第8章
宮殿は、最初に案内されたときよりもずっと広かった。
黒の城塞には美しさがあった。重く、陰鬱で、人間の感覚からすれば古すぎる美しさ。それでも本物だった。黒石のアーチ。壁の中を赤い筋が走る回廊。底で生きた影が渦巻く裂け目に架かる内橋。足音がどこまでも遠ざかり、宮殿が壁で終わらず地下へ、歴代の君主たちの記憶へ続いているように感じられる大広間。
問題は別にあった。
廊下の一本一本に意味がある。扉の一枚一枚が権限を意味する。階段はただ上下へ続くのではなく、誰かの権力へ通じている。そしてそれを全部覚えなければならない。
リラは彼に私的区画、隠し通路、執務室の第二出口、謁見広間を観察するための小回廊、前の君主が人目につかせたくない相手だけを呼んだ古い会議室を見せた。それから閉鎖式の浴室、居室内の武器棚、私設図書室、寝室、そして外ではなく内部亀裂の虚空へ張り出した奇妙に高いバルコニー。
彼はそこに長く立ち、下を見つめた。
バルコニーの下で〈影〉が、水のない海のようにゆっくり動いている。
「ここから飛び降りた奴もいる?」
リラは右側に立っていた。後ろではない。
もう新しい位置に慣れたのか。あるいは、慣れたふりをしたのか。
「はい」
「自殺?」
「時々は。殺人のほうが多いです」
「便利な宮殿だな」
「とても」
彼は歪んだ笑いを抑えきれなかった。
背中の翼が小さく震える。新しい筋肉はいまだに、彼が意識するより早く思考へ反応した。
夕食の後、ようやく生き返った気がした。
融合の震えは止まり、飢えも引いた。痛みは背景へ退いた。内側では依然として力が唸っていたが、もう暴走寸前というほどではない。シアナはすでに「短い注意事項」を三頁、「本当にごく短い補足説明」を七頁、それに大きな文字で別紙まで残していた。**荷重アーチのある室内で翼を急に広げないこと。**
彼は一瞬、感心しかけた。
そして置いた。
今は読む気になれなかった。
二人が私室へ戻ったのは遅い時刻だった。
使用人たちは食器を片づけ、水、酒、温かい布、新しい衣服を置くとすぐに消えた。護衛は外扉の向こうに残った。室内が静かになる。
新しい権力の最初の夜にしては、静かすぎた。
リラは薄板の並ぶ卓のそばに立ち、最後の報告を確認していた。横顔は静かで、手は正確、肩はまっすぐ。秘書。顧問。そしてたった一日で、宮殿、法律、死体、債務、恐怖、さらには彼自身の新しい身体まで案内する役になった女。
彼は彼女を見ていた。
評議会で見たときとは違う。
あのときは、視線が勝手に露骨になった。新しい身体の力、オーラを見る視覚、疲労、右側に立つ彼女の近さ。今は意識して見ている。
リラは「柔らかい」と呼べる女ではなかった。哀れだから守ってやりたいと思うような女でもない。銀白の髪、冷たい淡灰色の肌、暗い角、細い顔立ち、注意深い目、薄板の上に浮く黒い爪。すべてが整い、計算され、危険だった。それでも、その整然さの下に空虚さはない。むしろ逆だ。身体に沿う服は、くびれた腰、重みのある胸、腰の曲線、しなやかに強い背中をあまりにもはっきり示している。深い切れ込みは無意味な飾りでも宮廷的な下品さでもない。動きやすさを与えながら、この女が表情ひとつ変えず武器にも薬にも毒にも誘惑にもなれることを思い出させるためのものだった。
黄色の差し色が入った黒い布、紫の裏地、袖口の橙色の刺繍。本来なら挑発的に見えるはずの組み合わせが、彼女に着せるとそうならない。むしろ警告色だった。結果を受け入れる覚悟がないなら手を伸ばすべきではない生き物の、鮮やかな色。
彼は、自分が顔だけを見ていないことに気づいた。
首筋。薄板へ少しかがんだとき、胸の上で布が張る様子。形は分かるが余計なものは見えない、ぎりぎりの高さまで露出した腿。静かに、ほとんど怠そうに横たわる尾――本人はもう言葉なしで全部理解しているのに。
彼女のオーラがまた揺れた。
薄板はまだ手の中にあった。やがてリラはゆっくりそれを卓へ置く。
「君主様?」
声は平坦だった。
頬には赤みが上がっている。
彼は近づいた。
今は身長も、身体の大きさも、翼も、尾も、肩の背後の〈影〉も、以前とは違う働きをする。前の人生で、彼は普通の男として空間を占めることに慣れていた。ここでは、存在するだけで部屋を圧迫する。空気を。彼女を。
彼女がそれを感じているのが分かった。
それでも下がらない。
どこまでが職務で、どこからが欲望なのか知りたくなった。奉仕がいつ受容へ変わり、受容がいつ個人の選択へ変わるのか。だが今、その問いはあまりに人間的で、あまりに丁寧だった。まだ受容の魔法陣の熱が残るこの身体には似合わない。
彼は聞かなかった。
意図的に。
考えるのは後だ。もしかしたら、話すのも。ここで同意、権力、義務、欲望、恐怖がどう区別されているのか整理するのも後。
今は境界を試していた。
自分の権力。彼女の忠誠。そして、自分が命じ、一言で世界が変わるのを見る能力の境界を。
「跪け」
リラは即座に膝をついた。
一瞬の間もない。
奴隷のようでも、怯えた侍女のようでもない。命令を理解し、その言葉通りの形で受け入れた魔族の女として。
予想以上に神経へ響いた。
言えば、実行される。
ただそれだけの能力。
命令。
そして彼女が膝をついている。
彼は爪のある手を後頭部へ置いた。
慎重さは意識して保たなければならなかった。新しい力は、ただ圧をかけたいだけの場所で簡単に暴力へ変わる。リラは下から彼を見上げる。その目には羞恥があり、緊張があり、オーラの中で見えていた、まだうまく名前を付けられない隠れた熱があった。
そして期待も。
彼は彼女を自分へ導いた。
「口で」
彼女は従った。
最初の接触は、対比が強すぎて現実感がなかった。自分の新しい身体、新しい大きさ。彼女の唇。腿へ置かれた手。肌に触れる黒い爪。彼は上から、彼女が最初は慎重に、それから可能な限り深く彼を受け入れていくのを見た。優しく合わせてやることはしなかった。彼女に合わせもしない。意外なほど掴みやすく、手の中で滑らかで温かい角を持ち、リズムを自分で決めた。
残酷ではない。
だが厳しく。
今は説得されているのではなく、導かれているのだと彼女に分からせる程度に。
何度か呼吸が乱れた。目に涙が浮かぶ。腿を掴む指に力が入る。彼は快適と言えるより少し長く彼女を自分へ留め、喉が反射的に拒み始めるところで解放し、また引き寄せた。
権力の感覚は奇妙だった。
空間そのものを試しているようだった。他者の身体へ、自分の欲望の延長になれと命令できるのか。言葉より先に身体が応えるほど強く命じられるのか。そして命じられた者が壊れず、ただ遂行しているなら、その危険はどこにあるのか。
ようやく離れることを許され、リラは咳き込んだ。
唇を濡れた筋が伝う。呼吸は荒い。それでも視線は逸らさない。
彼にはオーラが見えた。
銀色の層はもう完全な平静を保っていない。その内側を温かく暗い動きが走っていた。恥じらい、飢え、自分自身への苛立ちまで混ざっている。
どうでもいいわけではない。
嫌がっているわけでもない。
今の彼にはそれで足りた。
後では、それだけでは足りなくなると分かっていたけれど。
「立て」
彼女が立つ。
「後ろを向け」
向いた。
「ベッドへ。四つん這い」
リラは従った。
笑みや事務的な台詞で状況を和らげようとはしなかった。
ベッドは巨大だった。それでも今は、新しい彼の身体には小さくさえ見える。リラは膝と手をつき、翼を畳み、尾を横へ避けている。衣服はすでにほどかれ、ずらされ、彼の焦った手で一部は乱されていた。彼女が恥ずかしがっているのは裸ではない。彼には分かった。
こんなふうに、単純に、直接的に、話し合いもなく姿勢を取らされたこと。
そして同じことが、彼女を興奮させてもいた。
布と役職を外すと、彼女は違って見えた。服が厳格な輪郭へまとめていた腰は生きて動き、胸の重みと丸い腰がその細さを強調している。淡い肌の下で力が動く。背中、腹、腿の筋肉が、姿勢を保つたび滑らかに正確に働く。その身体は無害な美しさのために作られてはいなかった。女らしすぎ、危険すぎ、応え、耐える準備ができすぎていて、ただの飾りを装えない。
銀白の髪が前へ落ち、首筋と肩の線が露わになる。黒い爪が寝具へ食い込む。翼は完全には開かず、細かく震えた。横へ退けた尾も緊張を隠せていない。四つん這いにされ、彼へ身体を開いていても、リラは単純な存在にはならなかった。同じ内側の刃が残っている。
ただ、今はその刃が内側から燃えていた。
彼は後ろへ回った。
手を腿へ置く。大きすぎる手。異物であり、同時にもう自分のものでもある。指の下の彼女の身体は強く、魔族らしく、以前の世界の普通の女なら耐えられないものに耐えられそうだった。普通の人間なら、この大きさは怪我をさせる。比喩ではなく、単純な物理として。長さ、太さ、重さ、力――すべてが変わった。
彼はそれを、ほとんど冷静に確認した。
三十センチほど。
恐ろしく、それでも退かない考えが浮かぶ。自分が今や影の君主だというなら、この身体、この権力、この欲望の限界をなぜ確かめない?
「指で開け」彼は言った。「もっと」
リラが震えた。
そして従う。
指を腿の間へ伸ばし、彼のために自分を開いた。羞恥で赤みが首と肩まで降りている。翼が細かく震える。彼女は顔を伏せ、髪が前へこぼれた。
彼は再び角を掴んだ。
髪より掴みやすい。確かで、新しい身体とこの世界にはむしろ自然だった。根元へ指をかけられた瞬間、リラは鋭く息を吸ったが逃げない。逆にオーラの奥で何かが、さらに深く、熱く、ほとんど怒ったように燃え上がった。
すぐには入れなかった。熱く締まった抵抗へ押し当て、圧をかけ、広げる。リラが急に息を吸い、指が寝具へ食い込んだ。彼が止まったのは一瞬だけだった。優しさのためではない。境界を感じ取るために。
次に、さらに強く押した。
先端が中へ入る。
リラが息を漏らした。「嫌」とは言わない。逃げもしない。ただ翼が手の幅ほど開き、尾が横へ跳ねた。
彼は角と腿を押さえた。
次の一押しはさらに深く、彼女の身体がまだ十分に伸びていないうちに半分ほどまで入った。リラは低く押し殺した声で呻いた。痛みと快感の境目にある声。彼女があまりに強く彼を締めつけるのが分かった。内側の抵抗が押し返そうとし、新しい肉体が与えられている以上の空間を要求している。
彼は柔らかくしなかった。
「もっとしっかり支えろ」
シーツを掴む手に力が入る。
彼は短く、広げるような動きを始めた。一度ごとに少しずつ深く押し込む。一気に最後まで乱暴に突くのではなく、身体が徐々に譲っていくまで執拗に広げる。きつい。熱い。ほとんど痛い。彼女は途切れ途切れに呼吸し、ときどき息を詰まらせ、ときどき寝具へ低く呻いた。
オーラが波のように崩れるのが見える。
恐怖ではない。
恐怖にしては興奮が多すぎた。職務上の服従の下へ隠された内側の同意が多すぎた。自分の身体がこれほど露骨に応えることへの羞恥も多すぎる。
それでも権力は確かにここにあった。
純粋な形で。
危険な形で。
角を押さえる手の中に。腿を掴む指に。命じられた姿勢を保つ彼女に。新しい身体がさらに深く入っていき、彼女がそれを受け入れることに。彼が命じたから。彼が君主だから。彼女自身も望んでいるから。この世界では、それらの理由がすでに危険なほど密接に絡み合っていた。
ようやく、ほとんど限界まで入った。
まだ全部ではない。
リラは震えていた。
彼は腿から手を離し、上へ滑らせ、翼へ触れる。彼女の翼は彼のものより小さく、薄く、優美だった。根元を強く握る。傷つけるほどではない。だが彼女が声を上げるには十分だった。鋭く奇妙な刺激が身体全体を貫いたのだ。
「もっと近くへ」
彼女は自分から腰を後ろへ寄せた。
その瞬間、彼は尾の付け根を掴み、鋭く自分へ引いた。
彼女の身体が後ろへ跳ね、彼へぶつかる。
根元まで入った。
リラが今度ははっきり叫んだ。声が部屋へ響き、〈影〉と彼の荒い呼吸と、ベッドの鈍い軋みへ混ざった。
彼は中で止まった。
彼女に感じさせるため。
自分にも感じるため。
彼女の身体は彼を痛いほどきつく包んでいる。筋肉が震える。手の中の尾も震えていた。リラは四つん這いのまま荒く息をし、身体を開き、奪われ、ひとつひとつの命令に従っていた。漠然とした「服従」ではなく、彼が口にした個々の命令すべてに。
彼は上から覆いかぶさった。
翼が半ば開き、彼女を影で包む。
「そうだ」
リラが漏らした音は返事というより、押し殺した承認に近かった。
それから彼はまた動き始めた。
最初はゆっくりと。魔族の彼女の身体でさえ時間が必要だったから。一度ごとにまた広げられ、大きさと重さ、内側へ密にかかる圧へ慣らされる。やがて動きは厳しくなる。尾を、翼を、角を持つ。愛撫のためではない。支点を変え、制御するために。
彼女は従った。腰を反らす。呼吸を乱す。刺激が鋭すぎると、ときどき前へ逃げようとした。それでも彼は片手で戻した。
言葉ではなく。
手で。
力で。
権力は抽象ではなかった。玉座や称号だけでもない。
今ここにある。強く、危険で、賢い魔族の女へ身体を開かせ、楽に受け入れられる以上のものを受け入れさせることができる。そのために質問さえしなくてもいいということ。彼女はそれを単なる職務のせいにはできなかった。身体が裏切っている。オーラが裏切っている。新しい視覚がなくても、濡れた途切れた声だけで十分だった。
それを自分がここまで好んでいることを、彼は好んでいいのか分からなかった。
だからこそ、止まらなかった。
境界を知る必要がある。
相手を壊す境界ではない――そこまでは行きたくない。
自分自身の境界を。
どこから他者の服従が、人や魔族や人格ではなく、ただ自分の力を証明するものへ変わるのか。
彼は強く動いた。
リラはもう声を抑えようとしなかった。呻きは低くなったり高くなったりし、ときには懇願に近い響きになる。それでも「止めて」という懇願ではなかった。弱めないで、最後まで連れていって、この境目へ置き去りにしないで、と求めるような声。痛みと欲望で身体が震え、彼にはその二つが彼女の中でほとんど分離できないほど絡んでいるのが分かった。
翼をさらに強く握る。
彼女が叫ぶ。
角を引き、顔を上げさせた。
「隠れるな」
彼女は従った。
横顔が見えた。赤い頬、濡れた唇、乱れた呼吸、半ば閉じた目。耐えがたいほどの羞恥と、同じくらい耐えがたい快感。
それは部下をただ利用している男に、あまりにも近かった。
それでも完全には同じではない。
なぜなら彼女は、ここに全部いたからだ。命令で消されたわけではない。むしろ優しくされていたなら自分には許せなかったほど、命令によって強く開かれている。彼女の欲望は彼の権力を消さない。彼の権力も彼女の欲望を消さない。
二つが危険なほど近く、ほとんど同じ一点へ重なっているだけだった。
その理解は意識の端にあった。
中心にあるのは彼女の身体、自分の力、内側の圧力、ようやく完全に彼を受け入れるようになった締めつけ。最後の動きはもう根元まで届く。深く、重く、彼女の身体がもう逃げられず、ただ応えるように彼を締めつける感覚を伴って。
リラが叫び、震えた。
身体が反り、翼は彼の手が許す限り広がり、指が布へ食い込んだ。痛みに近い声で呻き、オーラが銀と闇の波になって弾ける。
彼はその場に彼女を留めた。
自分の下で、その波を最後まで通り抜けさせた。
それから自分のものを取った。
鋭く、深く。すでに足りなかった慎重ささえ捨てて。身体は強く、ほとんど激しく応えた。彼は尾の付け根を掴んで彼女を自分へ引き寄せ、限界まで入り込み、そのまま達した。壁の〈影〉が揺れ、壁際の火鉢の炎まで高く跳ねたように見えた。
リラはすぐには力を失わなかった。
まず彼の周囲でまだ震え続けた。それからゆっくり肘を落とし、頭を伏せ、髪を散らし、荒い呼吸を繰り返す。彼は数回分の鼓動のあいだ、まだ中に留まっていた。彼女の熱、震え、自分の力、そして終わった後に残る奇妙な空白を感じながら。
後悔ではない。
むしろ地図へ印を付けた感覚。
境界のひとつは、ここにある。
彼が抜くと、解放に彼女は震えた。それでも離れようとはしない。
角から手を離した。
リラはすぐには起き上がれなかった。やがて踵の上へ座ると、動きはまだ不安定だった。完全に壊れた姿に見えない程度まで衣服を整える。頬にはまだ赤みがあり、目には、今から始めるつもりのない会話には多すぎるものが残っていた。
彼女も黙っていた。
それでいい。
後だ。
全部、後でいい。
彼は卓へ行き、水を注いで飲んだ。新しい身体は放出の後もまだ低く唸っている。力は表面から徐々に深く、魔力回路へ沈んでいった。部屋には〈影〉、汗、興奮、熱い石、そして彼女の匂いが混ざっていた。
リラが立つ。
不安定ではあるが、助けは借りない。
もう一度、秘書と顧問へ戻ろうとした。
ほとんど成功した。
「君主様」少し掠れた声で彼女が言った。
彼は振り返る。
彼女はベッドのそばに立ち、目を伏せてはいるが顔は隠していない。非難もない。頼みもない。いつもの事務的な平静もない。ただ、経験したものの痕跡だけが、まだ儀礼の下へしまわれずに残っていた。
「これは褒美ですか。それとも罰ですか?」
「間違えてみようとした。俺が考えた二択から、どっちだったかは自分で選べ」
「望まれるなら、女性を用意できます。お選びになれるように」
彼はしばらく彼女を見た。
それから言う。
「もう選んだ。異論は?」
肩がわずかに震えた。それでも目は上げない。
「ありません」
彼はもう少し黙った。
「ここで寝ろ」
短く。
説明もなく。
リラはゆっくり頷いた。
「はい、君主様」
どこへ寝ればいいかは聞かなかった。ただ残った。
彼が先に横になる。
ベッドは新しい身体を意外なほど快適に受け入れた。翼は専用に設けられた空間へ収まり、尾は横へ場所を見つけ、筋肉がようやく緊張を解き始める。リラはすぐには隣へ来なかった。見えない規則を確かめるように一度ためらい、それから端へ横になった。儀礼が求めるよりは近く、優しさの後ならあり得た距離よりは遠く。
優しさはなかった。
少なくとも今夜は、なかった。
彼は目を閉じた。
眠りへ落ちる前、頭に断片がまだ浮かんだ。槍。中庭。ケイル。魔法陣。地図。国庫。跪くリラ。自分の下のリラ。強く握れば簡単に握りすぎる、武器の柄のような権力。
やがて思考が落ちていった。
深く、静かに眠った。




