転校生の道兼君
転校してきた道兼君。
【道兼】
父さんの都合上、引っ越しを繰り返すことには慣れている。
『雰囲気が良ければいいな』とは思うけど、新しい学校だからと言って特に心配はないし、普通に平穏に過ごせればそれでいい。
長くて2年、早ければ数か月で引っ越さなければならないこともあったし、だから仲の良い友達ができても、すぐ疎遠になる。
それもまたしょうがない。
先生に紹介され、クラスを見回すとパッと見てわかるほどよい雰囲気にほっとする。
休み時間には転校生の僕に興味津々の男子が押しかけきて、いろいろ聞いてくるのもよくあることで、僕もいつもの通り答えている。
ただやっぱり最初感じた通り、このクラスの雰囲気はいい。
なんというか、生徒間の確執のようなものをほとんど感じないのだ。
今までの学校と同じように、父の仕事が警察官だと言うとみんなかなり好意的に受け止めてくれた。たぶん大人になると、警察官とはうざったい奴という印象に変わるのだろうけど、子供のうちは『正義漢』に映るんだと思う。
そして、男子たちの話題に必ずと言っていいほど上がったのが、このクラスでひときわ目を引く容姿をした3人の女子生徒だった。
転校を繰り返している自分にはまさか縁があるとも思えないが、噂をする男子たちはみな彼女たちの一挙手一投足に興味津々だ。
アイドルとはこういうものを言うのだろう。
そうして三日ほど経った昼休み、クラスの男子から相談に乗ってほしいことがあると告げられた。転校間もない自分に申し出るくらいだから、僕というよりも父に聞いてきて欲しいのだろうと思った。(今までもそう言ったことはあったからだ。)
放課後、担任の先生に呼ばれたため、その生徒(向井君)に『少し遅くなるかもしれない』旨を伝えて職員室へ行くと、単に転校後の様子について尋ねられただけでそれほど時間はかからず、僕は職員室を後にした。
ところが、教室にも、げた箱付近にも、そして校門辺りまで出ても向井君がいない。
・・・と思ってスマホを確認すると、メッセージが残っていた。
『駅前の喫茶店まで大至急来られたし!』
リンク付きでそう記されていた。




