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突然ですが、娘ができました。2  作者: ほととぎす
第1章の2 中学3年生編 (援助交際疑惑)
23/64

縁・梨桜 ◎

土井署長の息子の縁君は、梨桜さんに何か思い入れがあるようです・・・

  【梨桜】

挿絵(By みてみん)


 今日はお父さんと一緒に外でご飯だ。

ただ、いつもと違うのは土井さんご一家も一緒するとか。


「土井さんのお子さんっていくつなんだっけ?」


「あぁ、お前と同い年だそうだよ。」


「そうなんだ。あの近所でウチの中学じゃないって事は隣の信濃中かな?」


「うん。そう言ってたね。

 なんでも土井によると、お薦め物件らしいよ。(笑)」


「ぷっ、・・・

 えっ?、ひょっとして今日のって私のお見合い?(笑)」


「そんなわけあるか、お前は渡しません。」


「あははっ。あんな鬼みたいな人でも子供には甘いんだねぇ。」


「あいつが鬼みたい?

 お前目線だとそう見えるのか。」


「とっても厳しい人な気がする。」


「そりゃまぁ警察官だからな。」


 そんな話をしながら、車はファミレスのパーキングに入る。

たまにお父さんと来る駅前のスカイ・カナリーだ。



  【縁】


「あなたが友達の家族と食事って、珍しいこともあるものね。」


母さんが言う。

確かにこれまでこういうことはなかったな。

今日会う人は、父さんにとって特別な人なんだと、自然に思えてくる。


「そうだな。確かに記憶にない。」


「娘さんと二人暮らしなんだっけ?」


「あぁ。それも去年の夏からだそうだ。

 元カノが育てていたんだが、亡くなって引き取ったらしい。」


「なるほどねぇ。」


「俺が言うのもなんだが、とってもかわいい子だぞ、縁。」


「ふーん。まさか僕のお見合いみたいな感じじゃないよね?」


だとしたら、ちょっと困ってしまう。

同い年の女子にはちょっと興味が持てそうもない。

・・・というか、恋愛とかそう言うのは成人してからで十分だと思っている。

彼女というものに割く時間なんてそもそも僕にはない。

目標が遠すぎるから。


「ぷっ、まさか。

 今回の事じゃちょっと世話になったからな。

 そのお礼と、俺の異動の挨拶も兼ねてな。」


「えっ?、ドラマみたいに捜査協力とかそういうこと?」


僕は驚いて聞いてしまう。


「まさかね。

 あんなのはドラマの中だけ。

 わかってるはずだけど、警察官は家族であっても捜査内容を話したりはしないよ。ただ、俺が抱えていたことと全く別のベクトルで、彼が個人的にやっててくれたことがたまたま繋がっていてね。それをもとに一つの問題が解決した、って事なんだ。」


「その結果が異動って、イヤじゃないの?」


「あぁ。それが俺の望むことだからな。

 お前には違う意味でプレッシャーをかけることになるかもしれないけど、悪いことをして非難されるわけじゃないのは分かるな?」


「それは勿論。僕もできたら父さんみたいになりたいって思ってる。」


「父親としては、警察官はお勧めしないぞ。」


「あら。それはどうしてかしら?」


「妻を大事にしてやれん。」


「まぁ。(笑)」


「堂々と思春期の息子の前でいちゃつくのもどうかと思うよ。」


とは言ったものの、両親の仲がいい事も僕の自慢の一つだ。


「何をするにも、堂々と、だ。」


そんな話をしていると、車はファミレスの駐車場に着いた。

隣の駅前にある、スカイ・カナリーだ。



  【土井一明】


 事件を解決したのに異動になる。そんな理不尽が通るのが俺たちを含む公務員というやつだ。


 今回のように、警察内部に不祥事があれば、それを上げた事より『後始末』について世間に公表しなきゃならない。


 平たく言えば『管理不行き届きで申し訳ありません。首を挿げ替えます。』って事になる。


 もちろんこれは懲戒人事じゃないから俺の経歴そのものに傷はつかないが、まさかこんな泥水を退職間際のたたき上げに啜ってもらうわけにはいかない。というのも全国各地の警察署長というのはたたき上げ警察官の最終ポストとたびたびなるからだ。


 だから俺はこういうアヤシイケースがあると積極的に根回しするようにしている。俺は署長という職が結構気に入っているし、上にしたら厄介事を抱えてくれると言う事で、お互いWin×Winだろう。


 だが、俺の意思とは無関係に、子供にプレッシャーが行くと困る。

まぁ、こいつが虐めにあうとも思えないが、念のため聞いてみると『俺が目標』のようなことを言う。


 親としては確かに嬉しいが、正直言って別の道を探せるなら探してもらいたいと思うのだ。この世界で生きていくにはかなりの泥を啜る覚悟が要る。



  【梨桜】


 席についてお父さんと話をしていると、土井署長さんと奥さん、息子さんらしき人がお店に入ってくるのが見えた。


 (とてもきれいな人。

  芹野さんとは全く異なるタイプの美人だ。)


「おう。ひさしぶり。」

「初めまして、妻の麗子と言います。

 これが息子の縁。」

「初めまして、縁です。」


「初めまして。本間と言います。

 一明とは地元が一緒で幼馴染でした。

 これが娘の梨桜と言います。」


「初めまして。梨桜です。」


私がそう言ったとたん、縁君は目を見開き見つめてきた。

ん?・・・どこかで会ったことでもあるのかな?



  【縁】


『初めまして。梨桜です。』


(その声!)

(その声!!)


あれから毎日聞いていた彼女の声だ!


(まちがいない!)

(間違えるはずがない!)


ついじっと見入ってしまうと、彼女は少し小首をかしげる。


「ん?どうした縁。可愛すぎてびっくりしたか?(笑)」


「いや、なんでもない。」


僕はそう言って気持ちを沈めようと努める。

しかし、心臓の鼓動はとめどなく早くなっていく。


「縁君? どこかで会ってたっけ?」


そう彼女に問われて、僕は回答を必死に探す。


(『Youtubeで見ていました』・・・ちがう)

(『いつも聞いています』・・・ちがう)

(『ファンです!』・・・とんでもない)


「いや・・・はじめまして、ですね。」


結局何とか言葉を絞り出した。


「なに?緊張しているの?」

母さんまでアヤシゲに微笑んで僕を見る。


(違う・・・そんなんじゃないんだ。)

(ただ、こんな偶然があることが信じられないんだ。)

(目の前に、あの『金髪の歌姫』がいることが。)

(そして、彼女が僕の名前を呼んだことが。)


「縁君? 大丈夫? 顔色悪いよ?」


(あれ・・・

 なんだか気分が悪く・・・

     なんだこれ・・・

 

       ・・・

          ・・・。)



  【梨桜】


「縁君!」


彼はずっと私を見つめて、そして倒れてしまった。


幸い、テーブルにぶつかる前に麗子さんが受け止めてとりあえず席に横たえる。


「どうしたのかしら?

 梨桜さんがあんまり可愛いものだから、舞い上がって貧血でも起こしたのかしら?」


などと微笑みながら何でもない事のように脈を取って、言う。

(大丈夫なのかな?

 結構汗かいてるし、何か病気とかじゃないのかな?)


「お客様!どうかなさいましたか!」

慌てて駆け寄ってきたウェイトレスさんに、


「ただの貧血のようだから心配しないで。どこか横に慣れるところはありますか?」


と、冷静に話している。

・・・ほんとに大丈夫なのかしら?


土井さんが、ウェイトレスさんに案内されて、彼を奥の休憩室まで運び、私たちもついていくと・・・


「それじゃ、申し訳ないけど、梨桜さん、お願いできる?

 ただの貧血だと思うから。」


(えええ???)

(そこで私???)

(私ですか???)


・・・と、ちょっと返事に困っていると・・・。


「まぁ、目線だけでこいつを失神させたんだからな。(笑)

 目が覚めるまでちょっと付いててやってくれ。」


「は・・・はい、私でよければ。」


とりあえず、ここはそう答えるしかなさそうですね。(>x<)


お父さんはちょっとだけ不満そうだけど、特に口をはさんだりせず、3人人はそのままホールの方へ戻っていった。


(う~~む・・・いつの間にか私の『魔眼』が開眼したのかしら?)

(それとも、実はずっと以前に会っていた、『初恋の人』とか?)


そう思ってよくよく顔を見てみても、決して見覚えのある顔じゃなかった。それに、私って幼稚園行ってないからね。

小学校より後なら、さすがに忘れる事は無い、はず。


・・・それにしても、


(母譲りの綺麗な顔立ちをしているなぁ。)


なんて考えながら、貰ったおしぼりで額の汗を拭いてあげる。

看護師さんなのか、麗子さんは倒れてすぐ脈を取っていたけど大丈夫みたいだったし。ただ、ここで寝かせた時毛布で足元を上げてある。


 私も何度か見たことがある。貧血を起こした時の対処法だ。



  【縁】


 額のひんやりとした感触に目を開ける。

すると真上には『歌姫』の顔が。


さっと顔を横にそむけて、『どういう状況なんだ?これ?』

と考えていると、


「気が付いた?

 縁君、急に倒れたんだよ。覚えてる?」


間違いない。いつも聞いていた声だ。


たしか・・・気が遠くなって、

・・・倒れたのか?僕は。


「なんとなくだけど、・・・うん。

 ごめん、迷惑かけた。」


そう言ったか言わないうちに、

頬に柔らかい掌の感触が・・・

・・・そして僕の顔は正面を向かされる。


「どうして顔をそむけるのかな~?

 私と何かあった?」


しっかりと目を見つめてそう聞いてくる・・・


僕はまた顔を背けようとして・・・

・・・また戻される。


なんというか、こう見つめられてはとてもいたたまれない。


「悪い。

 いつも歌聞いてて、びっくりした。」


「そうなんだ。

 でも、それでびっくりして気を失っちゃう?」


「こんな偶然があるとは思わなかったから・・・

 会えるなんて思わなかったから・・・」


「それはなんというか、Youtuber冥利に尽きますねぇ。」


「絶対すぐに芸能界デビューするって思ったし、言われてたのにあれからぱったりと消えたから。」


「そういうメンドイのは好きではないのです。」


彼女はそう言ってまたおしぼりで額を拭いてくれる。

ひんやりとして、とても気持ちがよかった。



  【梨桜】


 縁君はどうやら、麗子さんの言った通り(?)私と会ってびっくりしすぎて気を失ってしまったらしい。


 そんなことってあるの?


 どれだけ気に入ってくれてたのかしら?


縁君は照れているのか、すぐ顔を背けようとするので、力ずくで(笑)正面を向かせる私。


 (なんだかみんなに大事にされすぎてて、最近『S』っけが強くなってきたような・・・)


 (でも、まんざらでもなさそうだし、いっか。)


「縁君、信濃中学なんだっけ?」


「うん。」


「私は南中。すぐ隣の学校だったんだね。」


「うん。びっくりした。

 動画の女性はてっきり大人の人かと思ってたから。」


「メイクって変わるよね~、こんな子供でがっかりした?」


「そんなことない。容姿も年も全部関係ない。

 ・・・

 ただ、あの歌が綺麗すぎて。

 ずっと聞いてた。」


「そんなに気に入ってもらえたんだ。

 でも、よく分かったね。

 学校でもいまだにバレたことないのに。」


「わかるさ。

 目をつぶってたってわかる。

 ・・・

 もう・・・

 歌わないの・・・か?」


「ん~~、あれから半年もたつのに、いまだに探されてるみたいだからね~。落ち着いたらまた考えます。(笑)」


「そっか・・・

 ひょっとして、銀髪の歌姫は友達?・・・だよね?」


「(笑)えっと・・・その『歌姫』って言うのはやめてもらえると。」


「あぁ。ごめん。

 最初君が・・・梨桜さん・・・が出てきたとき、いろんな呼び方がされてたんだけどね。『月の巫女』、『月の天使』、『月の歌姫』、etc.


 そのあと、プラチナブロンドの子が出てきたから、金銀で分ける言い方が定着して・・・。」


「そうだったんだ。怖くてネット見ないからね~。」


「また歌える日が来ることを、・・・待ってる。」


「あ。カラオケは良く行ってるよ、二人とかで。

 縁君も一緒に行ってみる?」


「行きたい!

 ・・・けど、また引っ越しになりそうだから・・・ね。」


「あ、やっぱりそうなんだ。そんなことお父さんが言ってたからね。」


「ただ、受験も近いし今年は残るなら残ってもいいって言ってくれた。」


「そうなんだ。

 友達の彼氏さんも、同じこと言ってた。

 安藤君って言って、お父さんが今年からこっちの警察署に来た人。」


「安藤さんの息子・・・か。あの人は父さんが根回しして来てもらったようなもんなんだよな、たぶん。あの人もまたきっと異動だと思う。」


「警察官って大変だねぇ。

 だけど、彼女が私の友達で、転校はしたくないみたいね。(笑)

 後はご両親がどう考えるかだけど・・・。」


「警察官、っていうより、国家公務員はみんなそうなんだ。

 異動はつきもので、僕も慣れてるし。」



「慣れてても寂しいものは寂しいでしょ?(笑)

 ・・・

 気分落ち着いた?」


「うん。もう平気だと思う。」


「それじゃ、ご飯食べ行こっか。」


「うん。」



  【縁】


『慣れてても、寂しいものは寂しいでしょ』


・・・


僕は寂しかったのか・・・


ただそれを意識しないようにしてきただけなのか・・・


彼女に言われて、なんだかすごく胸に食い込んでくるものがあった。


(やばい、我慢しないと泣きそうだ。)


梨桜・金髪の歌姫姿


可愛いです。ありがとうございます。

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