第9章
新しい一日は、目を開けた瞬間から始まった。
重い眠りから浮かび上がる時間も、天井がどこか、なぜ首が痛いのか、そもそも朝なんてものを誰が発明したのか考える人間らしい空白もなかった。目が開く。それだけで世界はもう鮮明だった。
鮮明すぎるほどに。
天井の石。壁の中を走る細い力の筋。空気に残る熱。廊下から漂う黒い炎の淡い匂い。そして隣のリラ。
彼女はベッドの端で眠っていた。
眠っている間でさえ、二人のあいだに職務と儀礼と昨夜の沈黙のための空間を残しているようだった。服は整え直され、髪は少しほどけ、片翼は身体に沿い、もう片方はわずかに開いている。赤みはもうない。残っているのは、政治委員会でも設置したくなる出来事の後にも眠れる、疲れた人間の静けさだった。
彼はしばらく見ていた。
触れなかった。
起こさなかった。
それからゆっくり起き上がる。
尾が勝手に均衡を取り、翼もほとんどぎこちなさなく畳まれた。新しい身体は予想より早く学んでいる。あるいはケイルの肉体記憶が内側から手伝っているのか。
卓にはリラの書き込みが入った薄板が並んでいた。
戴冠。廷臣の紹介。昼食。〈光〉の術師の尋問。身体の一次検査。夕方の緊急案件確認。
彼は最初の単語を読み直した。
「戴冠式か。そりゃそうだよな」
リラが目を開けた。
即座に。
寝ぼけた様子もない。
起き上がり、足を床へ下ろし、頭を垂れる。
「君主様」
声は普段より少し低かった。昨夜の痕跡がまだ残っている。それでも彼女は事務的な平静へ戻そうとしていた。
彼は気づいた。
彼女は、彼が気づいたことに気づいた。
二人とも何も言わない。
「どのくらい酷い?」
「式典が、ですか?」
「ああ」
「長く、重く、象徴過多で、政治的には必要です」
「つまり酷い」
「はい」
彼は立った。
「服は?」
リラも続いて立つ。
「準備済みです。マルヴェインは高い襟と権威を示す鎖を二本追加しようとしました」
「却下」
「すでに」
「いい仕事だ」
「シアナからは、魔力回路の二次検査が終わるまで生きた刻印入り金属を使わないよう要請が」
「じゃあ無し」
「アズガルからは武器を佩けるようにとの要請です」
「武器までくれるのか?」
「儀礼用です」
「つまり役に立たない?」
「非常に高価です」
「なるほど。役に立たないうえに予算へ傷を残す」
リラがほとんど笑った。
ほとんど。
そしてまた秘書へ戻る。
「浴室は準備済みです。朝食は二十分後。その後、着替えを」
彼はもう少し注意深く彼女を見た。
「大丈夫か?」
聞くべきか決める前に、言葉が出た。
リラの呼吸が一瞬だけ止まる。
「はい、君主様」
正しすぎる返事だった。
つまり、全部ではない。
彼は頷いた。
「分かった。今日は触れない」
何について言っているのか、彼女には通じた。
もう一度頭を下げる。
「はい」
ただし、その会話だけでは朝は終わらなかった。
君主も英雄も姫も、用を足さないのは物語の中だけだと判明した。
結局、聞く羽目になった。そしてバルコニーの第二用途が分かった。隅には比較的座りやすい便座と、下の〈影〉の裂け目へ直通する穴を備えた小部屋がある。リラによれば、下で「下位生命体」が処理するらしい。
何者かは聞かなかった。
この先にはすでに、彼の生理現象や疑念などではなく、戴冠式を待つ魔族だらけの宮殿があるのだから。
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戴冠式は、人間の意味での「戴冠」ではなかった。
まず冠がない。おそらくそのほうがいい。角のある頭へどうやって冠を載せるか考えた案は、どれもひどく間抜けにしか見えなかった。
朝食と着替えのあと、彼は五影の大広間へ案内された。赤と銀の筋が走る黒石の巨大な円蓋。その壁には歴代君主の像が並び、どれも生きた者の四倍ほどある。ほとんど高貴に見えるものもあれば、称号と建築的な不死を与えられた悪夢そのものもあった。
中央に玉座がある。
ただの椅子ではない。
まさに玉座だった。
一塊の黒石から削り出されているのに、その内部では〈影〉が動いている。肘掛けは獣の頭を思わせ、背は鋭い線を描いて高く伸び、その後ろには石の翼の輪郭が開いていた。これに座って芝居がかった悪役に見えないようにするのは、ほとんど不可能だろう。
入口にいたマルヴェインが、少し満足そうに彼を見る。
「よくお似合いです」
フョードルは自分を見下ろした。
腹立たしいが、確かに悪くない。翼のため背中を開けた厚い暗色の布。喉元の銀の留め具。幅広い帯。余計な鎖を省きつつ肩の線を重く見せる長い外套。腰には儀礼用の剣。かなりの重さがある。実戦で使う勇気はまだないが、象徴としては十分だった。
「“威厳があります”とか言ったら、税金を手計算させるぞ」
マルヴェインは頭を下げた。
「“適切です”と申し上げるつもりでした」
「逃げたな」
「それが仕事です」
通路の左にはアズガル。完全武装。巨大で静かで説得力がありすぎて、その隣では暗殺を考えること自体が無作法に思える。
少し離れた場所にはシアナ。薄板と二人の助手を従えている。厳かな顔をしている一方で、今にも彼の脈、オーラ、回路圧、それに式典が回復計画へ与える影響を測りたそうだった。
リラは彼の右へ立つ。
後ろではない。
彼は気づいた。
彼女も気づいた。
「準備は?」
「できてない」
「結構です」
「結構?」
「戴冠に完全な準備ができている者は、嘘つきか死人だけです」
「今日は哲学者だな」
「朝から考えることがありましたので」
意味は分かったが、彼は答えなかった。
そして式が始まった。
最初は承認の環。
彼は玉座の前へ立つ。リラが古い定型句を読み上げた。長すぎはしない。それでも一語一語が重く、何世紀もの時間を吸っている。アズガルは影軍を代表して承認した。マルヴェインは国内諸家と諸契約を代表して。シアナは国庫、公文書庫、研究部門を代表して。初めて見る何人かの上位魔族が、城塞、血統、法、国境要塞、それから彼にはよく分からないが式典に代表者を送り込みたくて仕方のなかったらしい抽象概念を二、三個代表して承認した。
次に、玉座へ手を置く。
石が応えた。
〈影〉で。
指を這い上がり、手首へ絡み、《刻印》の線へ入り込む。一瞬、像が視界を焼いた。歴代の君主。戦争。契約。雪の上の血。魔族の都市。燃える神殿。死んだ森。黒い月の下の海。憎悪と恐怖に満ちた〈光〉の人間たちの目。
彼は手を動かさなかった。
〈影〉が試している。
この世界では、どんな権力もまず「自分の重みに耐えられるか」を確かめたがるらしい。
彼は耐えた。
掌の下で玉座が温かくなり、石の筋が淡く光った。
リラが宣言する。
「玉座が承認しました」
広間を低い響きが渡った。
歓声ではない。拍手でもない。どうやら魔族は承認の表現にも独特の作法があるらしい。手を叩かず、歓喜せず、花も投げない。ただ頭を垂れる。その承認だけで空気そのものが重くなる。
それから彼は玉座へ座った。
ここではケイルの身体が助けてくれた。家具を壊すのを恐れている人間に見えず、こういうものへ座る方法を肉体が知っている。
翼は正しい位置へ。尾は横の窪みへ。手は肘掛け。視線は下ではなく前。
広間全体が頭を垂れる。
「影の君主」アズガルが言った。
「影の君主」数百の声が繰り返す。
それで終わりだった。
音楽もない。
天から光も差さない。
黒い石、頭を垂れた者たち、そして今や「やっぱりやめる」という選択がさらに何段階も難しくなったという理解だけ。
彼は玉座の右側に立つリラへ身を寄せた。
「今のが短い部分?」
彼女がごく小さく頷く。
「はい」
「悪い知らせだ」
「これから廷臣の紹介が始まります」
「何人?」
「全員ですか?」
「違う、リラ。今日俺を苦しめる人数」
「百七十四名です」
彼は目を閉じた。
そして開く。
「歴代君主の像があんなに怒って見える理由、分かってきた」
「式典以前から怒っていた方もいます」
「じゃあ式典が才能を開花させただけか」
彼女は答えなかった。
ただ、オーラの中で笑みに似た何かが揺れた。
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廷臣の紹介は、なぜか拷問とは見なされていない拷問だった。
魔族たちは一人ずつ、あるいは二人連れや小さな一団で進み出た。頭を下げ、名と家門、役職、血統の古さ、功績、負っている義務を述べる。ケイル・ノルとの古い縁をさりげなく匂わせる者もいれば、そんな名の者は初めから存在しなかったかのように振る舞う者もいた。
傍らのマルヴェインが、ほとんど聞き取れない声で補足する。
「この者は危険ですが、臆病です」
「彼女は笑顔を浮かべているあいだ、息子にあなたへ対抗する同盟を探させます」
「彼とは物資供給の話はできます。忠誠の話はお勧めしません」
「この者は、自分がこの広間で最も賢いと思っています。間違いではありますが、大きくは外していません」
「彼女を公の場で侮辱してはいけません。孫娘たちの婚姻を通じて三つの小貴族家を支配しています」
「この家には国庫への負債があり、担保の代わりに厚かましさがあります」
フョードルは耳を傾けた。
可能なかぎり記憶した。
そして、生きた野心の行列ではなく、まともな一覧が欲しいという思いをますます強くした。
リラは記録を取り、ときには次の廷臣が口を開くより先に名を教えた。少し離れたシアナは、多額の滞納を抱えた者が現れるたび、いかにも痛そうに顔をしかめた。アズガルは黙っていたが、その沈黙はどんな言葉よりもよく圧力をかけていた。
昼食までに分かったことがある。廷臣の半分は死ぬまで彼に仕えたい。残りの半分も死ぬまで仕えたい――ただし死ぬのは自分ではなく、彼のほうだ。そして、ほぼ全員が自分を不可欠だと思っている。
ようやく最後の廷臣が頭を下げ、退いた。
リラが薄板を閉じる。
「主要な部分は終了しました」
彼はゆっくりと彼女へ顔を向けた。
「主要な部分」
「はい。あとは形式的な手続きが二、三あるだけです」
「影の君主の人生には、こういう部分がいくつある?」
「悪い日には、たくさんあります」
「もう悪い日が嫌いになった」
マルヴェインが近づいてきた。
「堂々としておられました」
「税務上の問題を起こさずに誰をバルコニーから放り出せるのか、分からなかったから耐えていただけだ」
シアナがすぐに口を挟んだ。
「何人かは可能です。ただし、計算を済ませてからのほうがよろしいかと」
彼は横目で彼女を見た。
シアナは、自分がそれを声に出したことに気づき、頬を赤くした。
「昼食だ。正確には形式的な手続きを終えて、それから昼食。至急」




