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迷宮マスター  作者: 藤井ことなり
第1部 女王の帰還
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迷宮マスター?!

 ──さらに1週間後、ギルドのダイナーでいつも通り食事をしていると、断りもなくガサツなおっさんが前に座る。


「相変わらずハーブチキンソテーのベリーソースがけか。よく飽きないな」


「食事中に話しかけるのはマナー違反だぞ」


「お前相手にか」


 探検服でなく、はち切れんばかりの腹を無理矢理おおったシャツが気になるスーツ姿。


 普通に歩いてきたから足は治ってるようだが、品が無いのは直ってない。


 まったく消化に悪くなるな。残りを一気に頬張り急いで咀嚼する。


「で、慰謝料は送金できたのか、ボゥロ」


 ギルド経由でオレの口座には大金が振り込まれていた。もちろん依頼主のアンからだ。


「ああ、これで離婚成立。晴れて独り身だ。サーチの仲間入りだぜ、よろしくな」


「オレはまだ結婚していないぞ」


「独り身なのは変わらないだろ。トーマス、俺にはコーヒーをくれ」


「自分で淹れろ」


「なんだよサービス悪りぃな。ならキャシーに……」


「絶対に淹れさせん。ったく、しょうがねぇな」


 ギルマスのトーマスがぶつくさ言いながら淹れたコーヒーがボゥロの前に乱暴に置かれる。


 それをひと口飲んだボゥロの顔がみるみる歪み、吐き出しそうになる。


「なんだこりゃ、苦味しか感じられねぇぞ」


「お前専用の味だ。これからもそれを淹れてやるよ」


 ざまぁみろという顔のトーマスにボゥロは渋い顔をしながら、水で薄めつつ苦いだけのコーヒーをちびちびと飲む。


「ところで他のメンバーはまだなのか」


「ああ。俺だけ先に来た、ジョンのことでサーチとトーマスに伝えておきたいことがあるんでな。トーマス、話があるからこっち来いよ」


 受付カウンターにいたトーマスを呼び戻すと、席に座らせ、オレ達に向かって話し始めた。


「さて、俺達の知ってるジョンはジョン、遺体で見つかった方はスケイプ氏として話すぞ。

 スケイプ氏は大陸中央都市(セントラル)にある大企業の社長の息子でな、いわゆる放蕩息子というやつだ。

 親に金をせびり、いかがわしい場所に出入りして何日も帰らず、問題を起こしたばかりのヤツだった」


 大企業の息子スケイプ氏の遺体が見つかったあと、マスコミは大騒ぎになったが、調べていくと資産家のケイツー家が関わっているとなり、さらに過熱する。


 ところが国家史跡保存委員会が、アン・ケイツー教授により国宝級の遺跡ダンジョンを発見したと発表した。


 そしてその記者会見のときにスケイプ氏を殺した犯人らしき人物が遺跡発見の名誉に目がくらみ、メンバー全員が殺されそうになったと発言(ウソは言ってない)。


 若くてキレイな少女が涙ながらに伝えた曲がった真実により、謎の逃亡殺人犯がいると印象がついた。


 オレ達は、ようやく痛くもない腹を探られることは無くなった。


 だが、そのかわり謎の逃亡殺人犯を明らかにしなくてはならない。


 警察当局とは別に、アンの依頼でボゥロとディフィはジョンの身辺調査をしていたのである。


「ジョンの足跡は、異能力のせいかやはり分からなくてな。

 被害者のスケイプ氏の足跡を追った。そこでいかがわしい場所──ヘブンズ・ゲートっていう繁華街なんだが──そこで奇妙な話を聞き込んだ」


「奇妙な話?」


「そこに長いこと住んでいる婆さんがいるんだが、そのヒトにちょっかい出したクズどもはもれなく再起不能になるまで叩きのめされるか、下手すりゃ死んで見つかるんだとよ。

 けど、誰がやったか分からない、婆さんがあんなコト出来るはず無いから、薄気味悪いんで誰も触れない存在なんだと」


「それって──ジョンがやってたってことか」


「オチを先に言うなよ。まあそういう事だ。それを聞いた俺達3人は」


「ちょっと待て。3人て、アンも行ったのか」


「違う違う、刑事だよ。ばったり会って一緒に行動したのさ。それがさ……」


 急にボゥロが不機嫌になる。


「その刑事が、ディフィの元パートナー、離婚した相手だったんだよ。

 はじめて会ったとき俺と一緒だったディフィに詰め寄ってな、こんなヤツが好きなのかって。失礼極まりないな」


 それを聞いてトーマスは爆笑、オレも苦笑した。


「笑うなよ、続きを話さないぞ」


「ごめんごめん、それで3人で婆さんに会ったのか」


「ああ。ボロアパートの玄関で話を訊こうとしたんだ。

 最初は警戒して何も喋らなかったんだが、俺が『カメレオンは死んだ』と言ったら反応があった。


 どんな死に様だったのかと。


 ──婆さんがまだ若かった頃に拐われて、ずっと奴隷のような生活をしていたそうだ。

 長い間に奇妙な関係のまま共同生活を40年くらいしていたらしい」


「よ、40年!? ウソだろ」


「さあな、その辺りは警察が調べているよ。なにせジョンのヤツ、今までの殺しを記録してやがったんでな。

 部屋いっぱいに殺人記録の証拠があって、ディフィの元パートナーが全部押収、婆さんも任意で事情聴取となり、俺達の調査も終わったわけだ」


 吐き捨てるように言うボゥロの言葉に、オレはぼう然としトーマスは渋い顔をする。


「シリアルキラーは殺人の記念品を蒐集と聞いたことあるが……40年とは……。いったい何人、いや、何十人殺されていたんだ……」


「さあな。だがトーマス、そのシリアルキラーの化け物を退治したのが、ここにいるサーチなんだ。シーカーのかたきを討ったんだ、誇ってもいいだろ」


「そうだな。サーチ、よくやったな。よく親父さんの、俺たちの親友のかたきを討った。ありがとう」


 トーマスは涙を流しながら、オレに頭を下げた──。?

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