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突然ですが、娘ができました。2  作者: ほととぎす
第1章の3 中学3年生編 (日常)
35/64

2学期中間試験

今年は受験生。

友達と一生懸命勉強してきた。

もうすぐ2学期の中間試験。

  【学生の本分はお勉強です!】


 9月も中旬を過ぎ、晴れているととても空が高く感じられるようになってきた。空気も澄んでいて町の遠くまで見渡せる。


この時期になると天気予報が『曇り』くらいだと、いつ雨が落ちてきてもおかしくない。今日も朝は秋らしいカラッとした天気だったけど、今はもう雲行きがアヤシイ。『泣き出しそうな空』なんて言い方があるけど、本当にそんな感じだ。


 ・・・そして放課後。


 去年、勉強と言えば紗奏に見てもらっていたのだけど、今年は縁君といい、安藤君といい『優秀な先生』には事欠かなくなった。


 夏の間、たまには外で勉強してみようと言う事になり、紗奏と二人で向かいにある喫茶店のテラス席に座り、紅茶を飲みながら勉強してみたところ、これが凄く集中できた。やはり、勉強も毎日が同じ環境だとあんまり捗らないのかもしれない。


 そんなことを昨日の帰り道で話してみたところ、『それじゃ気分を変えて、少し学校で勉強してから帰る?』という話になり、みんなでこうして図書室の隣にある自習室に来ている。


 先週のカラオケ大会からあと、どういう心境の変化か明美が良く私の傍に来るようになった。彼女も何かが吹っ切れたのか、それとも『変わりたい』と思い始めたのか、最近は誰彼となく気を配っている。今日の勉強会もこうして一緒に来ているし、他には絵里沢さんと、渡辺さんという8人のメンバーだ。


 こういう勉強会って、『教えてくれる人』に甘えてるだけなので、少なくてもその分はいい成績を取って恩返しをしないと。


 私はいつものように紗奏に、美沙もいつものように安藤君に、なので明美は縁君に、絵里沢さんと渡辺さんは二人向き合いながら、分からない事は紗奏に・・・そんな感じに勉強を進めていた。


 この自習室は、放課後使う時には飲食が許されている。

といっても匂いがするものとかお弁当とかそう言うものはさすがにダメで、よくみんなが持ってくるのはコンビニで買ったクッキーとかそう言うものが多い。


 40分ほどして小休止の間、みんなが鞄から何か出そうとすると、

「あ、今日はクッキー焼いてきたから、良かったら食べて。」

と、明美が可愛らしい手提げ袋からクッキーの入った箱を取り出して、みんなの目の前に広げた。


 「 「 ありがとう。」 」 (by縁&道兼)

 「木野下さん、女子力高ーい!」 (by絵里沢&渡辺)

 「 「 ありがとう~」 」 (by紗奏、美沙、私)


 それは甘くてとってもおいしく、みんな思い思いの賛辞を送っていた。


 さらに40分ほど勉強して今日はお開きにする。

小休止の時、私たち3人以外の女子から、さかんに男子二人の住処について質問が出たのだけど、そこは明かすわけにいかないから、『たまり場になるようなら解約するので、友達には教えないように両親から言われている』と説明していた。駅二つも離れたマンションがたまり場になることなんて無いのだろうけど。(笑)


 学校を出ようとすると、まさにたった今小雨が落ち始めて来ていた。


「えー!、朝あんなにいい天気だったのにー!」

「美織、大丈夫あたし傘持ってきたし。」

「あ、茉莉華ちゃーん、大好きー。」


そんな絵里沢さんと渡辺さんの横で・・・



「私も忘れちゃったけど、家近いし走ってくね。

 また明日ー。」


そう言って走り出そうとする彼女を呼び止める。


「あ。明美、これ持ってって。

 私は紗奏に入れてもらうから。」


「え?いいの?」


「いや、近いなら僕が送っていく。

 クッキーのお礼に。」


「じゃ、縁君お願いね。」


 そう言って、私は紗奏と。

 美沙ちゃんは安藤君と。

 絵里沢さんは渡辺さんと家路についたのでした。


・・・


そして帰り道・・・


「どう思う?」

「う~ん、心境の変化でもあったのかな?」


私と紗奏はここしばらくで様子が変わった明美について話し始めた。


「土井君に惚れたっぽいかな、と思ったんだけど。」

「それはあるかも、私もちょっと思った。」


「いいの?」


(ぷっ)私は少し吹き出す。


「縁君とはそういうんじゃないよ。

 前も言ったけど、私、いまだに恋愛感情とかって無いんだよね~。

 お子様なのかもしれないし、小学校の時のトラウマかもしれないし。」


「小学校って、梨桜モテてたじゃん、アレがイヤだったの?」

「えー!、モテてないって!、軽いいじめにあってたとは思うけど。」


「ぷっ。それこそ、えー!だよ。

 その虐められてたって言うのって、小3から一緒だった戸田でしょう?」

「うん。そうだけど・・・」


「あいつ、喧嘩っ早くて怖がられてたけど、梨桜が好きで好きで、それで悪戯してたんだよ?あの時のクラスメイト、みんな知ってた。(笑)」


「ま・・・まっさか~~

 好きならあんなことしないって!」


「ねー、女の子としてはそう思うよねー。

 ところが、男の子って好きな子と話したいもんだから、ああやってきっかけを作りたがるんだって。

 あんまりしつこいもんだから、先生にも言われてたじゃん。

 『戸田は八月朔日が好きだから、そんなことするんだろ。』って。」


「むぅ~~・・・。」


 今思い返しても、結構辛い日々もあった。


好きか嫌いかはともかく、おさげを引っ張られたり、ノートに落書きされたり、背中を叩かれたり・・・


 一つ一つの事はそれほど辛くはなかったと思う。

なんというか、『攻撃的』な感じじゃなく、からかわれているようなものだったから。それでもそれが1年も続けばさすがに辛くなる。


 それに、その事以上に女子の視線が私は怖かった。


 最初、何故か分からなかったけど、いつもいつもヒヤヒヤしながら私は会話を紡いでいたような気がする。


 たぶん私はあの頃からその場の空気を感じ取ろうとする癖がついたんだ。


 結局いつもヒヤヒヤ止まりで虐めにあうことはなかったけど。

でも、それが全部この紗奏がいたおかげだと、それだけは断言できる。


 何かにつけ、後始末を頼まれたり・・・

 それを決めるじゃんけんで私ただ一人が負けたり・・・


 多分あの辺りが虐めになるかどうかの分かれ道だったと思う。


 『あぁ、あたしも暇だからやるよー。』

・・・

 『一人じゃ大変だから、手伝うよー。』


・・・そう言って何度か手を貸してくれた。

その時の嬉しさは今でも忘れない。


そんなことが何回かあり、やがてひりつく様な緊張感は薄れていった。


 そして中学に上がると、今度は明美グループだ。


 ほんとに、小3から、今まで離れることなく一緒の紗奏は、間違いなく私の天使。

 今考えると、タイムリープで私を助けるために過去に戻ったんじゃないか?とすら思えてしまう。



「それにしても、それで梨桜を男性不審にするとか、戸田、死刑だね!」


「不審、っていう程でもないんだけどね。

 恋愛はまだまだ先かな~~。」


「でも、まっ、気絶するくらい好きなんだから、心配ない・・・か。」


「それなんだよね~、会って気を失うって相当だよ。

 歌が好きとか、私が好きとか多分そんなことじゃない気がする。」


「相当好きなんじゃないの?」


「う~ん、見ていてもそういうのは感じないんだよね。

 何かもっと別の、自分で言うのも恥ずかしいんだけど、

 『私を守る、守らなきゃならない』・・・みたいな。」


「それは好きだからでは?」


「どうなのかな~・・・。

 多分、今は聞いても話してくれない気がする。」


「(クスっ)本当、梨桜って本間さんと似てるよね。」


「ええっ?、今の流れでそうなりますか?紗奏さん。(笑)」


「何というかねー、物事の本質をいつも見ている、みたいなとこ。

 ・・・じゃぁさ、いっこしつもーん。

 土井君が明美を送っていったのはなんででしょうー?」


「・・・・・・

 それは言いたくないな~~

 ・・・当たっているとやだし。(苦笑)」


「クッキーのお礼ではないよね。

 で、あたし達が気づくくらいだから、彼もきっと気づいた。

 彼の性格から、面倒なことは早めに済ませたい。

 そして彼の目には梨桜以外ない。

 ・・・

 あたしが気づくくらいだもんね。誰でも気づくか。」


「む~~。」


「でもさ、他の男子には壁作ってるのに、土井君と安藤君にはそれを感じないんだよね、なんで?」


「あ。それはあれだよ。距離取ってくれる人は大丈夫みたいな感じ。

 縁君と安藤君は、なんていうか、もう大人の距離を取ってくれるからすごく楽なんだよね。だから全然平気。

・・・って、紗奏!」


「ん?どした?(笑)」


「今言ったこの『全然平気』の使い方って本来は間違ってるんだよね、『全然』の後は否定形。(笑)だけど、もうほとんどみんな使ってて、良いんじゃないかっていう議論もあるみたい。『言葉は変わっていくものだ』って。

 こういうの、テストに出たらやっぱりちゃんと『バツ』にしないとなんだよね?(笑)」


「(ぷっ)梨桜ってホント国語好きだよね。去年も思った。

 今じゃもう全然使わない言葉とか普通に使うもんね。」


「あはは~、古い日本語が好きなのです。」


「こないだの小テストもよかったじゃん。」


「うんうん。夏にいっぱい教えてもらったから。

 紗奏のおかげだね~。」


 駅一つで紗奏と別れ、信濃駅を出るころには雨は上がっていた。

雲の合間から夕陽がうっすらとさしている。



  【とある少女のイライラ】


 『・・・勘違いだったらゴメン、最初に謝っとく。

  僕は少なくても大学に合格するまでは恋愛とかしないことにしてるんだ。』


一つの傘に入って横を歩くネクラ男はそっとそう言ってきた。

もっと明るい顔とか、髪型とかできないんだろうか?


(まったく・・・あたしが何のためにこんなことをしていると思ってるんだろう。)


『梨桜さんは?』


あたしはとりあえずそのことを聞いておく事にした。


『いや、彼女とは何でもないんだ。

 親が幼馴染で、たまに会う程度だっただけで。』


『そっか。

 梨桜さんって、男子のことはかなり苦手にしてるみたいで、

 その彼女が土井君とは親しかったから、みんなびっくりしてた。

 土井君は何とも思ってなくても、梨桜さんは好きなんじゃない?』


『それはないよ、絶対ない。』


 この男はそう、強く否定した。



・・・そんな帰り道でのことを思い出して、あたしはモヤモヤしている。

あの女が彼のことを好きでないとしたら、あたしのしていることはただの茶番だ。

だけどあたしにはそうは思えない。今日だって無理してこっちに興味が無い振りをしていたのかもしれないし。


・・・


それより、あの男、あの男は何なんだ!

いつもより広めに胸元のリボンを緩めていたのに・・・

聞くふりをして胸を押し当ててやったのに・・・

まるで無反応・・・。


まぁそれも、考えように依っちゃあ『梨桜を意識していた』、とも取れるし、まだまだこれからだ。作戦は始まったばかりなんだから。



  【梨桜】


 10月に入り、朝はめっきりと冷えるようになった。

布団から出るのにちょっと勇気がいる。(笑)


 今週から中間テストだから、あれから結構頑張って勉強してきた。

最初の勉強会の次の日、ひょっとしたら明美はもう来ないかな?って思ってたけど、あれからもずっと来ていてちょっとびっくりしたと言うか、こういう一面もあるんだなぁって思った。紗奏があの時言ったように、あの帰り道で縁君が明美に何か伝えたであろうことはたぶん確実。それでもああして頑張ってアピールしていた。ちょっとやりすぎの気もしたけど・・・でも持っている『武器』を使うのは戦術として正解です!・・・なんて(笑)


 布団の魔力に抗えずそうして先週までのことを思い返していると、リビングの方から音が聞こえだした。


(ヨシっ!、日曜日の今日はうんとお父さんに甘えよう!)



  【2学期中間試験】


 昨日から始まった中間試験、国語も社会も結構書けたと思う。

試験後の答え合わせでもいい感じだったし。


今日は理科と、数学だ。


足取りも軽く自分の机に向かい、座ろうとしたとき丁度光の反射で机の上にある『それ』に気付く。

このタイミングじゃなきゃ気づかなかったはずで、背筋がぞっとした。


何気ない素振りで、さっとウェットティッシュを取り出し、『それ』を拭き取る。

念のため空になっている机の中も全部。


試験期間中は2限しかないから、いつもよりずっと悪戯はしやすい。

しかしさすがにこれは気持ちが悪いので、後でみんなに相談しなきゃ。


・・・さてっと。

今日も試験だから気持ちを切り替えないと。


・・・

   ・・・


 今までは苦手だった今日の科目も、自分でもびっくりするくらいによくできた。何というか、とても充実感がある。


「お疲れー。」

「お疲れっ、今日もいつものとこで答え合わせ、イイ?」


「オッケー。」

「あ、あたしも一緒に行く。」

「うん、いこー。」


今日も明美が声を掛けてきた。


「玄関で待ってて、ちょっとトイレ。」

「はーい、行っトイレー。(笑)」


二人にそう言い、教室を出てちょっとだけトイレに寄る。

ところが、個室から出ると待っていた風に美帆と紗理奈が話しかけてきた。

「梨桜、あのさ、明美の事なんだけど。」


そんな風に切り出す美帆。この二人は彼女とよく一緒に行動してたし、今の状況が気に入らないのかな?


「うん。明美が?」


「あの子さ、きっと何か企んでるから、気を付けたほうが良いよ。」


その一言にとってもびっくりする。


「えっと、私達と一緒にいることが?」


「そう。

 気づいてたと思うけど、あの子梨桜の事すっごい嫌ってたじゃん。絶対おかしいって。」


「ありがとう。でも、何か心境の変化かもしれないし、

 今の状況は私も嬉しいかな、って思うし。

 でも、ホントありがとう。気にかけてくれて。」


「・・・はぁ。

 お前ってホントいい奴だよな。

 なんであんなに嫌ってんだろ?

 ・・・って、あたし達も去年までなんかゴメン。

 一度ちゃんと謝りたくて。」


「ううん。平気平気。

 でも、本当、ありがとう。」


 二人を待たせているので、軽く手を振りトイレを後にする。

仮に、明美が何かを企んでいたとしても、今現在の状況を崩したくはない。嫌いな人が多い人生も、嫌われる人生もちょっと悲しい。



 いつものカフェで答え合わせをした後、今朝のことをここで話すかどうか一瞬考え、そして話すことにした。


「あのね、ちょっと相談~。」


「うん、どした?」


「たぶん、例のノートの事と関係あると思うんだけど、

 朝、机にちょっとした汚れがあってね。」


「えっ?一緒にいたあたしは気づかなかった!

 ・・・そう言えば拭いてたよね?」


「それがねぇ・・・唇の跡なんだよね。

 光の具合で偶然見つけたんだけど、

 ひょっとして、今までもあったのかと思うとぞっとして・・・。」


「げっ!

 それ、深刻だよ!だんだん悪化してきてる。」


「紗奏の方は何もない?最近。」


「あたしの方は何もないね。

 てかさ、最初のノートの事も今になって思うと、梨桜の机と間違えたとかかもしれないし。」


「えっと、その話ってあたし聞いてもいい話?」

全く寝耳に水の明美がそう聞いてきた。


「あ、ゴメンいきなりで分からなかったよね?

 4月から何回か黙ってノート借りていかれた事があって、

 本当に黙って借りていったのならいいんだけど、

 変な目的で借りていったのならやだな、

 そう言う話もしてたんだ。


 それで、たまたま今朝、机に今言った跡を見つけたからこれはヤバいな・・・って。」


私がそう言うと、明美はちょっと何かを考え・・・そして、


「えっと・・・説得力ないかもだけど、あたしじゃないよ?」


「えっ?・・・あっ、そうじゃなくて、男子なのはほぼ確定で、

 9月に2回、帰りにあと付けられたこともあって、

 同じ生徒かどうかわかんないんだけど。」


「顔までは見てないんだ?」


「縁君しか見てないんだけどね、遠目だったからはっきりとは言えないけど、ウチのクラスじゃなさそうだって。」


「・・・可愛いのも大変だ・・・。」


「えっと、あ・ありがと・う?」


「アハッ、そこ、お礼言うとこー?」


「後で、安藤君と土井君に考えてもらおう。

 いつもの推理力で。」


「うん。中間試験も明日で最後だし、そしたらまた集まろっ。」



  【少女はさらにモヤモヤする】


(あー、もう、何このモヤモヤ感!)

(なんかむかつくし!)


部屋に入るなり、着替えもせず、鞄を放り投げベッドへダイブした。


・・・もやもやの正体。

それは分かろうとすればすぐにたどり着ける。

ただ、そんなことは断じて認めない。


あたしはあの女にコケにされたんだ。


『気持ち悪いからもう話しかけないで。』


そう、今まで生きてきて一番むかついた瞬間を思い出して自分を鼓舞する。

あれから周りの皆の私を見る目がはっきり変わった。

あの瞬間まで、私はクラスの主導権を紗奏とさえ張り合っていたはずだ。


・・・それなのに。


(ばふっ、ばふっ・・・)


・・・あのクソ女に・・・


(ばふっ、ばふっ・・・)


面と向かって『可愛い』とかありえないだろ!

クソっ・・・。


おいでいただきありがとうございました。


中学校の学習要領とか、学習範囲とか、今更ながらに振り返っています。


コロナ禍の中、どうか頑張ってくださいますよう。

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