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迷宮マスター  作者: 藤井ことなり
第2部 ロイヤルブルーの秘宝
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久しぶりの謁見

「ふうん、つまりスケイプ氏は本当のことを知りたいから、旧友のストーク卿の協力のもと、サーチを無理矢理会食に誘ったのか。そのお膳立てというか情報を流したのがクレマ教授ということかな」


「たぶんな」


「それにしてもうまくまとめたな。おかげでスケイプ氏はスポンサーになってくれたし、サーチをバックアップすることで、心というか感情の向けどころが決まって落ち着いたようだしな。逆によくそれができたなと驚いてるよ」


「ダンジョンの観光案内してるとさ、普段と違う環境からグループが揉めることあるんだよ。そういう時に適当にまとめてたから、まあなんというかな」


「ストーク卿の口ぐせが伝染ってるぞ」


 愉快そうにボゥロが笑った。


 ──あのあと、事情を知ったアンがクレマ教授をさらに責めようとしたのを、グリーンヒル州知事が止めてくれた。


「予定はズレましたが、こうしてヴェルマーク氏に会えたのですから許してあげてください。貴女とふたりだけの会食も有意義で楽しかったですし」


 そう言って収めたあと、オレを品定めするように見て、握手を求めてくる。


 手を差し出すとスケイプ氏のように握り返される。


 なんだろう、成功者って握手で人の品定めをするものなのかな。


「なるほど……理事長が信頼するだけのことはあるようですね」


 本当に握手で品定めしているようだな。これで何がわかるんだろう。


 多忙な州知事は分単位でスケジュールが決まっているらしく、このあと大陸横断鉄道での移動が迫っているからと秘書に急かされ、その場を去ることになり、スケイプ氏が案内しますと一緒に出ていく。


 ストーク卿とクレマ教授はアンに平謝りしたあとそそくさと帰っていき、残ったオレとディフィはアンと一緒に最初のホテルの部屋に移動した。


 部屋で待っていたボゥロとセバスさん、バトラス親子に何があったのかを説明して、今に至るわけだが……。


「セバス、予定変更の調整を。バトラス、財団に戻るから用意を。帰るわよ」


 ……どういうわけかアンは目を合わせないし話しかけてこない。


 矢継ぎ早に次の行動を指示し、ディフィが警護でそばにつくから、必然的にボゥロとふたりで行動することになる。


「なんか怒ってるのか、アンの奴」


「お前もニブいね、ま、自分で気づくことだな」


「なんだよそれ」


 ホテル地下の駐車場に来ると、バトラスの運転でアンとディフィがさっさと出ていき、オレはセバスさんの運転でボゥロとともに後をついていく。


 たぶん高級車といわれるクルマなんだろうが、乗り心地が良すぎて落ち着かない。


※ ※ ※ ※ ※


 外の景色は全然見慣れない緑と土の無い世界。


 遠くを見るな、目指すのはココだと言わんばかりの高層ビル街。


 時々街路樹を見て緑色にちょっと落ち着くが、人の都合で植えられているのを感じて、眉をひそめる。


「大陸中央都市(セントラル)ってのは、傲慢な感じがするな」


「なんでだよ」


「木々や草花はあるんだけど、人の住むところにおいてやる、咲かせてやるって感じだからさ。本来は自然に人が住まわせてもらってるのに」


「発展というのは大事なんだよ。サーチの装備だってこういうところで開発して、現地で使ってるんだろ。

 大陸中央都市だって最初からこうじゃなかった──はずだよ。セバスさん、若い頃の此処らってどうだったんです」


 穏やかに運転しながら、セバスさんが静かに答える。


「そうですね……、大陸中央都市もそれなりに歴史がありますから、私の若い頃でもこのような感じでしたよ。もっともヴェルマーク様のような詩的な感想は持ってない若造でしたから、気にしてませんでした」


「サーチでいいですよ、セバスさん。アン──理事長とは長いんですか」


「私の家は、代々ケイツー家に仕えていますので、生まれた頃から知っていますよ」


「え? あの、理事長の家ってそんなに由緒正しきところなんですか」


「御存知なかったのですか。ケイツー家は100年ほど前の世界大戦のあと、復興により現在のいわゆる裕福な家にまで成長したのですよ。

 創始者──ケイツー家の中興の祖に拾われた私の曾祖父が、代々お仕えすると誓い今に至ってます」


「へぇそうなんですか。バトラス君もそうなんですか」


「創始者様に代々お仕えすると曾祖父が言ったとき、『かまわないが当代が仕える価値が無いと判断したらいつでも辞めてくれよ』と返されましたのでバトラスにも伝えてあります」


「というと、当代は理事長のお父さんだろうから、その人に仕えているのかな」


「──そうです」


なんか妙な間があったな。


 そうこうしているうちに郊外の大きな緑地公園に着き、その一角にある改装中の古い3階建ての前に停まる。


 セバスさんとバトラスが駐車場にクルマを移動するあいだに、オレたちは建物に入る。


「緑地公園の公共施設を買い取ってな、それを財団の拠点として改装中だ。で、隣接する建設中の5階建ての方がサーチを呼んだ理由だよ」


 ボゥロの説明を聞きながら前を歩くアンを見る。


 あいかわらず無視し続けている。さんざん来るように言っといて何なんだよあの態度。


 5階建ての方のエレベーターに4人とも載ると、最上階に向かった。

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