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迷宮マスター  作者: 藤井ことなり
第1部 女王の帰還
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決闘

  ガレキが片付けられた通路に、オレと少し離れたジョンを中心に、無数のアリントが円をなすように囲む。


 その広さはよくある格闘技の試合場と同じくらいで、アン(おそらく今は女王だろうが)は切り出し石で簡易に作られた玉座に座っている。


 その傍らにはボゥロとディフィが眠っている。


 いつまでも起きないことを不思議に思ったが、どうも女王が何かをしているらしい。


 まあ今起きてもややこしくなるから、そのままでいてくれた方がオレも助かる。


「双方、用意はいいな。私はアリントの触覚(センサー)と感覚を共有して感じることができるから、虚偽は通用せぬぞ。この円陣から出たものはアリントによる制裁があると覚悟せよ」


 暗闇ではあらぬ方向を見るものだが、ジョンはこちらを見ているし、女王もオレ達の方を見すえている。どうやら本当らしいな。


「ジョン、ひとつききたい」


「なぁんだ小僧ぉ。命乞いかぁ」


「なんで親父を殺した」


「はん、そんなことか。さぁな、わすれちまったよ。たくさん殺してきたからな」


「なんでそんなに殺すんだ」


「はん、知るかよそんなこと。女を抱きたくなるのに理由がいるか? 抱きたいから抱くんだよ、殺したいから殺すんだよ」


 こいつ……サイコパスのシリアルキラーってヤツか。ヤバい、コイツは野放しにしてはダメだ。


 そしてここまで告白しているってことは、オレを殺す気だな。──しかたない、ヤるしかないか──。


 覚悟を決め、半身になって両腕を上げ、顔周辺をガードする。


 さっきは不意打ちで後ろを取られたが、今度は正面からだ。勝ってみせる。


「はじめよ」


 女王の言葉を聞いた途端、ダッシュして距離を詰め──れずに顔面に衝撃が走る。


 後ろに倒れ尻もちをついたが、すぐに立ち上がりガードする。そしてまたダッシュして──顔面に衝撃を受ける。


 なんだ、何をされているんだ、まだ手の届く距離まで近寄ってないぞ。


 無造作に立っているジョンに近づくことさえできない。だが、ガードは下げないぞ、どういう攻撃か分からないけど狙いは顔というか喉なのはわかっている。ここだけは守らなくては。


 バカ正直に直線的に近寄らず、緩急つけたり左右に振ってフェイントかけてみるが、ある程度近づくと謎の攻撃で殴られる。


 感触的に拳ではないのはわかるんだが、人体にこんな感触の部分あったかな。


「サーチ、が──声援はダメだぞ子孫、私の名での決闘だ約束を違えるのは許さぬ」


 アンの言葉を女王が遮ったらしい。だがそれでいい、オレが欲しい言葉はそれじゃない。


「どうした小僧、足が止まったぞ。降参か」


「誰が。勝手に決められた決闘だが、お前が気に入らないから殴ってやりたい気持ちはあるんだ」


「ならかかってきな、なぶり殺しってやつをやってやるからよ」


「なぶるってよりねぶるよね。ジョン、それも異能力(ジーン・ギフト)なの」


 話し方から察するにアンが言ってるな。


「おいおい口出しはルール違反だろ、女王様よ」


「別に従者への応援でも声援でもないからな、子孫はお前に訊ねているだけだ」


「屁理屈だな。小娘、教えてやらねえよ」


「なによケチ、でもそんなに長く伸びる舌なんて異能力に決まってるわよ」


 舌か。


 ナイスだアン、オレが聞きたかったのはジョンの情報だ。その調子で伝えてくれ。


現時点でジョンの能力は


・姿を消す

・暗闇でも見える

・舌が伸びる


なのがわかった。


となると、


・異能力者(ジーン・ホルダー)の異能力(ジーン・ギフト)はひとつのはず

・落とし穴の向こうの壁文字をなぜ読めた

・神殿に行く途中の会話をなぜ知っている

・お宝を持ち帰れたのをなぜ知っている

・土砂崩れをなぜかわせた


という疑問が残る。


 戦っているオレでは落ち着いて考えられない、だからそれをアンに任せた。


 今のところ時間をかせいで弱点を見極めてもらうしかなかったが、ようやくひとつ効果がでたな。


「ジョン、文字通りオレは舐められてたのか。全然気がつかなかったぜ」


「はん、気づいたところで変わらないがな。お前はオレ様に指一本触れることなく地面に寝そべることになるのさ。かかってきな」


 たしかに攻撃方法がわかったところで、避けられなければ意味はない。


 何度も舌で叩かれて、射程距離は1メートル50ってとこなのはわかったんだが、たぶんオレの腕の長さの倍くらいある。とても近寄れない。


 せめて掴んでやろうとするが、ヒットアンドアウェイってやつか、たたかれた途端に戻されるから触れもしない。


「そうか、わかった。ジョン、あなたの異能力(ジーン・ギフト)はメレオといったわね。あなた、カメレオン亜人の異能力者(ジーン・ホルダー)ね」


 そこまではオレでも想像できてる。問題はその先だ。アン。


「身体をカメレオン化することによって、カメレオンの能力を使える、そういうことでしょう」


 ──なるほど、そういうことか。異能力はひとりにひとつ。だがそのひとつが、《《複数の能力を使える状態》》だったというわけか。


 ジョンの攻撃が止み、やれやれというようなポーズをした。


「小僧のために、いろいろ考えているようだな。ご褒美だ、オレ様の真の姿を見せてやるぜ。──異能力、メレオ」


 服を脱ぎ、上半身裸になったジョンの身体が変わっていく。


お読みいただきありがとうございます。


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