決闘 その3
意識が薄れていく……腹と背中が熱い……いや痛い……のか……もう……わから……
──
──……──
──ブレス──
──ブレス!──
──ブレス!!──
──祝福の吐息──
……ああ、アンの声か。あいかわらず泣き叫んでいるな……
「うるせぇ、どんなに叫んでも小僧は助からねぇよ!! 女王、小娘を黙らせろ、ルール違反だろうが」
ジョンの怒鳴り声にアンの叫びが止まり、かわりに女王が話しはじめる。
「べつに約束を違えてはいないぞ。ジョンとやら、なにがあったか説いてやろう。
お前が従者サーチを穿いたとき、子孫アンが叫びそうになったので私が止めた。
そして私に治すように頼んできたが、中立の立場であるから出来ないと断った。
すると子孫アンは、なら自分がやるから教えろときた。
祝福の吐息は私の体内で治癒力を促進させる息を練り、それを直接相手の体内に送り込む術なので、子孫アンを闘いに参加させないという約束に反するから、無駄だぞと言ったが、それでもというのでやり方を教えた。
つまりさっきのは子孫アンが祝福の吐息の練習をしていただけだ。気がすむまでやらせていたのだよ」
「はん、長々と言い訳ご苦労さん。つまり小娘は諦めたってことか」
「いいや、気がすんだんだよ」
「はん、どっちでもいいよ。つまりオレ様の勝ちを認めたってことだろ」
「いいや──お前もそうだろうが、私も驚いているところだ」
「なにを──」
ずっとオレを無視して女王と話していたジョンが、こちらに振り向く。
驚いただろうな、前屈みになっているとはいえ立ち上がっているオレを見て。
「てめえ、しつこいぞ死にぞこないがぁ」
ジョンお得意の長い舌攻撃がくるが、ふらりと動いて避ける。
もう一度と、ムチのようにしなる舌が上下左右斜めからと攻撃がくるが、それらをふらりふらりと全部避ける。
「小僧、まさか避けているのか」
舌を戻したジョンがバカなという感じで呟く。
ようやく上体を起こせたオレは、思いのたけを叫んだ。
「痛ってえええぇぇぇ!!!! アン、治すんならもっとやさしくやれよぉ!!」
服は破れているが、身体には傷ひとつない腹を見てジョンが驚く。
「バ、バカな。傷ついてないだとぉ」
はじめてジョンが狼狽える姿をみせた。ここは畳みかけるところだと直感したオレは、ハッタリをかます。
「ディフィが言ったとおりオレは追い詰められると成長するんだよ。今度はオレがハンデをくれてやるぜ。アン、どうしてオレがジョンの攻撃を躱せるか説明してやれよ。得意の名付け込みでさ」
ぶっちゃけ、どうしてオレがジョンの攻撃を躱せるか自分でも解らない。だが、ジョン自身が言った。
《《異能力は意志の強さで強弱が決まる、この能力を使うという意志、どんな能力かと認識する意志、そのためのルーティンが名乗ることなんだ》》
と。
正しくなくてもいい、オレが納得して使える屁理屈を聞かせてくれ。
「……あっ、そ、そうね。ジョン、あなたにもう勝ち目はないだろうけど、サーチがどんな異能力を身につけたか教えてあげるわ。
サーチの異能力はエコーズ、喉を鳴らしてその反響で周囲環境を知るという能力よ。だから……えーと、……そうそう、そこからコウモリ亜人の異能力だとわかるでしょ、あなたの攻撃を躱したのは超音波を発してその反響で位置がわかるコウモリの能力、名付けて[エコーズ・バット]よ」
ストレートなネーミングだなっ。
だが、なるほど、それなら納得できるぜ。
「エコーズ・バット」
途端、周囲が粘るような空気に包まれた感じになる。ジョンの長い舌攻撃が何処から来るか、粘るような空気が先に感じ取れるので躱せる。
[エコーズ]で見えるようになり、[エコーズ・バット]で躱せる状態となった。これでようやく[防御]ができたんだが、[攻撃]ができない。
ちらりとアンを見て口パクで(攻撃は?)とやったつもりなんだが、ずいぶんとびっくりされた。なんで?
少し黙った後、アンがこっちに向けて口を動かす。
(サーチ、聞こえる?)
え? アンの声が聞こえるぞ。どういうコト?
(聞こえるよ)と口パクで返す。
(おそらくだけど[エコーズ・バット]の副作用ね。私が聞こえるのは指向性超音波で話しているから。サーチが聞こえるのは鼓膜も敏感になってるからよ)
(ならこのまま会話できるというコトか)
(それはダメ。これは確かめるために許してもらってるけど、女王が許さないから。だけどそっちの意思は伝えられるわ──)
そこで会話が途切れた。おそらく女王が止めたのだろう。だが要望は伝えられた。反撃の糸口を頼むぜアン。
ずっと躱していたオレに業を煮やしたのか、ジョンが突っ込んでくる。
一瞬、逃げようかと思ったが逆に走って近寄る。今のオレなら躱せるとたかをくくっていた。
だがさすがは百戦錬磨のジョン、左右のパンチをフェイントにして、オレの両足を舌で巻いて動きをとめる。
「しまっ──」
マウントをとられてまた身体を穿かれるかと、頭をよぎる。
「ジョン、墓穴を掘ったわね。サーチの攻撃の絶好のチャンスなのよ」
アンの言葉に、ジョンは舌を戻して一気に下がる。ナイスハッタリだぜ。助かった。
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