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迷宮マスター  作者: 藤井ことなり
第2部 ロイヤルブルーの秘宝
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御出迎え その4

 挨拶もそこそこに、セバスとバトラスはオレにシャワーを浴びるように促す。


 正直、コイツらもか、とうんざりする。


※ ※ ※ ※ ※


 鉄道旅の最中、ディフィからも身だしなみとマナーについて何度も何度も何度も何度も注意された。


 曰く、アンの知り合いに会ったとき恥をかかないようにだ。もちろんアンがだ。


 道々アンの仕事が滞っている理由を話してくれた。


「ケイツー財団を立ち上げて理事長になったはいいけど、3方向からのチャチャが入ってきたんだ。

 ひとつは法的なやつで、発見した王国はケイツー家の先祖のものだったら土地の権利はどうなるかというもの」


 現在も調査が続いてる、オレたちが発見発掘したダンジョンは、アンの祖先が治めていた王国だという証明がまだできてない。


 それを繋ぐ失われた記録(ミッシングリンク)を見つけないと、言いがかり扱いされるというらしい。


「ふたつめは資金について。ケイツー家はたしかに資産家だけど、財団は文化事業で非営利団体なのでどうしても資金が足りなくなる。使う一方だからね。だから協力してくれる相手を探している」


「発見した財宝を売るとかできないのか」


「それらは文化財だから誰の物でもない、国で管理されることになるの」


「残念だったなボゥロ」


「もうやってないんだから盗掘屋イジりはやめてくれ」


 憤慨するボゥロを見て、ディフィとともにフフンと笑う。


「最後に学術的な問題。財団というかアンが捏造しないように外部から検証する人物が必要だと主張されてね。

 仕方なく元勤め先だった大学教授を2名迎え入れたんだけど、ほら、アンが愚痴っていた教授がいただろう、ネチネチ言ってくるヤツがいるって」


「ああ。って、まさかそいつか?」


「そのまさか。アンもうんざりしてたよ」


「なんでまたそんなヤツを」


「女王様からそうしろって言われたんだって。その程度の俗物を抑え込むくらいやってみせろってさ」


 アンの御先祖様である女王様は、激動の時代を生きていたようで、要求がなかなか厳しい。


「相変わらずスパルタ方式なんだなあの悪霊──ぐわぁぁぁ、ふ、不敬でしたぁ」


 またもや心臓を握られる感覚に襲われてしまった。それをみてボゥロ達に呆れられる。


「お前も学習しないね。というかダンジョンだと頼りになるのに、それ以外はドジで世間知らずもいいとこだな」


「うるせぇよ」


※ ※ ※ ※ ※


 そんなわけで世間知らずでドジなオレが、粗相をしないかと心配でしょうがないらしい。だったらなおさら呼ぶなよと思う。


 シャワーを浴び終わり、脱衣所で身体を拭き終わると、新品の下着が用意されていてそれを身に着ける。


 そしてシャツに袖を通すと、バトラスが「失礼します」と断り入ってきて、ボタンをつけはじめる。


「いいよ、ひとりでやれるよ」


「サーチ、そういうのはやってもらうんだよ。バトラスの仕事を取るんじゃない」


 部屋からディフィの怒鳴り声がとどいて肩をすくめる。


「そういうものなのかい」


 初対面のバトラスに訊くと無言のまま身支度を整えつづける。


 なんか愛想わるいな。


 ブラウンの短髪でりりしい顔立ちに鳶色の瞳、肌は真っ白で運動とは縁がなさそうな感じ。


 オレと正反対の人生を送ってるみたいだな。


 靴下とズボンを履き、ネクタイを締められたあとジャケットを羽織る。


 そこで部屋に戻ると、ボゥロが軽く口笛をふく。


「へぇ、サーチもなかなかイイ男なんだな。見違えたよ」


「スーツって本当に見栄えをよくするんだね」


 めったに褒めないディフィの言葉に気を良くしかけたが、よくよく聞けばスーツを褒めてるだけなのに気づいて、なんだよと思った。


 そしてセバスが正面から髪を整えてくれる。


 なんかバトラスに似てるなと思ったときだった。


 内線の呼び出しがありバトラスが出ると、少々やりとりしてからセバスに話しかける。


「父さ──セバス様、フロントからの連絡で、ヴェルマーク様に食事のお誘いがきているそうです」


 ああやっぱり父子だったか。


「どなたからだ」


 爆弾処理でもしているみたいに緊張しながら、整えてくれるセバスが問い返す。


「それが─クレマ教授からだと……」


 それを聞いてセバスの手が止まり、ディフィとボゥロも驚きの声をだす。


「な、なんで。ここに来てるなんて誰にも言ってないのに」


「落ち着けディフィ。バトラス、詳細はわかるか」


「しばらくお待ちを」


 ふたたびフロントと会話するバトラス。


 その間セバスは身じろぎもせず、オレの頭と顔を整えてくれた。


「──アンタ、プロだな」


「お褒めに預かり恐縮です」


 無表情のまま一礼をして下がる。


 仕事は違えど、こういう人に会うと共感する。


 仕事一筋という人は好きだ。


 セバスはバトラスのそばに行き、代わってフロントと話しはじめる。


 そして通話を切ると、しばらく考えごとをしたのち、バトラスに何やら指示を出し、オレたち3人に状況説明をする。


「食事会場はこのホテルのレストランの個室で、クレマ教授の他に2名。

 そのうちひとりが財団のスポンサー様で、このホテルのオーナーということでした。

 ヴェルマーク様、サポートいたしますのでお願いできますか」


 財団のために機嫌をとってこいってか。


 面倒くさいがセバスのプロ仕事を見たあとでは、引きたくない見栄があった。


「わかった、行ってこよう」

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