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迷宮マスター  作者: 藤井ことなり
第1部 女王の帰還
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ダンジョン、クリア その2

 ──決闘場だったところまで戻ると、ボゥロとディフィを起こそうとしたが、女王がそれをとめる。


 まずはアリントに階段や床を修復させてからの方がいいだろうという助言に、考えたあと従うことにした。


 アリントは階段を直したら、つぎにボゥロ達を担いで上の層に運び、女王は下から天井というか床を修復させてもとのカタチにさせた。


 そう、まるで先程の非現実的過ぎる出来事がなかったように……。


 だが貫かれた腹の傷と痛みが、口に広がる鉄のような血の味が、生まれて初めての死闘があったことを全身に刻まれていた。


「アリントたちはどうするんだろ」


「あ奴等は役目を果たしたので、女王のところにもどる」


「数千年経っているんだぞ、大丈夫か」


「まあ大丈夫だろ。連中にも子孫がいるはずだ」


 わりと大雑把だな、女王は。


「さて、私はすこし子孫アンと話がある。ここで待ってるように」


「どっか行くのか」


「この先の壁画にな。ついてくるではないぞ、王家の問題だからな」


「いいけど、見えるのか」


「案ずるな、ティアラを手に入れたあとなら問題ない」


 オレから手を離してダンジョンの奥に向かって立つと、ティアラから虹というかオーロラのような光が放たれる。


 すると行きそこねた奥の壁が反応し、光りはじめる。


 ──ああ月輝石(ムーンライト)の壁なのか。


 光り輝く通路を当然のように進む女王を見送ると、とりあえずボゥロ達を起こそうとしたが、起きない。


 どうやらまだ女王の術中のようだ。


※ ※ ※ ※ ※


 ──30分ほどしたあと、女王は戻ってきた。いや、アンなのかな? 今さらだがややこしい。


「アンか女王か、分かるようになんないかな」


「いくら時代が違うとはいえ、王族に対してはもう少し敬意をはらわんか。まったく。私の場合はティアラの宝珠(オーブ)が光るからそれで判断せい」


 言われて気がついた。


 ティアラには中央に大粒の赤い宝石があり、それが光っている。


 他にも5つの色とりどりの宝石が装飾されていて、なんというか、あらためて豪華というより神々しいなと思った。


「用は済んだ。あとは子孫アンに任せるからティアラを外してよいぞ」


「それはいいけど、その前にボゥロたちを起こしてくれないか。ずっと寝たままなんだ」


「おお、そうだったな。解呪(リリース)」


 女王の呪文でボゥロたちが意識を取り戻す。


 パニックにならないように、すぐに触れて[エコーズ]をかける。


「お、どうした、なにがどうなったんだ」


「アンは? アンは無事なの?」


 ティアラを外したアンが近寄り、オレに触れるとそのままディフィに抱きつく。


「無事よ、ディフィ。ありがとう、本当にありがとう、貴女がいなかったら私はどうなっていたか……、私も愛してるわディフィ」


 その言葉とハグでディフィは最高に嬉しさを隠しきれない表情で力いっぱい抱きしめかえした。


 が、アンが、ぐえ、と声をもらしたので慌てて緩める。


 ──恋愛のことはよくわからないけど、アンの愛してるとディフィの愛してるは、たぶん違うものなんだろうな──


 そんなことを考えていると、ボゥロが何がなんだか分からないという感じで話しかけてくる。


「サーチ、とりあえず俺達は助かったということでいいんだな」


「ああ。何があったか説明──まてまて、ボゥロ、大変なことに気がついたぞ」


「どうした」


「オレ達の荷物が、装備がない」


「え?」


 オレの荷物は決闘のときに下ろしてる。


 アンとディフィは土砂崩れのとき紛失したんだろう。となると今あるのはボゥロの分だけだ。


「どうしたんだ、なんで無くなっているんだ」


 ボゥロの問いに答えるよりも、案内(ガイド)としての職業意識が優先する。


 皆んなを無事に帰さなければ。


「ボゥロ、装備はもうそれしか無い。ひとり分の装備で4人が帰ることになる。

 どうしてそうなったかは道々話すから、今はすぐにここから出る。

 アンとディフィもいいな。事情はオレとアンが知ってるから、とにかくここから出よう」


 オレの言葉にアンは事情を理解し、すぐさま指揮をとる。


「そうね、サーチの言うとおりよ。皆んなサーチにつかまって。ボゥロは私とディフィでサポートするわ」


 意味は解らないが、オレとアンが慌てているのと装備が1つしかないのは伝わったようで、ディフィとボゥロはとりあえず従ってくれた。


 みんな立ち上がると、アリントに追われたときの列になり歩きだした。


※ ※ ※ ※ ※


 ダンジョンの出口に着く頃には、何があったか説明は終わってたのだが、ボゥロ達は半信半疑だった。


「ええっと、つまりここには遥か昔にに王国があり、アンはその子孫だと。

 それにジョンは異能力者(ジーン・ホルダー)でサーチと決闘して、最後はアリントに喰われて死んだということか」


「そうだ」


「あのな、サーチ」


「まて、言いたい事はわかる。だが本当にあったことなんだ、信じてくれ」


「いやまあ信じるけどさ」


「本当に」


「決闘や子孫はともかく、アリントに襲われたことは間違いないからな。それよりも俺が言いたいのは、ジョンがいなくなったという事だ。ギルドには今回のことは申請登録してあるだろ。どうしていなくなったか説明しなくちゃならん。どうする」


 さっきまで非現実的な問題に悩まされたが、今度は現実的な問題で悩まされる羽目になったか……。

お読みいただきありがとうございます。


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