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突然ですが、娘ができました。2  作者: ほととぎす
第1章の3 中学3年生編 (日常)
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一緒の食卓

引っ越しを済ませ、これから本間家で食事を摂ることになった、土井縁君。

何やらとっても困惑気味のようです。

  【7月1日、晴れ】


 今朝は6時に目が覚めた。

いつもより1時間も早い。


今日からご飯は、本間さんのお宅にやっかいになる事になっている。


他人の家でご飯を食べるなんて経験はないから、好奇心もあるものの、それよりやはり『身の置き所がない』感が大きい。


 いつものようにきちんと布団をたたみ、

 窓を開けて朝の空気を入れると、既に夏の薫りがした。


 洗面台に向かい、いつもより丁寧に身支度を整える。


これから毎日朝晩お世話になるのだ。

・・・そう思い、背筋を伸ばす。


玄関を出て、エレベーターで17階まで上がる。


「おはようございます。」

「おはよ~。」


カチャリと開けられたドアから覗いたその姿。


同級生の部屋着姿というのもそうそう目にするもんじゃないから、少し目のやり場に困ってしまう。


案内され、中へ上がると朝ごはんのいい匂いが立ち込めている。

本間さんの家では朝は和食なんだな・・・。


「おはよう、縁君。凄いな時間ぴったりだ。」

「おはようございます。時間には厳しく言われていて。」


「じゃ、座って、

     いただこうか。」


「はい。」


「朝はたいてい俺が先に起きるから作り始めるんだけどな、この子も物音を聞きつけてすぐ起きてくるんだ。もっとゆっくりしててもいいんだが。」


「そんなに甘やかすと、私がダメ人間になっちゃうよ?(笑)」


そんなアットホームな会話が自然と流れ出す。

そんなこの空気はまるで彼女が歌うあの歌の世界のようだ。


「ちなみに、フルーツのカットとサラダはこの子が作ったんだよ。」


そう言われて、盛り合わせの皿を改めて見ると、まるでレストランの一品のようにきれいな色どりだ。


「とっても綺麗ですね。それにとても美味しいです。」


「そんなに緊張してると、この先もたないよ~、

 もっと気楽に、ご飯は楽しくいこっ。」


そう言って、彼女はにっこりと微笑む。

目の前の彼女が、今朝もヘッドフォンで聞いたばかりの声で言葉を紡ぐことに心が動く。


「うん。でも、もともと口数が多い方じゃなくて、

 そんなに硬くなってるわけじゃないと思うんだけど。」


「そうなんだ~、安藤君もだけど、お父さんが警察官だからなのかクラスの子と比べると、縁君も落ち着いてるよね。」


なるほど、安藤君の方も騒がしいタイプじゃないんだと思うと少しホッとする。正直ぐいぐい来られるタイプは少し苦手で、できれば適度な距離で付き合って行きたい。


「その安藤君の方は、いつ頃決まるか聞いてますか?」


というか、その安藤君と一緒に住むことになるのかどうかもまだ分からないのだけど。


「あれ?

 あいつは君に言ってなかったのか。

 本決まりじゃないけど、安藤さんの異動は9月1日付になるだろうって言ってたぞ。だから、ひょっとすると引っ越しは8月下旬になるんじゃないかな?」


あれ、もう部屋をシェアすることは決まってるのか。


「安藤君とのルームシェアはもう決定でいいんですか?」


「あぁ、それはまだだから。

 昨日土井が連絡したはずだしね、そのうちこっちに連絡が来ると思うよ。本人が残りたい意思があるなら、落としどころとしては妥当じゃないかな。」


「仮にそうなると、さすがに何かお手伝いしたほうが良いと思うんですけど。というか、させて欲しいです。」


「あ、それも楽しそう。合宿みたいな?」


なるほど、そういうノリも楽しいかもしれない。

・・・と思っていると、彼女はほんの少しだけ考え・・・


「あっ!、やっぱダメだ。

 安藤君は友達とお付き合いしてるから、あんまり長く私の家に居るのはイケナイね。

 ていうか、うちでご飯食べるのも、美沙嫌がるかな?」


そう言って彼女は横の本間さんを見上げる。

髪をアップにしたその首筋に朝の光がさし、

思わず僕は少し目をそらす。


これは、この先ずいぶん自分を試されそうだ。


 安藤君とやらは、4月にこっちに来たばかりのはずだけど、それでもう彼女?なんだかさっき聞いたイメージと合致しない気がした。


マンション暮らしをいいことに、彼女を連れ込まれでもしたら、即事案の発生だ。それは避けねば。



「それは、お前が美沙ちゃんに聞いてみないとね。

 考え方も感じ方も、人それぞれ違うから。


 それから、縁君のお手伝いの方はどうしようか、

 フルーツのカットとかして貰おっか?」


「ええ、そんなことでよければ。」


「大丈夫~?、指とか切らないでよ~。(笑)」


「あぁ、そうだ、キッチンのセットは一通り持ってきてたよな?」


「はい、一揃えはありますから大丈夫です。」


「うん。それじゃ後で包丁だけ持ってきてもらおうかな。

 俺が研いであげるから。」


「あ。買ったばかりなので大丈夫だと思います。」


「買ったばかりだからちゃんと研ぎ直ししておかないとね。

 切れない包丁だと怪我の元だ。」


そう言うものなんだろうか?


「あぁ、それと7日は何か予定あるかな?」


「え?、いえ特には。」


「それじゃ、空けといてくれるかな?

 この子の誕生日なんだ。」


「えへへ。」


と、少しはにかむ彼女。

7月7日とはまた。

とっても彼女らしい誕生日のような気がした。


歌姫の誕生日・・・

何かふさわしい贈り物はないだろうか・・・。

お立ち寄り頂きありがとうございます。


楽しい秋をお過ごしください。

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