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突然ですが、娘ができました。2  作者: ほととぎす
第1章の3 中学3年生編 (日常)
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不穏な空気

転校間もない縁が、学校の美少女3人組と仲が良い・・・その波紋が少しずつひろがり・・・

  【美沙】


 劇的な土井君の登場(梨桜との距離感が近いと言う謎の意味で)から1週間余り経った。

今日もまた、学校帰りに後を付けて来る奴がいるって事で、今度はまっすぐこのカフェに入った。


 しかし外を見回して待っていても、そいつが通る気配はない。

どうやらかなり慎重な奴のようだ。


 それにしても・・・と、最近のクラスの様子を思い出す。


いきなりの転校生に梨桜が寄っていって親しげに話しかけ、それからも度々話に行くもんだから、それまで紗奏との仲を温かく(?)見守っていた男子グループの(たぶん)ほぼ半分はこの世の終わりのような顔をしていた。


ホントにウチのクラスの男子は単純。


だけど、ただ話しているくらいで、そうも悲観的にならなくていいだろうに・・・。


まぁ、最近の梨桜は可愛さを隠さなくなったからな。

男子としては『特定の誰か』と仲良くされるだけで辛いんだろう。


それとは反対に、紗奏押しと思われる男子には特に目立った変化が見られないんだよな。それは梨桜との百合疑惑以前に、紗奏がもう中学生らしからぬ存在であるからだと、私は思っている。


もともと綺麗でスタイルもよかったんだけど、梨桜と一緒にいるようになってから『大人っぽく』なった。『艶が出た』とでもいうのだろうか?だから私はこの二人が本当にそうなのではないかと、真面目に疑っている。


もっとも、だからと言ってどうこういう事はない。私もこの二人が大好きだから。



 そして、最近何かとよろしくない噂がある。

この目の前で能面のような顔をする『土井君』の噂だ。


なんだかんだで、私は結構友達付き合いが多い方だ。

だから変なとこから変な情報が入ってきたりもする。


なんでも、前の学校で『いじめられて転校してきた』

いやいや『いじめをしていて学校に居られなくなった。』

と両極端の噂がそれだ。


誰が言い出したのか知らないが、どうせ、梨桜と仲良く話す彼に対する嫉妬から出たものなんだろう。


ただ、気分は悪い。


悪いけれど、あえてそこに割り込んで否定する気にもならない。

面倒くさいのは嫌いだ。


・・・そう思っていたのだが、この仏頂面を見ると仲良くしている梨桜が可哀そうになってきてしまう。


コイツの悪評でこの子まで巻き添えになってはたまったもんじゃない。


「ところでさ、土井君。」


「ん?なに?」


「今なんかいろんな噂されてるんだけど、知ってる?」


「いや、知らないな。」


やはり、そう言った事には全く興味がない様子だ。

私は道兼、紗奏、梨桜の順に目で問いかけるが、3人とも首を横に振っている。どうやらまだそんなに広まっているわけではなさそうだ。


「前の学校で虐めてたとか、虐められてたとか、そう言う噂なんだけど。」


「ふーん。そう言う事実はないよ。

 こっちに来て誰かの恨みを買うなんてこともないはずなんだけどな。」


「察し位つかないか?」


「それ位はつく。」


なるほど。どうやら自分が嫉妬の対象になっていることくらいは意識の内にあるらしい。


「なら、今度誰かに聞かれたときは、ちゃんと事実を言ったほうが良いと思うよ。」


「あぁ。聞かれたらそうするけど、あいにく話しかけてくる生徒はあまりいないな。今のところ。


 それに、仮に僕本人が噂を否定しても効果は少ないと思うし。


 どのみち、あれだよ。

 自分の評価は日ごろの自分の有り様からされるものだから、

 普段通りにしていれば分かって貰えると思う。

 嘘の噂で相手を貶めようなんてする奴は、必ずまわりまわって自分の存在価値を下げることになる。

 それだけのことだ。」


うーむ。

この物の言い様。

本当にコイツは同級生なのか?

道兼もたいがい大人びていると思っていたけど、

コイツはちょっと度が過ぎている。

もうすでに達観していると言っていいレベルだ。


・・・そんな事を考えていると・・・


「まさかとは思うけど、杉田あたりが広めてるとかかな?」


そう紗奏が言った。

たしか、去年梨桜に告白したという彼のことだ。

なんでも、その場に紗奏を同伴させたと言う。

単純に男子が怖かったのだろうけど、ちょっと相手が可哀な気もする。


「う~ん、彼は関係ないと思うな。

 あれから何も言ってこないし、それにほら、

 女子2人を目の前にしてあんなことが言えるんだから、

 根に持つタイプじゃない気がする。」


「梨桜が土井君と仲良く話してるから、結構な人数の男子が死んだ魚のような目で見守っているけど、それでもウチのクラスの雰囲気からだと、そう言う陰険な手段を使う奴がいるようには思えないな。噂も他クラスだけみたいだし。」


「あ。ねぇ梨桜。

 ノートの家出ってさぁ、ひょっとしたら何か関係あったり?」


ん?

なんか初めて聞く話だ。

言い方は可愛らしいが、それは虐めに遭ってるんじゃないのか?


「どうなんだろ?」


「なんだ?その『ノートの家出』って?」


「あぁ。4月からね、2,3回ノートが無くなったことがあって。

 でもすぐ戻ってきてたから、誰かが黙って借りたのかもしれないし、

 ひょっとしたら、私と紗奏の仲を怪しんで・・・な~んて推理したりしてたんだよ。」


「ちょっと待った。

 僕はまだここに来て1週間ちょっとしか経ってないけど、

 それでも、君たち3人が尋常じゃないくらい注目されてるのは分かった。

 そんな人の机とか鞄の中からノートを黙って借りるなんて普通はできない。」


「だよね。僕もそう思う。

 クラスに誰もいなくなったのを見計らって・・・

 っていうのもなんだか凄くリスキーだ。

 もし誰かに見られたりしたら、学校にはいられないくらいのダメージを食らうと思う。

 ・・・すると、他のクラスの生徒って事になるんだけど。」


「だな。科学や音楽、美術、社会でもたまにクラスを移動することはあるし。

 他クラスの奴がこっそり入ろうと思えばできないことはない。

 だけど、持ち出す時はともかくとして、返す時はそれ以上に大変だぞ?


 無くなってたのは日をまたいではないんだよね?」


「うん、その日のうちには帰ってきてたよ。

 最初のは勘違いかも?って思ったくらいだし。」


「すると、日に2回も出入りしなきゃいけなくなるな。

 空きになった僕らの教室に。」


「なんだか気持ち悪いね。」


「そう言われてみるとそうだね。

 6月頃だっけ?梨桜と話したときは、笑い飛ばしてたんだけど。」


「そう言う粘着質な奴なら、他人の悪口を触れ回るってのも理解できるな。」



 ノートを無断で拝借して、その輩は何がしたかったのか?

 好きな子の取ったノートを見て興奮したりしてたのか?

 それとも・・・

 においをかいだり?

 な・・・舐めてみたり?


 (ブルブルッ)

 私は背筋がゾクっとした。


いっそ虐めのほうがまだ救いがある気さえする。



  【カラオケは皆で?】


 (う~~ん!)

 今日の授業も終わり、私は大きく伸びをした。

 まだまだ残暑が厳しい。

 いえ、暑いのは好きだけどね。


昨日、あんな話をした後なので、なんとなく机の中に意識を置いていたから、なんだかちょっと気疲れしたかも。

 ・・・そう思っていると・・・


「梨桜、今日久々に。」


そう言って、紗奏は口の前に『グー』を作る。


「うん。久々にいきますかっ!」


すると後ろの方から声が掛かる。


「おっ、なんだなんだ、どっか寄ってく?」


「うん。久々にカラオケ。美沙ちゃんも行こ?」


「オーケー。」


そう言って辺りを見回す美沙ちゃん。

そっか、安藤君も誘うのね。(微笑)


そこで私も縁君に声を掛けに行く。

「縁君、今日時間ある?」


「うん。予定はないけど。」


「みんなとカラオケ行くんだけど、どう?」


「ああ。凄く魅力的な提案なんだけど、勉強もしないと・・・」


 (ぱしっ!)

縁君の言葉が終わらないうちに、美沙ちゃんがその背中を叩く。(笑)

いつの間に背後に!


「たまには息抜きもしないと、勉強の効率も悪いって!

 脳ミソはたまに環境を変えてこそ、活発になるのだ!

 土井君。」


「 「 アハハッ 」 」


「いいんじゃないか?たまには。

 縁って家でもずっと勉強してるだろ。息抜きも大切だって。」


「あっ!、あの、私も行きたいな~~・・・なんて。」


そう横から声を掛けてきたのは絵里沢さん。


 私、気になってこの間の事調べちゃいましたよ!

『攻めと受け』ってそう言う事だったのですね!(笑)

でも残念ながら、この二人にそのケはありませんからね!(笑)


「あ、私も本間さんと白石さんのデュエット聞きたい・・・。」


なんと、この間止めに入った渡辺さんまで・・・。


すると、それまで静観を決め込んでいた周りの男子までも・・・


「あ。はーい! はーい! カラオケ大会希望ー!」


何とクラス中の皆がこっちに集まってまいりました。

・・・なんだか少し怖い。

・・・そう思っていると・・・


 (ぽんぽんっ)


背をポンポンされて振り替えると、紗奏がにっこり微笑んでる。

ふぅ・・・っと一息。


「それじゃ、みんなで行こーっか?

 いける人ー?」


・・・そう言っててきぱきと人数を把握していく紗奏。

うん。いつ見てもカッコいい。


クラスで何か決めるときでも、ちょっと話が煮詰まったりすると、必ず紗奏がクラスをまとめるのだ。


すると、手は上げていないものの、ちょっとモジモジとする女子が3人。

そんな様子を目ざとく見つけて紗奏は声を掛ける。


「金子さんと、小出さんと、小林さんは用事?」


「えっと、行きたいんだけど、今日手持ちが・・・」


「あ、なら貸そうか? あたし今1800円くらいある。

 梨桜は?」


「うんと、1500円くらい。」


「あ、ちょっと待って、大ごとにしたの私だから、私が立て替えます!」


と、手を挙げてくれる絵里沢さん。

私と紗奏は顔を見合わせ、「それじゃ、ゴメンおねがいね。」

そう言って、またクラス内をくるっと見回し・・・


「帰った人はいないね。全員か。(笑)」

「入れるかな?(笑)」

「今の時間なら大丈夫でしょ。たぶん!」


・・・と、なんとクラス総勢31人での大カラオケ大会が急きょ決定したのでありました。



 厳正なくじ引きの結果、私は女子3、男子2の5人グループになった。このカラオケ店は10人くらい入れる部屋が2つあり、空いていたのでそこと、普通の部屋2つの4つのグループに分かれることにした。くじは学校で作って持ってきていたから引くだけなんだけど、男子の中に女子一人とかだと困るので男子と女子は別々のくじで引くことに。


 私のグループは、明美と渡辺さんと、河合君と九条君だ。

明美とはあれ以来特にわだかまりもない気がするのだけど、不安が無いと言えば嘘になる。渡辺さんは絵里沢さんと仲良しという事はそういうご本の趣味があるのかな?河合君と九条君はあまり話したことが無いけど、漫画やアニメの話で盛り上がってるグループにいる気がする。


 ・・・早い話が、私、とっても困ってしまっています。

話し相手が・・・いない。


 歌い順はじゃんけん・・・かなぁ。

 最初だけは嫌だなぁ・・・


そんな風に考えてボックスに入る。


「じゃ、じゃんけんで順番決めよーぜ。」

そう言う河合君。


(やっぱり・・・普通はそうだよね。)

そう思っていると・・・


「こういうメンバー初めてなんだしさ、先、男子行ってよ。(笑)」

そんな風に明美が言ってくれた。


二人は顔を見合わせて・・・

「じゃ、先行くわ。

 今時の歌なんて知らねーし、アニソン行きまーす。」


歌いだしは河合君からとなり、なんとなく座った席順で私は4番目になった。

お気に入りの曲を歌い終えると、みんながとっても褒めてくれた。

歌っている時は静まり返っていたから、凄く心配だったのでほっと胸をなでおろす。


二巡目に入ると、横から明美が話しかけてくる。

「歌上手いじゃん、次一緒に歌わない?」


なんと、思いもかけない申し出だった。

正直、明美が私を好きじゃないのは分かっている。

中学に入ってすぐそんな感じだったから、特に理由なんてないのだと思う。相性であったり、なんとなく癇に障るやつだと思ったり。

ところが、グループが決まってからというもの、どうも私のことをかなり意識している気がする。たとえ表面上だけだとしても、こうして大人の対応をしてくれると、正直言ってほっとしてしまう。


 そして私たちが歌い終えると・・・

 3人の大拍手とともに・・・

「やっぱ、本間さんってそっち系なんだ!」

「土井君と親しそうだから、びっくりしたけど、今見て安心した!」


河合君と九条君にそう言われて私は悩んでしまう。

・・・う~ん、これはどう返したらいいんだろう?


困ったときはこれしかないと、にっこりと微笑んでやり過ごすことにした。ところが・・・


「あっ、なぁっ!、土井君とはどういう関係?」


九条君が続けてそう聞いてくる。

「幼馴染みたいなもの・・・かな?」

(お父さんがね!)


「あ、それであんなに親しそうだったのか。

 本間さんって男子はちょっと苦手そうだったのに、いきなり来た転校生と仲良くしててびっくりしたよ。」


(う~ん、困ったな・・・)


「ご両親にもよろしくって言われてるから、慣れないうちは聞きたいこともあるかと思って。」


・・・ありきたりで差しさわりのない答えを探してそう言っておく。


「はーい、男子、男子ー、梨桜とお話したいのは分かるけど、歌入れてー。(笑)」

なんとまた明美のフォローが入る。

えーっと・・・これはどう解釈すればいいのだろう。

そう思いながらも、そっと目線を送り、(ありがとう)の意を伝えた。



  【ある少女の視点】


 ほんっと、この女むかつくわ。

顔だけ可愛いからって、性格ブスが!


だけど、そう言う思いは今は努めて伏せることにしている。


(笑顔、笑顔。あたしはこの子が大好き。)


残念だがこのクソ女は今や学年カーストのトップと言っていい。

それもクソむかつくけど。


いや、こいつの人望じゃない。

紗奏にくっついているおかげでこいつも持ち上げられているに過ぎない。

彼女だけは正直言って別格だ。誰がどうあがいたところで到底太刀打ちできない。漫画に出てくるような完璧な女だ。癪だけど。


反対にコイツを見てみろ。

体型だって、ほらこのとおり、小学生かよ!って突っ込みたいほどだ。

勉強も運動もソコソコのモブだ。


それでもあたしは我慢している。

いや、我慢していた。

そしてやっとチャンスが巡ってきた。


普段男嫌いのコイツが、幼馴染とやらの転校生にはやけに親しい。

本人は否定しているつもりなんだろうが、傍から見ればバレバレだ。


だからあたしは決めた。

あの転校生を落としてこいつをどん底に落としてやるのだ。

自分で言うのもなんだけど、顔だって悪くないし、胸だって大きい方だ。


『おっぱいが嫌いな男なんていない』


どこかの本にそう書いてあった。

事実ブラウスのボタンを一つ外すだけで、男子どもの視線は面白いように胸元に吸い寄せられていく。


・・・バレバレだっつーの。


まぁ、今日は残念ながらその転校生とはグループが分かれてしまったけど、今はこうしてこの女と仲良くなる『振り』をしなければいけない。


あたしはちゃんと知っている。

『男は女にも好かれる女が好き』なのだと。


お立ち寄り頂き、ありがとうございます。


先日は実に8か月ぶりに、外食に出かけました。


人・・・人がいっぱいで・・・とても感動しました。(笑)

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