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迷宮マスター  作者: 藤井ことなり
第2部 ロイヤルブルーの秘宝
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突然会食 2

「──ですが、それでも親として殺したヤツに怒りを覚えるのです。

 できるなら私がこの手で恨みを果たしたかった、しかしその男は逃亡中だという。

 ヴェルマークさん、私はそいつを地の果まで追いかけてでも捕まえたい。そしてこの手で……。

 手がかりが欲しいのです、どんな些細なことでもいい、そいつのことを教えてください」


 人前にもかかわらず物騒なことを言い、オレに頭を下げるスケイプ氏に、どうすればいいか分からず戸惑うしかなかった。


 ──スケイプ氏の息子ジョンを殺したのはカメレオン亜人の異能力者(ジーン・ホルダー)で、オレが倒したあとアリントと呼ばれるアリ亜人に喰い殺されました──などと言えるわけがない。


 本当のことではあるが、異能力者のことを内緒にしたいし、だいいち言ったところで信じてくれないだろう。


「その件についてはアン──理事長やここにいるディフィとボゥロから聞いてませんか」


「聞いてます。皆さん同じことを言ってます。[王国の秘宝]を手に入れ帰る途中にそれを盗もうとしたが失敗し、食料等の荷物を取って逃げたんでしたね。ですがヴェルマークさんからはまだ伺ってません」


「オレ──じゃなくて、私も同じですよ」


「そうでしょうかな」


 異論をはさんだのはクレマ教授ではなく、意外にもストーク卿だった。


「その時の報告書は読ませてもらいましたが、なんというか真実を語ってないような気がします」


「どうしてそう思うんです」


「私は古文書解読が専門なのでね、なんというか文章からその意図が感じられるんです。

 あの報告書は辻褄が合ってるけど何か作為的なものがあるような……。

 シェパードとはジュニアスクールからのつきあいでして、なんというかジョン君のことに心を痛めているのが見ていられなかった。

 だからひょっとしたら、君が何か知っているかもしれないと思い、伝えたんだよ」


 コイツ──いや、この人もプロだな。こういう状況でなければ好感持てたのに。


 スケイプ氏も続けて言う。


「私は文章から人となりを読むことはできないが、これでも商売をするうえで、人を見る目は多少なりともあると自負している。ヴェルマークさん、何か隠しているでしょう」


 コッチもかよ。こりゃ下手なコト言えないぞ。


 そう思っているところに、クレマ教授が追い打ちをかける。


「もし隠しごとがあるなら公文書偽造と私文書偽造ということになり、罪に問われるぞ。さあ言いたまえ。黙秘は無駄だぞ」


 喰い殺さんばかりに詰め寄るクレマ教授に、張り倒したくなる衝動にかられる。


 が、堪えた。


 この急な会食の真の目的は、オレへの尋問か。


 席を蹴って出て逃げてもいいが、正直スケイプ氏の必死の思い、子への愛情をを無下にしたくない気持ちがある。さて、どうすればいいか……。



──ここをダンジョンと思え──



 どうすればいいか考えていると突然、女の声で囁かれた。


 驚いてディフィを見るが、どうしたという顔をしている。それにディフィの声じゃなかった。


 ダンジョンと思え? どういうことだ? ここがダンジョンだとしたら……。あ、そうか。


「スケイプさん、ストーク卿、そしてクレマ教授。あなた方の言う通り、私は隠していることがあります」


「ちょっとサーチ」


 ディフィが慌てるが無視して言葉を続ける。


「ですが、それは言えません」


 それを聞いてクレマ教授が勝ち誇ったように言う。


「それみたことか。人に話せないような秘密。それはダンジョン発見などという捏造だろう。たった5人であれほどの遺跡を見つけられる筈がない、すべてデマで、ガセで、ウソの捏造なんだろ」


「違いますよクレマ教授。それは間違いなく我々だけで見つけました。理事長が古文書で当たりをつけ、私がベテランの勘で発見したものです」


「ベテランだあ? 私は考古学一筋30年やってるんだぞ。少なくとも10年はやってないとベテランと認めんぞ、若造が」


「10歳の頃からやってるので今年で15年になります」


「ふん、それみたことか。ギルドの登録は16歳からだ。そんなことありえる訳無い。無駄なことを」


「私の父もギルド所属の冒険者で、幼い頃から一緒でした。

 なので登録前からダンジョンに出入りしてました。

 話せないことは、その父に関わることであり、私個人の問題なのです。

 話せば貴方がたを巻き込んでしまいますので、言えません」


「それはどういう意味だね」


 スケイプ氏が訊ねる。


「その殺人鬼に、私は狙われているんです。理由はソイツの秘密を知っているので。話してしまえば貴方がたも狙われる危険がある。だから話せないんです」


 突然の告白に全員──ディフィも含めてだが──驚きの表情となった。


「でまかせだろ」


「クレマ教授、すこし黙っていただけませんか」


 スケイプ氏が睨みつけるように言い、クレマ教授が大人しくなる。


 どうやら人間関係がみえてきたな。


 クレマ教授はいちゃもんつけたいだけ。ストーク卿は友達のスケイプ氏のために。そしてスケイプ氏は殺人鬼の情報が目的と。


 そしてスポンサーであるスケイプ氏に、クレマ教授は弱い。


 ならばスケイプ氏を納得させる話をすれば、この人たち(パーティー)はまとまるということだ。

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