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迷宮マスター  作者: 藤井ことなり
第1部 女王の帰還
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ダンジョン、クリア その3

 ギルドのあるソーゲン村には3日かかる。


 ボゥロの装備には予備を含めて4日分の食料と水がある。──ひとり分なら──。


「1日分が2食だから今は8食分ある。これを4人で分けるから2日はもつ。1食分は今食べよう、明日か明後日のどちらかは食事抜きで進むぞ」


 ボゥロの提案に皆が納得すると、灼熱の昼間を避けて、ダンジョン入り口付近に戻り日陰で休憩し、陽が傾いたところで出発する。


「ボゥロ、足の方は大丈夫か」


「ときどき痛むが、今のところ大丈夫だ。村に着いたらすぐに医者の世話になるな」


「ギルドに行けばすぐさま呼んでくれるさ。オレは戻ったらまずは水を飲む。それからダイナーでハーブチキンソテーのベリーソースかけを食べるんだ」


 ボゥロに肩を貸しながら雑談をしていると、後ろでディフィと並んで歩くアンが割り込んでくる。


「初めて会ったときもそれ食べてたわよね。ちゃんと野菜も食べてる」


「食べてるさ」


「なにを」


「ハーブとベリー」


「……帰ったら水じゃなくて野菜ジュースを飲みなさい」


「やだよ青臭いから」


「ディフィ、帰ったらひと仕事あるからね」


「了解。はっ、ドラム缶いっぱい分、飲ませてやるよ」


「そんなに飲めるか」


 そんな話をしているうちに陽が完全に陽が落ちて真っ暗闇になる。


「今日はここまでかな」


「まって。今のサーチなら[エコーズ]で私たちも見えるんじゃない」


「あ、そうか」


 [エコーズ]を発動させ、もう少し距離をかせいだ。だがさすがに荒野の冷え込みには対応できず、テントを張り泊まることにして交代で休む。


 オレとボゥロが見張り番をしているとき、ジョンのことをどうギルドに説明するかを話しあった。


「カメレオン亜人のシリアルキラーか。アイツの話しぶりからすると、ずいぶん前からそんなことをやってたんだな。俺やトーマスそれにシーカーのことまで知ってたんだから」


「異能力(ジーン・ギフト)で自分の存在を消してたんだろうな。道理で印象に残らなかったわけだ。で、どう報告する? 本当のこと話しても信じてもらえないよな」


「そうだな……。遺体も無いし、装備を盗んで逃げたことにするか。それがいちばん辻褄が合う」


「だな。ダンジョン攻略して宝箱を見つけて帰る途中、間違って装備を盗んで逃げたことにしよう」


 ──ティアラが納められていた宝箱、これは女王にとって重要なアイテムだったのか装備には無頓着だったのに、これだけは運び込まれていた。


※ ※ ※ ※ ※


 朝方と夕方、そして[エコーズ]のおかげで夜もある程度移動距離をかせげたので、予定より半日早く村に到着した。


 ギルドに着くと、すぐさま医者を呼んでボゥロは治療してもらい、ディフィは大陸中央都市(セントラル)の会社に連絡。


 アンも実家に連絡すると、自家用垂直離着陸機(VTOL)が、村の離着陸場(ポート)まで飛んできてあんぐりする。


「アイツ、本当にお金持ちなんだな」


 3人とも大陸中央都市(セントラル)の住民だから、一緒に乗って帰っていくことになった。


「あとは頼んだぜ」


 面倒くさいギルドへの説明を押しつけられて、やれやれとため息をつきながら見送った。


※ ※ ※ ※ ※


「で、ジョンは逃げたまんまだと?」


「ああ」


  あらためてギルマスのトーマスから今回のダンジョン攻略の詳細を訊ねられ、ボゥロ達と口裏を合わせて捏造した記録(ログ)を提出。


 そして口頭による質疑応答をしていると、トーマスは不服そうに了承する。


「ま、いいだろう。ギルドにはこれで報告しておく。で、だ」


「なんだい」


「ここからは父親代わりでおまえのめんどうをみたトーマスとして訊くが、本当は何があったか」


「いや、記録どおりだけど」


「ウソをつくな。お前は偏屈でヒト嫌いだがその分プライドが高い。パーティーのひとりを無事に帰さなかったことを悔やむはずなのにそんな様子がない。本当は何があった」


 とぼけ通そうとしたが、トーマス相手に嘘をつくのがだんだん心苦しくなり、入院中のボゥロと連絡をとり話し合った結果、外出許可をもらってわざわざ来てもらい、ふたりで本当のことを話した。


「あのなボゥロ、サーチのことは知っている。だがジョンも異能力者(ジーン・ホルダー)だったなんて信じられるかよ。それに亜人が生きていて襲われたなんて誰が信じるかよ」


「だから言わなかったんだよ。でもそれが本当のことさ、サーチもそう言ってるだろ」


「うーん……、やはり信じられんなぁ……」


 ところが急転直下というか、予想外の話が飛び込んできた。


 ギルド経由で報せが届いた、[ジョン・G・スケイプ]の遺体が見つかったと。


 ──それも大陸中央都市(セントラル)郊外の川辺で腐乱死体として──


※ ※ ※ ※ ※


 検死の結果、死後3ヶ月経っており死因はおそらく絞殺による窒息死。


 DNA鑑定でなければ分からないくらい身元を示すものはなかったという。


 だがそのジョンの身分証明書(ID)でギルドに登録されているので、何がどうなっていると警察当局の調査がはじまった。


 ──そしてそれからひと月経った今、本物のジョンを殺害した犯人が身分を偽り、ギルドに冒険者として登録したのだろうということになった。


 現在、その犯人は指名手配されている──


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