突然会食 4
「シェパード、ジョン君の仇をとりたければ探すのは諦めるしかないぞ」
「どういう意味だ、グレイ」
グレイ卿はオレの思った通りの人のようだ。目で合図して促した。
「いいか、落ち着いて聞いてくれよ。ヴェルマークさんは自分を囮にしてジョン君の仇を、いや、彼の父君の仇をとろうとしているんだよ。
ジョン君を殺した犯人は彼を騙りギルドに冒険者として登録し、たまたまか、狙ってかは知らないがヴェルマークさん達のパーティーにもぐりこんだ。
そしてヴェルマークさんを殺害しようとし失敗、逃亡して現在は行方不明。ここまではいいな」
「……ああ」
「ギルドの審査をすり抜ける狡猾なヤツで快楽殺人者、しかも殺し方やターゲットにこだわりがあるやつとみた。
だからヴェルマークさんを殺すことに異常な執着があるんだろう。
となれば三たびヴェルマークさんを狙いにくるかもしれない」
「お言葉ですがストーク卿、それが本当ならこの若造は警察なりギルドにそのことを話して保護してもらうべきでは? もっとも作り話ならそのかぎりではありませんが」
「クレマ教授の仰るとおりです。保護してニュースにして大々的に世間に知らせればいい。
だがそうしなかった、なぜか?
そうすれば狙われにくくなり、ヤツは諦めて何処かへ行ってしまうか、ほとぼりが冷めた頃にやってくるかでしょう。それは彼にとって都合が悪い」
「……だから誰にも言わないことで自らを囮にしてるというのか」
「そういうことだシェパード。そしてこのことを知っても我々は口を閉じるしかないのだ。理由を世間に話してしまえば彼の囮としての価値がなくなってしまう。ヴェルマークさん、そういうことでしょう」
ストーク卿がこちらを促す。
「あらためて人に言われると恥ずかしいのですが……そういうことです。
そのため財団からGPS付きの装備を使ってます。
ヤツに襲われたら──もちろん捕まえて取り押さえるつもりですが──万が一殺されてしまった場合、理事長たちに捕まえてもらうために……」
話し終えてオレは黙り込み様子を見る。
スケイプ氏をはじめ3人とも真偽を確かめるように、黙って考えているようだった。
「ヴェルマークさん……」
「はい」
「納得できません」
スケイプ氏が絞り出すように言う。
ダメか、納得させることができなかったか……。
スケイプ氏は立ち上がり、つかつかとオレに近寄って手を出す。
「たしかに貴方の父君の仇でしょうが、ヤツは私の息子の仇でもあるんです。貴方だけ危険な目にあわせるわけにはいきません、協力させてください」
「は、はい。いや、ですが……」
「邪魔はいたしません。正直、私の手で息子の仇をとりたいのですが、貴方は、父君と貴方自身の仇なのでしょう。
ここはゆずります。ですから必ず生きてヤツを捕まえてください。お願いします」
熱のこもった願いの言葉に思わずスケイプ氏の手を握ってしまった。
握り返してきた手の熱さに多少罪悪感を感じるが、すでに仇は討っている。
いずれ話せる時がきたら、真実を伝えよう。
上手くまとまったとホッとしたところで、ノックの音がした。
※ ※ ※ ※ ※
ドアが開くと、なんか偉そうな感じの男が入ってくる。
「オーナー、来客なのですが、御通ししてよろしいでしょうか」
「来客? どなただね支配人」
「それが……」
支配人がこたえる前に男がひとり入って来る。それを見た途端、オレ以外の全員が立ち上がる。
「ほら、サーチも立ちなさい」
「え? 何だ、どうした? 誰なんだこの人」
「グリーンヒル州知事だよ、自分のところの州知事くらい知っておきな」
え? そうなの? カーリン州の知事がなんで中央都市にいるんだ?
とりあえず立ち上がり頭を下げ挨拶をする。
するとグリーンヒル州知事の後ろから若い女が続いて入って来る。アン・ケイツーだった。
「クレマ教授、これはどういうことですの。ヴェルマークは財団で落ち合い、その後会食の予定でしたのに、なぜ、こちらで、しかも私抜きで、しているのですか」
「あ、いや、これには理由が」
「それをお訊ねしています。その会食でグリーンヒル州知事に、当財団には凄腕の冒険者がいて、カーリン州に住んでいますと、紹介する予定をこわすような理由をです」
怒りをあらわに詰問するアン。
それを聞いて、クレマ教授は青ざめてあたふたしはじめ、ストーク卿に助けを求めるように見る。
だが卿も困り顔で、どうしていいかわからないようだった。
「ケイツー理事長、ふたりを責めないでください。
会食の予定があるのも知らずヴェルマークさんを誘ったのは私、シェパード・G・スケイプなのです。
グリーンヒル州知事、はじめまして。残念な出会いになってしまいましたが、彼らを責めないでください。
すべての責任は私にあります。そしてケイツー理事長」
「はい」
スケイプ氏はアンの前に立つと、うやうやしく頭を下げる。
「財団のスポンサーの件、あらためてこちらから協力をさせてください。彼、サーチ・ヴェルマークさんのために」
「え、──ええ。喜んでその申し出を受けますわ」
どうしてそうなったかわからないままアンは握手をし、あとで教えてよという顔でこちらをちらりと見た──。
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