表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
突然ですが、娘ができました。2  作者: ほととぎす
第1章の3 中学3年生編 (日常)
42/64

秘密基地

父に連れられて、向かうその先は・・・?

  【秘密基地】


 土曜日、お父さんと私はちょっとだけ早起きして、みんなを集めて回った。

今日は私たちをどこかへ連れて行きたいらしいのだ。


 縁君と安藤君は車の最後列に座り、途中で紗奏と美沙を拾う。

今日も秋晴れの良い天気なので、みんなわりと軽装だ。


「お父さん、この車良く借りるけど、友達は使わないの?」


「あぁ、あまり使わないっていうから、譲ってもらった。」


「ぷっ、車ってそう簡単にやり取りするもの~?」


「こうやってみんなで移動することが増えてきたからな。」


「それで本間さん、今日はどこへ連れて行かれるんでしょう?」


「内緒だ。」


( ( 笑 ) )


「ウチのお父様は、隠し事が大好きで困ります。」

「といっても、予想はついてるもんね。」

「ついてるもんね~。(笑)」


 私たち5人を乗せた車は、市街地からは遠ざかり、

新興住宅街のある方へ向かっていく。

朝8時過ぎとあって、通りの両側では至る所で朝の準備をしている。


程なくして着いたのは、割と最近整備されたと思われる綺麗な公園のほど近く。

白い3階建ての建物だった。


事務所のようでもないし、何の看板もでてないし、なんだろう?


「さ、ここが新しい遊び場だ。」


う~~ん・・・どう見てもただの小さなビルですけど。

私達は皆で顔を見合わす。


入り口でカードキーをかざして解錠するお父さん。

セキュリティはしっかしてそうだ。

なんだか『秘密基地』っぽい。


エントランスに足を踏み入れると、綺麗な間接照明に照らされる。

外見からは想像できない洋風の造りで凄く心地よい雰囲気だ。


でも・・・ここが遊び場?

こないだの話からすると、『歌える場所』に連れて行かれるような気がしたのだけど、なんだかフレンチとかイタリアンのレストランみたい。


そんなことを考えていると・・・


「まぁ、ちょっと上で話でもしようか。」


そう言って、エントランス横の階段を上がっていく。

私達も続いて3階まで上がると、ティーラウンジのような内装になっていた。


テーブル席に皆集まって座り、お父さんが話を切り出す。


「さて、どこから話すかな?

 まず、このビルなんだが、これから案内するけど、

 1階がスタジオ、2階が控室とシャワールーム、

 この3階がラウンジと、横には仮眠室もある。

 まぁ、誰にも気兼ねせずに歌って踊れて、動画もアップできるって事だ。

 今のところ、君たち以外の利用は考えていないんだが、希望があれば他の生徒に開放してもいいし。ただ、その場合はちょっと話し合いたい。基本的にこの施設は君たちだけの遊び場だ。」


と、そこで話を区切って私たちを見回す。


「えーっと、この建物って、本間さんがお金払って借りてるんですか?」


「いや、俺が買った。

 もともとはオフィスビルだったんだけどね。

 だから改装に結構時間がかかった。

 ちなみに、デザインは君の事務所にお願いしたんだよ。」


「えぇーーっ、お父さんたちひとっ言も言わなかった!」


「内緒にしといてくれって頼んだからな。(笑)」


これはもはや何と言ったらいいのか分からない。

他の皆も開いた口が塞がらない様子だ。(笑)


「えーっと、アタシ達が遊ぶためだけにパパさんがビルを買って施設を作っちゃったの?」


「その遊ぶためだけの動画配信でどれだけの人が楽しんでくれたんだろう?

 で、それがちょっとできなかった間、その楽しんでくれた皆は寂しがってるんじゃないかな?

 美沙ちゃんも実は歌いたくてうずうずしてたんじゃないか?(笑)」


「うっ、アタシはこの二人ほど上手くないしなー。」


「上手い下手じゃなく、楽しめばいい。

 一回5人で組んで歌ってみるとかね。

 俺が毎日イイね押してあげる。(笑)」



 そのあと、ここまでのいきさつとかをいろいろ話してもらいながら、このビルを見て回った。


 1階のスタジオはとっても本格的。

 ガラス窓で区切られた隣の部屋には機材がぎっしりと。

いろんなつまみやらボリュームやらスイッチやらが並び、これをだれが操作するのだろう?って思った。まさかセルフ?


 2階へ上がると着替えとかメイクができる部屋が二つ、トイレとシャワー室もある。

 そう言えば自分でメイクなんてしたことないけど、紗奏と美沙はしてるのだろうか?


・・・しかしこれは・・・。

・・・いったいおいくらくらい出費なさったのでしょう?

・・・後できちんとお父さんを問いたださねば!


「ところで、パパさん、すさまじい環境なのは分かったけど、どうやって使うの?」


うん! 当然の質問だよね!(笑)


「なに、君たちくらいの年なら勝手に覚えるさ。

 一通りは説明しておくから、後は遊びながら覚えて。

 乱暴にさえ扱わなきゃ壊れるようなことはない。

 それから、前みたいにきちんとしたものを仕上げたいな、って思ったら言ってくれていいから。人は手配するし。」


・・・どうやらセルフでやれとおっしゃっているようだ。(笑)


「裏ボス恐るべし・・・。」


( ( 笑 ) )


 そしてその日は、撮影から録音からそのまま配信まで何でもできるスタジオという遊び場で、あれやこれやと試してみたり歌ってみたりしながら、一日中過ごした。とくに、美沙は興味津々のようで、安藤君とあーだこーだと言いながらいろいろ触っていて、もう結構使い方を覚えたようだった。



  【娘の疑問】


「じゃ、お父さん?

  いろいろ説明してね。」


お風呂から上がり、まったりしたところで、ものすごく大雑把に梨桜が尋ねてきた。


「うん。そうだな。

 いろいろ聞きたかっただろうに、我慢してたんだよな?」


「へへ。今も別に聞かなくていいんだけどね~。

 そろそろ話したいかなって(笑)」


「そうか! 俺が話したかったのか。(笑)

 じゃぁ、勤労の義務の話からしていくかな。

 勤労ってどうしてそれが義務なんだろう?」


「むぅ?

 出だしがそこですか!(笑)

 個人があって、国があって、税金でいろいろやってるから?」


「そうだね、国という単位をとっている以上、働かない人がいるとそのしわ寄せが働いている人に行くからだね、簡単に言えば。逆に言うと、働く権利があるって事でもある。

さて、でも、ある程度の資産があって、放っておいてもそこから利益が出て食べていけたりすると、働かない人も出て来るよね?それはどうしよう?」


「う~ん、その利益で税金を払っているから働かなくてもしょうがない・・・のかな?」


「生きていけるんだからしょうがないよね。

 でもそんな人生に何の意義があるんだろうか?」


「(笑)

 あ~~~!、分かった~~~!

 もう~、大丈夫だよ。そんなに心配しなくても。」


「ん?」


「何を見ても、そんなに驚かないし、ちゃんと学校出て、ちゃんと働くから、そんなに心配しないで。(笑)」


話し始めたとたん、言いたいことがばれてしまったみたいだ。


私は自室からPCを持ってきてスリープ状態から復帰させる。



「お~、なんかテレビに出てくる証券取引所の画面みたい。」


 そこに映っていたのは、ピコピコとたくさん並んだ数字が上がり下がりする画面。

これは・・・外国の通貨かな。

銀行にもある両替価格?のようだ。


「これがお父さんの副業なの?」


「そうだよ。

 前の会社を辞めてから、ちょっと試しに遊んでみたんだけどね。

 これは、FXって言って、外国の通貨を売ったり買ったりして差益を期待する財テクみたいなものなんだ。こういう何も生産を伴わない『財テク』というのはあまり好きじゃなかったんだけどね。始めて見るとこれが意外と面白くて。人々の経済に対する見方、みたいなものがこれを通して見える気がしてね。」


画面には数字がいっぱい並んでいて、どれがどれやらさっぱりだ。

ただ、左上にある数字がたぶんお父さんが持っている『ポイント』みたいなもので、お金に換金できるとか、そう言うのなんだろう。


「この左上の数字がお父さんが持っているポイントかな?」


「そうだよ。と言っても、ポイントじゃなくて、これがこのまま日本円での残高になる。」


「えっ・・・??」


 これが・・・このまま・・・残高?

 ちょっと・・・待って・・・桁が。

 千、万・・・億・・・?


 ひとまず深呼吸しよう。


「ふ~~。

 さすがにびっくりした・・・

 こんなに貯まるものなの?」


そうお父さんに聞くと、一つのグラフを表示してくれた。


「これが、ドルと円の相場変動を現したチャートだね。

 要は、安い時に買って、高い時に売れば差益が出る仕組みだ。


 だけど、安いと思って買ったらもっと安くなることもあるし、高くなったと思って売ったらもっと上がっていくことだってある。本格的にやっている人は、いろいろなデータやら世界情勢やら、そう言うものから相場を想像しては売り買いしているんだね。


 ただ、お父さんの場合はそんなに一生懸命やっていたわけじゃないんだ。仕事をしながらの片手間だったしね。


 だけどまぁ、13年間でこうなってしまったんだな。(苦笑)


 それでね。これもちゃんと税金を納める仕組みになってるんだけど、それでも、純粋に稼ぎ方として考えてみると『生産性のある仕事』をしてるわけでもないのにっていう思いがずっとあってね、正直言って大きな葛藤があった。ただね、お前がうちに来てから考えを改めた。これ自体は確かに生産性はない、であれば、俺がここで得た利益で、社会的に生産性のあることをすればいいのだ、ってね。」


こんなにたくさん稼ぎながらもそんな葛藤してたなんて、なんだか縁君に通じる堅さがあるんだなぁ。

財テクでそんな悩みを持つなんてお父さん位では?


きっと普通の人だったら高い車を買ったり、大きな家を建てたり、世界一周旅行へ行ったり、・・・そして働くのをやめたり。


そんな風にならず、ごく普通に生活しているお父さんって、それだけでも凄い。


私に対する事だってそうだ。もっとあれやこれやといろいろして甘やかしたかったに違いない。

それを普通のデパートへ買い物に行ったり、普通のファミレスで食事をしたり・・・やばい、なんだか鼻がツンとしてきた。


・・・と、一つ聞きたかった事があった。

今まではあえて聞かなかったことだ。


「ひょっとして、紗奏の家のことも何か手伝ったの?」


「そう思うかい?」


 質問に質問で返された!(笑)


「ううん。お父さんはそんなことしないと思う。

 だってそれはきっと私のためにならないし。」


そう、お父さんの判断基準は常に私優先だ。


「うん。そのとおりだ。

 手を差し伸べることが、いつも優しさだとは限らない。

 白石さんの会社は、もともと大丈夫な会社だからね。

 あのCMだって、ただのイメージアップ作戦でしかない。

 いい仕事をするからお客さんが付く、それだけなんだから。」


「でもお父さん、あのスタジオって、私たちが遊ぶだけなんだけど、社会的に生産性があるのかな?(笑)」


「おっ!、良い質問だ!

 凄く遠い話になるんだけどね、君と紗奏ちゃんの歌はあんなにたくさんの人が見てくれて、あんなに良い評価をされた。みんなが楽しんでくれたって事だ。ということはそれだけで社会的に良い影響を与えた、と考えられるね。それはそのまま良いスパイラルを社会に生んでいく。お父さんはそれが目に見えない社会貢献だと思うよ?


 だから、これからもお前たちは純粋に楽しむだけでいい。

それがそのまま、まわりまわっての経済効果だな。(笑)」


「う~~ん、そうなのかな~~(笑)

 あ、そだ!

 学校の皆とか呼んじゃダメなんだよね?」


「ダメってわけじゃないけどね、大人の目が届かないところで思春期の子供が大勢でいると、やっぱり危険だとお父さんは思うよ。だから、その時は誰か信頼できる大人の人を管理人にしようかなって考えてるから、遠慮しないで言ってな。」


「うん。わかった~。」


 そう言って横のお父さんに抱きつく。

なににつけ、お父さんはとてもでっかい。


「あれ?でもじゃぁ、私達なら大人の目が届かなくても平気なの?

 みんなカードキー貰ってたけど、美沙と安藤君二人っきりとかでも?」


私はちょっとニヤニヤしながらお父さんを見上げる。


「あぁ。お前たちの事は何があっても信頼してるし、責任は全部俺がとる。ちなみに・・・お前と縁君が二人っきりでも心配はしないぞ?」


あ。仕返しに弄ってきた!(笑)


・・・そうだ。せっかくだし相談してみよう。


その日、久しぶりにお父さんと一緒に寝て、縁君のことについて相談をした。


でも・・・返ってきたアドバイスは紗奏と一緒で、


『恋に慌てる事は無い、気が付けばよいようになっている。』


って。


お読みくださりありがとうございました。


こんなに儲かるなら、私は遊んで暮らします。ハイ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ