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突然ですが、娘ができました。2  作者: ほととぎす
第1章の2 中学3年生編 (援助交際疑惑)
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過去

過去のつながりが

土井さんの口から明らかに・・・

  【梨桜】


「おっ、大丈夫か?縁。」

「うん。」


 テーブルに戻ると、3人はなんだか楽しそうにビールを飲んでいる。


「悪いが、先に飲んでるぞ。

 お前たちも、好きなもの頼め。」


「梨桜さん、ありがとう。

 ごめんね、押し付けちゃって。」


そう言って麗子さんは微笑んでる。

・・・この笑顔にとてつもない『悪意』を感じます。ワタクシ。


「いえいえ、私がしでかしたことですから。

 いつの間にこんな能力が備わったんでしょう?」


私たちはとりあえず、お昼をオーダーする。


「今まで女の子に興味が無いようなことを言ってたわりに、

 やっぱり男の子だな。安心したよ。」


「・・・もう今日は好きに弄ってくれ。

 さすがにこんな醜態をさらした後じゃ言い訳する気にもならない。」


「あら、言い訳があるなら聞くわよ?」


麗子さんは相変わらず『悪魔の微笑』で縁君をさらに追い込む。


「それについてはですね、私がYoutubeに『歌ってみた』って言うカラオケを上げていてですね、縁君はそれをとても気に入ってくれてたみたいなんです。」


「ふふっ。そうなの。よかったわね。」


「名前の通りいい『縁』があってよかったじゃないか。

 俺も名付けた甲斐があるってもんだ。」


「私は、人から名前を頂くのはどうかしら?って言ったんだけどね。この人が名前を頂くんじゃない、良い縁がこの子にあるよう祈りを込めて付けるんだ、って。」


「そうなのか。お前にそんなところがあるとは知らなかったな。」


「25年前の渋谷無差別殺傷事件。」


「ん?」


「あそこに当時中学生だった俺と、母親がいたんだ。

 亡くなったのは・・・」


「あなたっ。」


「あぁ。すまない、ここで話すことじゃなかったな。」


「ちょっと待って、それ、僕の名前に関係がある事なんだろ?

 聞いたことなかったんだけど。」


「遠慮する間柄でもないんだし、俺も興味がある。」


土井さんは、麗子さんの方へ眼をやると・・・

彼女は『仕方ないわねぇ。』というそぶりを見せる。


「そこで亡くなったのが、最初に襲われた女子大生と、警察官だった。」


「お前たちを守って亡くなったのか?」


「女子大生が襲われた時、俺と母さんは現場からわずかの場所であっけにとられていた。その後奴は何人かに切りつけ、母さんにも切りかかってきた。そいつを確保してくれたのが亡き佐川警視長だった。」


「佐川・・・」


「お父さん!」


「ん?、知ってる人だったのか、佐川さん?」


「いや、そうかもしれないってだけだ。

 佐川なんて名字はそう珍しいもんじゃないしな。

 ただ、知り合いの警察官に佐川さんっていう人がいたんだ。

 俺が小学校へ入る前に近所に1年くらい住んでた。」


「そうか。

 それでな、母さんの怪我は大したこともなく、俺たちはほっとしていたところに、さらに事件が起きた。そいつの連れだった女が、落ちたナイフで佐川さんを刺したんだ。


その場にいた俺たちは、何が起きたのかわからなかったよ。ただ、俺はとっさに佐川さんから流れ出る血を、止めようとしたんだな。


 その女は周りの大人たちが引きはがして、そこに警察官が駆けつけて、その場は収まった。


佐川さんの名前はその後、テレビや新聞で知った。」


「その人のご家族の名前なんてわからないよね?」


「ん?

 まぁ、そうだな。あの当時からそういう情報は外には出なかったはずだ。ただ、俺は佐川さんの血を必死に止めようとしてたからな、彼の口から漏れ出たのを聞いてしまった。」


「聞いちゃダメ?」


「・・・どっちがどっちかわからない、二人の名前で楓と唯。彼はそう言ってた。」


「お父さん!!」


お父さんの方を振り向くと、涙がこぼれ落ちている。


「いや、楓という名前は確かにゆうちゃんのお母さんだが、

 『ゆう』ちゃんが、唯さんだとは限らんだろう。」


「お父さん、本気でそう思ってる?

 認めたくないだけでしょ?

 お母さんの戸籍謄本とればすぐわかるんだからね。」


「あぁ、まぁ、そうだな。

 悪い、ちょっと手洗いに行ってくるわ。」


「すみません、付き添ってきます。」



  【伸朋】


まさかな・・・

そんなことが。


ある訳がないと思いながら、涙は後から後から流れ落ちてくる。


唯がゆうちゃんだったのか・・・?


俺は何で気づかなかった・・・?


唯は気が付いていたのか・・・?


何で守ってやれなかった・・・?


俺は、肺の奥底からうめき声をあげて泣いた。



  【梨桜】


お手洗いに行くと、お父さんは両手をついて静かに呻きながら泣いている。


・・・口から魂がこぼれてしまいそうなほどに・・・


私は優しくお父さんの頭を撫でながら聞いてみる。


「おとうさん。

 タイムマシンがあったら、昔に戻りたい?」


「あぁ。・・・あぁ。

 あの頃の俺をぶちのめしに行きたい。」


「でも、そうすると今の私はいないかもね~。

 ・・・

 どうしようもない過去でも、

 ・・・

 変えたいような過去でも、

 ・・・

 それがあって、今があるんですよ~。」


「あぁ。・・・」


そうつぶやくと、じゃぶじゃぶと顔を洗い始めた。


(よしよし・・・辛かったね。)


お読みいただきありがとうございました。


実はこの部分が一番書きたかったことです。ハイ。

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