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突然ですが、娘ができました。2  作者: ほととぎす
第1章の3 中学3年生編 (日常)
30/64

誕生日

誕生日に友達からプレゼントを渡され・・・

  【今日の終わりに・・・】


 今までにないような充実した気持ちで一日が終わる。

・・・何か一つの状況が変わるだけで、これだけ人というのは世の中の見方が変わるのかと思うほど、日常がいつもと違うものに感じた。


スマホのイヤホンで、いつも聞いている彼女の歌を聞きながら電車は駅に着く。


車内もそうだったが、構内も学生でいっぱいだ。


そして、駅を出ると目の前には梨桜さんが・・・


彼女がいるのだが、何やらトラブルのようだ。

・・・いや、ナンパされているのか?


「や、どうかした?」


「あ、縁君。おかえり~。」


その声色は明るい。

よかった。特に何でもなかったらしい。


・・・そう思っていると、


「なんだお前。」


高校生風の3人組は僕にもの言いたげだ。

近くの高校じゃない、制服が違う。


「兄妹だけど。」

とりあえず、面倒くさいのでそう答えておく。


「関係―ねーから、あっち行ってろ。」

そう凄んで言い放ってくる。


「妹が絡まれてるようにしか見えないんだけどね。」


「あー?、

 何チョーシこいてんだ?お前。」


そう言って、いきなり殴りかかってくる。

恐ろしく思慮に欠けると言うか、本能が欠落してると言うか。

だいたいお前ら、高校生が中学生をナンパとか、バカか?


父さんの手前、面倒事にはできないから、適当にあしらっておく。


(バタン!)


「って、っそ!

 ・・・おい!!」


残りの二人が掴みかかってくる。


・・・もうアホかと。


残りの2人も適当にあしらっておいて、

警察に通報しようとスマホを取り出したら・・・


「おい!! 君たち!!」


誰かが呼んだらしく既に駆けつけて来ていた。

それはそうか、ここは駅前。

2,3分で警察官が来る。


氏名と父さんの名前を出し、ざっと経緯を説明してその場を立ち去る。

特に事件化させたつもりもないし、周りのやじ馬たちも一部始終を見ていたから、何も問題はないはずだ。

それに、こういう時親が立派なのはありがたい。



「こういう事はしょっちゅうなのか?」

帰り道、一緒に歩きながら、僕は彼女に問いかける。


「ん~、こんなのは殆どないよ。

 ていうか、ナンパされたのは初めてかも。

 それに何かあっても、ほら。」


そう言って彼女は防犯グッズを僕に見せる。


「そんなものじゃ身を守れない。」


「ところがどっこい、このスプレーは強力だよ~

 って、縁君、お父さんから鍛えられてたりするの?」


「ん?少し、真似事だけ。」


「私も、お父さんにちょっとは教えてもらったよ、護身術。」


「君の腕力じゃ男にはかなわないこともある。」


「まぁ~、そう・・・かも?」


「これからは、念のため駅から送るよ。」


「縁君・・・、私の麒麟みたい(笑)」


「麒麟?」


「あ。(笑)

 今のはこっちの話で~す。」


しかし、綺麗だと言うのもいい事ばかりじゃないんだと改めて実感する。

通学路でこれなら学校でもさぞや苦労してるのではないだろうか?


「それからね、たぶんその辺にボディーガードさんがいるから。

 そんなに心配しなくて平気だよ。」



ボディーガード?

一瞬びっくりした。

でも、それもそうだな、と思い直す。

僕が父親でも、絶対独り歩きなどさせない。

貴金属店で商品をむき出しで売っているようなものだ。


・・・しかし、と僕はまた考えてしまう。


ボディーガードがいたって万全とは言えないんじゃないか?

たとえば、車を横付けして拉致る。

その車内で暴行する。

そんな手順だと、離れて見守るボディーガードでは対応できない。



 それにしても・・・、

と梨桜さんのお父さんのことについて考える。

本間さんが普通じゃないことはこの間の昼食会で十分理解できた。


いくら幼馴染だとはいえ、あの父さんが本間さんを対等の目線で見ていたからだ。


父さんはある意味冷徹で、怜悧だ。

常に考えるのは最高効率の手段と結果、そして生産性。

言葉は柔らくても緻密な計算に裏打ちされたものが根底にある。

だから価値が低いと判断すれば、上司だろうが計算には入れない。


僕ら家族でさえ、絶対超えられない線がそこかしこにある。

その危うさというか、琴線に母さんは惚れたのだと思う。


当時の警察庁長官の娘であり、警察官僚がみな喉から手が出るほど欲しがる母さんを、父さんは苦も無く手に入れたのだそうだ。

もっとも、『苦も無く』という言い方には言った本人の心情が含まれていそうだが・・・


『この人以外とは結婚しません』


母さんが当時、父親からの見合い話をすべて袖にして言ったこの言葉は、いまだに周囲の語り草になっているのだと、当の本人である祖父が僕に話してくれた。



そんなことを思い出しながら、多くを語ることなく僕たちはマンションに着いた。


こうして一緒にエントランスに入ると、なんだかとても・・・。


そう、ありえないことを考えてしまう。



  【縁】


 誕生日のプレゼントは何にしようか。

スマホで一通り検索してみたが、これと言ったものは見当たらず、土曜日の今日は街へ出て散策してみる事にした。


 この駅前でも十分いろんな店があるのだが、あえて3つ先の繁華街へ行くことにする。


 地下のショッピング街にあるファンシーなお店から、デパートまで一通り回ってみた後、思いついたものをスマホで検索してみる。


価格的には数万のものから、2,3千円程度のものまで幅広くあり、ネコ型の可愛らしいのもあった。


僕の引っ越しの日に、彼女がお向かいの猫を可愛がっているのを思い出してそれを買うことに決める。このくらいの金額ならそう不作法ではないだろう。


取り扱っている店を探すと、さっき入ったデパートでも売っているようだった。


綺麗にラッピングしてもらったプレゼントを手に持ち、駅までの道を歩いていると、女性用の小物を売っている小さなお店の店先で、可愛らしくてシンプルな髪留めが目に入った。


彼女がキッチンに立つ際、髪をアップにしていたことを思い出して、それも2つ買うことにする。

赤いガラス玉が綺麗にカットして付けられている。

こんな値段でずいぶん丁寧なつくりだ。



 本間さんには、お昼は出かける旨伝えておいたので、帰りがけにパンとジュースを買って家に帰る。


 そして、鍵を開けようとしたら・・・


(かちゃり)


あれ?閉め忘れたか?


そう思った時、


「あ、おかえりなさい。」


奥から母さんの声がした。



  【7月7日、誕生日】


 今日の彼女はちょっと落ち着きがない。

母の生前も誕生日は欠かさず二人でお祝いしてくれた。

ただ、友達を呼んでのパーティというのはこれが初めてだった。


小学校から一緒だったが、ここ1年でとても仲良くなった親友。

同じく、仲良くなってからほんの半年の親友。

出会ってまだたった3か月しかたっていない親友の彼氏。

そして、先月出会ったばかりの男の子。


去年買ってもらった2着のワンピースのうち、どっちにしようと少しだけ悩み、夏に着た方はあまりに涼しげだったので、もう1着の方を着ることにした。


挿絵(By みてみん)



姿見の前で嬉しそうにくるくる回ってそれを確かめる。


そして、約束の時間通りに、呼び鈴が鳴らされた。



 (カチャリ)


「こんばんは、誕生日おめでとう。」

今日も時間ぴったりに来たのはやっぱり縁君。


「ありがとう、他のみんなもすぐ来ると思うから、入って。」


「あ、はい、これ。」


そう言って可愛くラッピングされた小さなプレゼントを差し出す彼。


あら、そんな、プレゼントを頂くような仲じゃ・・・

とも思ったけれど、あれから1週間も一緒にご飯を食べてるんだし、そういうものかな?


「ありがとう、ごめんね、気を遣わなくて良かったのに。」


そうお礼を言って、彼をリビングへ上げて待ってもらう。


殆どそれと同時に、今度はエントランスから呼び鈴が鳴らされる。


  (カチャリ)


「梨桜ー、誕生日おめでとうー。」

「梨桜、おめでとう。」

「本間さん、誕生日おめでとう。」


「みんなありがとう~。」


思わずウルっとなる。


あ~・・・幸せだ~。


3人をリビングに案内すると、さっきまで座って待っていたはずの彼は、きちんとソファ横に立っている。


「初めまして、梨桜さんのお父さんの友達の息子の土井縁といいます。」


そう言って、綺麗なお辞儀をする彼。


「堅いって!(笑)」


とりあえずここは突っ込むところですね!


「初めまして、友達の紗奏と言います。」

「美沙です。」

「土井さんの後輩の息子をしております、道兼と言います。」


 (ぱこんっ!)


「真似しなくてよろしい!」

すかさず美沙が突っ込む。(笑)


「 「 あははっ 」 」


「いや、とりあえずつかみは大事かなと。」


「縁君も、そうあっけにとられてないで、普通にいこっ。」


「あ、・・・あぁ、みんな仲いいんだな。びっくりした。」


「梨桜とこの紗奏は別の意味の『仲』だけどな。」


 (ぱこんっ)


「初見の人に変なこと言わなーい!(笑)」


「いや、掴みは大事なんだろ?(笑)」


「 「 あははっ 」 」


「さ、みんなとりあえず掛けて、掛けて~」


「その前に、はい!」

「ほい!」

「その、おめでとう。」


 (う~~、これは無理だ~~)


もう、猛烈に感情が込み上げてくる。


・・・でもお礼、お礼を言わなきゃ。


「・・・ありがとっうっ。

 ・・・うっうっう・・・・。」


「ほらー、よしよし、泣かない泣かない。」


そんな私を『ギュッ』として撫でてくれる。


「ほら、これ見ろ、土井君。」


「ええ。映画に出てきそうな素敵な絵です。」



「今日は娘のために、みんなありがとう。

 さ、じゃあ電気消すからね。」


そう言って蝋燭に火をともして、明かりを落とすお父さん。


みんなのハッピーバースデーの歌に合わせて、ろうそくめがけて息を掛け、一息に全部消せた。


(パン! パパン! パン! シュポン!)


「 「 おめでとうー 」 」


「ありがとう~~~。」


また鼻がツンとしてくるのを何とかこらえる。


「それじゃ、梨桜、みんなに。」


私は頷いて、みんなにノンアルコールのシャンパンを注いで回る。


「ハイ、お父さんはこっちで。」


お父さんへは普通のシャンパンを。


「 「 かんぱーい 」 」

「 「 おめでとうー 」 」



「開けていい?」


「うんうん。」


そう言って、まずは紗奏がくれた包みから開けていく・・・


「ペアのティーカップ。

 あはっ、ありがとう。」


「あー、なんか見てるこっちが超くすぐったい。」

美沙は完ぺきに私たちを誤解してる。(笑)


「ぷっ、じゃぁ・・・次は美沙は何かな~。」


「入浴剤セット。

 ・・・ありがとう。」


「美沙―、センスいいじゃん。」


「じゃぁ、安藤君の、

 ・・・キーホルダーだ。

 ありがとう。」


「どういうもの贈ったらいいのかわからなくて。」


頭をかきながらそう言ってくれる。

美沙はとってもいい彼氏を持ったなと思った。


「ではでは、縁君の。」


そう言って包みをほどくと、髪留めと一緒にまた包みがある。


それもごそごそと開けると、


「髪留めと、これはネコちゃんのなんだろ・・・

 アロマディフューザー・・・って?」


「お店とかにも置いてある、香り出すやつ。

 香りの好みは分からなかったから、好きなのを選んで数滴たらして使って。」


「なんか大人のプレゼントだね。梨桜。」


これは、私たちの間で貰うようなものじゃないんじゃないかしら・・・?

そんな目線を縁君に向けてみると・・・


「いや、そう大したものじゃなくてどこにでも売ってるものだから。」


彼はクールにそう言う。


「うん。ありがとう。」


「って、梨桜、その髪留めさ、付いてる赤いのってルビーだったりして!」


そんな風におどけて言う美沙。


いや、さすがにそれは無いでしょう。

たぶん女の子雑貨のお店に売ってるもののはず。

そう思って髪留めをよく見る。


「ほら、3つ付いてる赤いののうち真ん中のだけ、台座がついてるぞ。」


横から覗く美沙が目ざとくそれを見つける。


「石じゃないんだよね?」


そんなものだったら貰うわけにはいかないので、聞いてみると、


「いや、本当に神川駅前通りの『ファンツ』っていう普通のお店で買ったやつだから、家にレシートもあるし。」


・・・と、ちょっと慌てているのがアヤシかったり、しなかったり。


「梨桜、7月の誕生石ってルビーみたいだよ。

実はルビーの髪留めだったりしてー。(笑)」


そう、スマホを片手に言う紗奏。


「いや、無いって!」


「 「 アハハッ 」 」


「みんな、本当にありがとう。大事にします。」


お母さん、見てますか?

私、とっても幸せです。



  【縁・麗子】


 (時は少しさかのぼり、7月1日、自宅にて)


「母さん、来てくれるなら連絡くれればよかったのに。」


「それじゃ、抜き打ち検査の意味がないでしょう?」


そう言って笑う。


それはそうか、本間さんが後見してくれているとはいえ、中学生の一人暮らしだものな。


家に入るなり、お昼の匂いが漂っているのに気づく。

買ってきたパンは夜食にでもするか。


「ところで、お出かけなんて珍しいわね。梨桜ちゃんと?」


「違うよ、そんな仲じゃない。

 今月7日が誕生日だって言って、パーティに誘われてるんだ。

 何かプレゼントをと思ってさ。」


「まぁ、それは素敵ね。

 でも、縁~、

 まだ会って間が無いんだから、指輪とか贈っちゃだめよ?(笑)」


「わ、分かってるって、いくら僕でもそれくらい。」


「何買ったか教えてはくれないわよね?」


「いや、隠すようなものじゃないし、

 アロマディフューザーと、髪留め。」


「あら、意外といいチョイスじゃない、梨桜ちゃんも喜ぶわね。

 ・・・

 ところで、髪留めって見せてもらってもいいかしら?」


「あぁ、変なものじゃないと思うんだけどな、

 じゃぁちょっと待って。」


そう言って僕は、包みを丁寧に開けて中から髪留めを取り出す。


「これなんだけど。」


「やっぱり、あなたいいセンスしてるわね。」


そう言って、どういう訳か満面の笑みで自分が持ってきた鞄をあさる。


「どうかした?」


「私も、あの子凄く気に入っちゃったから、あなたのプレゼントに紛れさせてサプライズしようと思ってね。(笑)

 ほら。」


そう言って取り出して見せてくれたのは、綺麗な花柄のブローチ。

赤い石が1,2,3・・・12個付いてる。


「これは?」


「ルビーのブローチ。

ほらみて、あなたが買ってきた髪留めにちょうど同じようなカラーの細工がついてるでしょう?

これをこっちに付け替えちゃおうかなって。

だめ?」


「いや、だってそれ高いんだろ?」


「大丈夫よ、一明に買ってもらったのじゃないから。

 それにもうこういうのを付ける年でもないしね。」


「まだそんな年じゃないだろ。」


「あぁ、そう言う意味じゃなくて、年とともに付けるアクセサリーは変わっていくものなのよ。」


「ね、面白いと思わない?

 あなたが買った日用品の髪留めに、本物の石を嵌めとくの。

 全部だとつまらないから、三つ並んでいる真ん中だけ変えましょう?」


「いいけど、どうやって?」


「簡単よ?」


そう言って、母さんはピンセットと細いネイルケアのような尖った爪切りで器用に赤いガラス装飾を外して、ブローチについていたルビーを台座ごとくっつける。


「えっと、母さん。なんで接着剤なんてものが入ってるんだ?」


「あら、意外と便利よ?

 履物が壊れたりするのは結構あるし。」


「・・・そもそも、なんでそのブローチを?」


「あら。(笑)私はあの子がとても好きって言ったでしょう?

 私を『誰』だと思っているのかしら?

 7月の誕生石は、ルビーよね。

 だから、あなたのセンスが良いって褒めたのよ?」


そう言って微笑む。


・・・。


そうして、母さんのサプライズ込みのプレゼントが出来上がっていたのだ。


・・・。


 (・・・そしていま。)


だから今、この場で詰め寄られた僕は困りながらも言い切ることができていた。僕が彼女に用意したプレゼントは、確かに雑貨店で売っている数百円の髪留めなのだ。


後は知らない。母さんから君へのプレゼントだから。


お立ち寄り頂きありがとうございます。


中秋の名月はご覧になりましたか?

(10月1日)


多少外れても秋の月は綺麗ですね~

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