ、結局そうしても横やりを入れて来るでしょう。

 個人的にどのような不興を買ったのか分かりませんが、私の心配ならなさらなくて結構です。部下の方も私などいなくても立派にやっていけると思いますし、何の心配もいりませんよ。」


「うーーむ。申し訳ない。」


そう言ってテーブルに着く程頭を下げる。

おかしいな?部長ならともかく、社長にそんなに気に入られるような覚えはないのだが・・・。



 社長室を後にして、自分の机に戻り、それとなく引き継ぎ資料の作成に取り掛かった。鈴木も青木もまだ課長への昇格はないだろう。とすると他の誰かがここに就くことになる。この二人の邪魔をしないような奴を就けてくれればありがたいのだが。


 常に身辺は整理しているので、午後3時のコーヒータイムにはあらかた引継ぎ用の資料も作り終えた。オフィス内の配置上、私の後ろには誰もいないから、何をしているかは誰にも分からない。


過去のシステムの概要、設計書、その辺は二人の係長どちらも十分詳しいから心配は何もない。


 グループLineで課の皆を食事に誘い、梨桜には遅くなる旨伝えておく。理由が理由なだけに、会社も来月末まではいろ、とは言わないだろうから、引継ぎが終わり次第有給を消化しての退職だ。最後位は寿司でもご馳走してやるとしようか。



  【開発一課の宴】


「おつかれさまー!」


「 「 お疲れ様でしたー! 」 」


 急な声かけにもかかわらず、10人全員が揃ってくれた。

そう言えば、去年まではこうやってよく飲みに誘っていたものだが、今ではほとんど外では飲まなくなった。そのためか、皆とても賑やかに飲んでいる。


最初は娘のことについてだった質問も、酔いが回るにつれて、芹野の話題になっていく。今はハラスメントに厳しい世情だから、気を付けないといけないのだが・・・そう思ってはちょいちょいと彼女の顔をうかがうのだが、困るどころか喜んでいるようにしか見えない。


以前、梨桜がぶっちゃけたように、ひょっとしたら彼女と娘は繋がって動いているのかもしれないな・・・そんなことも考えてしまった。


きちんと意思表示をしたあれからも、彼女の立ち位置はほとんど変わっておらず、今年入った新人さんからアプローチされた際にも、私を理由にすげなく断ったのだと、いつもの毒舌で鈴木が弄って笑っていた。


・・・


 宴もだいぶ盛り上がってきた。

 そろそろ頃合いか。


「さて、急な話で申し訳ないんだが、一つ報告がある。

 実は、都合があって今月末頃には退職することになった。

 早めに相談できればよかったんだが、遅くなってすまない。」


 水を打ったような静けさがこの場に降りる。


「お嬢さんに何かあったんですか?」


「いや、娘に何かあったわけじゃないんだ。

 プライベートな事情なんだが、申し訳ない。」


「おしっ!、じゃぁ、今日は送別会も兼ねてるんですね!

 深くは聞きません、パーッと行きましょう!」


そう言って、青木が『パンッ!パンッ!』と手を叩く。

このあたりの気づかいができるのが、こいつの凄いところだな。

正直救われる気分だ。


・・・


「課長~~・・・、な~~んでですか~~!!」


・・・とはいえ、酔いが回ればやっぱりこうなるな。


「佐藤、悪いな、本当に複雑な事情なんだ、

 大丈夫、青木と鈴木がいる。」


そういって、背中をポンポンと叩いてやる。


「これから、何するんです?」


反対に、芹野は穏やかな表情で飲んでいる。


「そうだな、仕事としては個人向けで何か作れないかって気もするし、市内でもいくつか経営不振のところもあるから、経営のコンサルティングなんかも考えてる。」


「課長なら何やっても成功しそうです。」


「悪いな、急な話になってしまって。」


「いえ、課長は課長にとどまっていられるような人ではないと思ってました。」


「そう言うんじゃないんだがな・・・。」


 その様子があまりに落ち着き払っていて、逆に私は戸惑ってしまった。振っておいてなんだが、『こんなものだったのか?』という思いがぬぐえなかった。


・・・自分も大概だな・・・そう強く自戒した。



  【悪い知らせ】


「再来週の日曜は、文化祭だねー」


「だねー。今年はバザー担当か、あたりたくないなー」


 お昼休み、来たる文化祭について話す私たち。


飾りつけや出し物は、概ねこの一年間の成果だ。

書いたもの、作ったもの、育てたもの・・・、そう言ったものを教室に飾りつけ、大人たちに見てもらう。


高校や、大学の文化祭と言ったようなクラスごとの出し物なんかはやらないけど、午後2時から体育館である催しには毎年2年生が何か出し物をすることになっていて、私達は去年合唱をした。3年生は受験前という事もあって、事前準備に時間を取られるようなことはしないのだけど、その代わり、バザー担当という事で、毎年各クラスから2,3人選抜されてウェイトレスさんをやっているのだ。そしてその選抜方法というのは担任の先生に任されているのだけど・・・ウチはたぶん投票になる。


「せめて可愛いメイド服とかで仕事ができればいいんだけどねー。」


「ああいいうの可愛いよね~。」


「でも、そうするとそう言う客層がわっと押し寄せるぞ!(笑)」


( ( 笑 ) )


「今でも制服目当てっぽい人が結構来るよね。(笑)」


「高校生はみんなブレザーになっちゃったから、セーラー服が逆に珍しいみたいね。」


「南校のブレザー、可愛いよね~、アレ早く着たい。」


「その前にちゃんと勉強しようね。梨桜。」


「は~~い。」


「梨桜は中間凄かったじゃん、問題はアタシだな。」


「美沙も十分安全圏だけどね、不得意教科は頑張ろう。」


・・・


 そして、6限の体育。

2学期になってからずっとバレーボールなのだけど、たまたま私に上げられたトスに(いつもは絶対トスなんて上がらないのに)、頑張って飛びついてアタックしようとしては見たものの、それほど運動神経が良くない私は、あえなく返り討ちにあって撃沈した。


 (打ったボールはネットに跳ね返り、私のおでこに命中!)

 (『あぅ!』という叫びとともに落下して、尻もちペッタンコ!)

 (さらに半回転して後ろ頭をゴッチンコ!)


 それがどれほどおかしい絵図だったのか、もう4組女子も併せての大爆笑をもらってしまい、ボールが当たったおでこより、恥ずかしさで頬っぺたの方が真っ赤になってしまった。


 『穴があったら入りたい』、とはまさにこれだ!


 体育が終わってからも、みんなに笑われながら教室へ戻ると、またしてもなんだか沸いている。そっか、男子もずっとバスケだもんね。

ていうか、あのリングって、いったい何センチ垂直飛びで飛べたら届くんだろう?

あれから紗奏と美沙に聞いてみたら、この学校でダンクができる人は他にはいないのだそうだ。よほど凄い事らしい。


 美沙と安藤君は寄る所があると言うので、私達は三人で学校を出た。駅までの道すがら、『今日も秘密基地行こっか?』なんて話をする。


 昨日も、お父さんが遅くなるってラインをくれたので、みんなで集まって歌っていたのだ。駅からバスに乗れば15,6分で行けるので、私たち3人は家へ帰るより早い。


 そろそろ駅だと言うあたりで、私達の横に車が止まる。

そして・・・

慌て切った様子で、背広姿の男の人が降りて来た。


「本間梨桜さんですね!

 お父さんが倒れられました!

 病院まで送ります、すぐ乗ってください!」


 突然そう告げたその男性に

 一瞬『エッ』って思った。

そして次の瞬間、一つのことに思い当たる!


「あ、ありがとうございます。ちょっとだけ待ってくださいね!」

私はそう言うと、スマホをカチャカチャといじくりながら、『お願い気づいてね』という目線で横にいる二人をチラ見する。


(もちろん何を操作しているわけでもないし、紗奏と縁君に助けて欲しい訳でもない。ただこのまま見守っていて欲しいのだ。)


「はっ!早く乗って!、一刻を争うんです!」


彼はそう言って、私の手を取って車内に引っ張り込もうとした。

体半分まで車内に連れ込まれる。

(なんと、思いが通じたのか二人はそのままじっと見守っていてくれている。)


すると・・・


「おい!」


後ろから来た壮年の男性が静かにその手を捕まえて私ごと車から引っ張り出す。


その優しい手は思った通り剣崎さんだったけど、

驚いたことに、前からは警察官が走ってくる!

なぜ警察官まで!


「どうかしましたか?」


「えっ?いやっ、この子の、父親が倒れたので、迎えに、きました。」


途端にたどたどしくなってそう言う背広男。


「ほうー、それじゃ確認しますよ。」


何とも意地悪そうに、しかし微笑みすら浮かべてそう言う剣崎さん。

その目を見た時、私は背筋がゾクリとした。


(この人は、絶対に怒らしちゃいけない人だ!)


するとその手を振り切り車に乗り込もうとして、今度は警察官に捕まえられる。


「ちょっと話を伺いましょうかね。

 運転手さんも、ちょっと一回降りてきてください。」


そうして、背広男二人組は、警察官に連れられて、向こうからやってきたパトカーに乗せられてしまった。


「姫、大丈夫か?」


「はい。ありがとうございました。

 でも、剣崎さんのあんな怖い顔初めてみました。」


「あぁ、怖がらせちゃったか、こりゃ失敗だぁ。」


そう言って自分の後ろ頭をペシッと叩く剣崎さん。


「今のは誘拐、でしょうか?」


「あぁ、そうみて-だな。怪しい車が停まってやがったからな、

 駅前交番に電話して、暇があったら点数稼がせてやるって言ってやったんだ。(笑)

 見事大当たりだったわなぁ。


 あぁ。縁君と君も、よくそっとしといてくれたなぁ。

 俺ぁそっちの方がびっくりしたわ。」


「あぁ。はい。そのー・・・梨桜が目で訴えて来たから、そうしたほうが良いのかと思って。てか、もうちょっと演技頑張らないと、よくあれでバレなかったもんだよ。」


「え~~!、迫真だったでしょっ!、ねっ、剣崎さん?」


「ん?・・・・・・あぁ・・・

 そりゃーもう、真に迫ってたぜ!

 うん。将来は大女優だなぁ!姫!」


「 「・・・・・・。」 」


「ふ、二人とも黙らないでっ!」


( ( あははっ ) )


 その後、いつものカフェに4人で入って少し話をすることにした。

私が学校にいる間、剣崎さんはこの周辺をくるくる周回しては異変が無いか見て回っているのだそうだ。あの援交事件以来、警察官の血が騒いでしょうがないのだと言う。


「でもさ、梨桜、どうしてあんな演技なんてしたの?

 それがちょっと謎なんだけど。」


「えっ?あーー!

 あの時直感で、『これはおとり捜査しかない!』

 とか思っちゃって!(テヘッ)

 ほっ・・・ほら、車内に引っ張り込んでくれれば、有罪かなって!」


「あ・・・あんたねぇ・・・(苦笑)」


「紗奏さん、大丈夫だよ。

 いざという時は剣崎さんも僕もいるし。」


「いや、姫、正直今日のはデカいと思うわ。

 ひょっとしたらこれで芋づる式にストーカー君にたどり着ける。」


えっ?、それは川東君では・・・?

そう思っていると・・・


「剣崎さん、ひょっとして川東以外にストーカーがいたんですか?」


「あぁ。そいつが結構慎重なやつでな。

 おそらくだが、調査会社を雇っていたのも、

 今日仕掛けて来たのも、俺ぁそいつだと踏んでる。

 川東って子が骨折って今学校休んでるだろ?

 そいつにおっかぶせる気で仕掛けて来たんじゃねぇかな。

 いま、姫がさらわれりゃぁ、矛先は真っ先にその子に向く。


 だれか心当たりはねーかな?」


その剣崎さんの言葉に私たちは沈黙した。

はっきり言って全く心当たりがない。

だいたい、この人に見つからないってだけで凄い事だと思う。

私たちに分かろうはずがない!


お越しいただき恐縮至極でございます。


ここまで来て、ようやく主人公さんが『娘主体の生活』へ入ることになりそうです。


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