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影の君主  作者: Svolik
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第7章

評議会は長引いた。


最初、「全体報告」なら一時間で終わると思っていた。マルヴェインが自分の声に酔い、シアナが数字で全員を溺れさせようとすれば、二時間かもしれない。


三時間後、昔の世界は少なくとも、会議で異種族間戦争の可能性と税制崩壊と新しい魔族の身体の儀礼的正統性を同時に議論することは滅多になかったのだと気づいた。


四時間後、それでもまだ導入部にすぎないと知った。


以前の人生でも、状態の悪い部署を引き継いだことはある。危機管理担当が仕事をする様子も見てきた。


だが、これは桁が違った。


目の前には地図が広がっている。


一枚ではない。


〈影〉の地図。〈光〉との係争国境図。〈森〉との旧条約図。海路図――魔族は「中立」と呼び、マルヴェインは「両側から同じくらい礼儀正しく沈めてもらえる場所」と呼んでいる。


最後に国内諸家の地図。領地は色だけで区別されていない。義務、債務、婚姻、血の怨恨、昔の裏切りまで密度として塗り込まれている。


フョードルは長くそれを見た。


「これは地図じゃない」


ようやく言う。


「診断書だ」


マルヴェインが頭を下げた。


「国内政治の定義として、実に正確です」


リラは頼んだ通り、右側のほとんど隣に立っていた。首を捻らなければ見えないほど後ろではない。


薄い記録板を手に、地図の層、注記、各家の一覧、条約の抜粋を音もなく入れ替えていく。


アズガルは、椅子へ一本の刃を打ち込んだように真っ直ぐ座っていた。前にある軍事地図が、一番分かりやすい。


駐屯地。街道。砦。峡谷。補給線。〈光〉の神殿。既知の転移節点。失われた前哨地。


シアナは紙と記録板と記憶結晶で、机の半分近くを占領している。


最初は資料量を謝っていた。そのうち謝らなくなった。その次には仕事へ完全に沈み込み、早口になりすぎて、リラが一度だけ書類の端へそっと手を置いた。


「ゆっくり」


「はい。すみません」


フョードルは地図の縁を爪でなぞった。


爪が、机の石材部分に細い傷を残す。


少し気まずくなった。


「まだ慣れないな」


シアナが即座に顔を上げた。


「正常です。爪を使った微細運動への適応には通常三日から二週間ほど必要で、元の形態、融合強度、残存身体記憶の程度、それから――」


彼の視線に気づいて黙った。


「短く」


「慣れます」


「ありがとう」


マルヴェインが笑った。


「素晴らしい報告様式です。全員に導入しましょう」


「今夜を生き延びる唯一の希望をからかうな」


「仰せのままに」


フョードルは地図へ戻った。


「つまり、〈光〉との国境はここ、ここ、それからここが沈んでる」


アズガルが頷く。


「はい。この二十七年間で、人間側は小砦を八つ、峠を三つ前進させました。表向きには布教団、通商条約、入植者保護、聖なる遠征、小貴族家からの土地買収によって」


「実際は?」


「圧力です。ゆっくり、巧妙に。剣で取れない場所には神殿を建てる。神殿が無理なら穀物を与える。穀物で無理なら後継者を買う。買えないなら罪を探す」


マルヴェインが穏やかに付け加えた。


「罪がなければ、できるよう手伝います」


「人間だな」


フョードルは言った。


「同類の匂いがする」


リラが少し顔を向ける。


「あなたの世界も同じなのですか?」


「俺の世界には魔法障壁付きの〈光〉の神殿はない。それ以外の手口は驚くほど見覚えがある」


アズガルが続けた。


「影軍は主要な防衛線を維持しています。ですが小貴族家は疲弊している。内紛が予備を食い潰し、傭兵の価格は上昇。武器庫は更新が必要です。南部駐屯隊は三分の一が欠員」


「なぜ?」


シアナが小さく咳払いした。


全員が彼女を見る。


彼女は書類へ視線を落とした。


「国庫です」


その一語は、多くの軍事的脅威より重く机へ落ちた。


フョードルは椅子へ背を預けた。尾が苛立たしげに横で動き、机の脚へ当たったが、今回は何も壊さなかった。


「聞こう」


シアナが息を吸う。


「国庫の状態は、悪いです」


「どのくらい?」


彼女はリラを見た。


リラが言う。


「率直に」


シアナはごく小さく頷いた。


「法的に君主権へ属さない古い家々の不可侵備蓄を除くと、現在自由に使える国庫資金で、城塞、中央軍、国境上の義務にかかる通常支出を賄えるのは約五か月です。儀礼費を削減し、建設の一部を凍結し、二次的駐屯地への支払いを先送りすれば八か月」


アズガルが眉を寄せる。


「駐屯隊への支払い延期は認められない」


「分かっています」


シアナは急いで言った。


「ですから極端な場合の算定であって、提案ではありません」


「戦争になったら?」


シアナはすぐには答えなかった。


「全面戦争、ですか? 全方位で?」


「まず小規模から」


「三か月。〈光〉が中立都市経由の通商路を封鎖すれば、それ以下の可能性も」


マルヴェインが指を組む。


「封鎖します」


「では、それ以下です」


シアナは静かに受け入れた。


フョードルは顔を手で撫でる。


新しい皮膚。新しい骨。新しい牙。


まだ奇妙だ。


それでも疲れだけは昔と同じだった。ひどく人間的な疲れだ。


「どうやってここまで来たのか説明してくれ」


シアナは少し姿勢を正した。


羞恥はまた消えた。専門家が残る。


「長期化した低強度紛争。国境貿易収入の低下。大貴族家への税制優遇が多すぎたこと。小貴族家に支給した軍事補助金が駐屯地ではなく内紛へ使われたこと。鍛冶氏族との旧式契約。補給債務の増加。それから……」


言葉を切る。


「それから?」


代わりにマルヴェインが答えた。


「先代の君主は、金と優遇と、期限通り払わなくてもよい権利で全員の忠誠を繋ぎ止めようとしていました」


「国内の平和を買ってたわけだ」


「はい」


「そして金が尽きたら、君主も終わった」


マルヴェインの笑みから楽しさが消える。


「これで、治世の末期がお分かりになったでしょう」


リラが付け加えた。


「公式には、先代君主は西部国境での軍事的失敗と、諸家評議会の分裂を受けて失脚しました」


フョードルはシアナを見る。


「実際は?」


彼女はゆっくり言った。


「今、君主様がおっしゃった通りです。国庫が、彼を君主でいさせられなくなった」


机を囲む沈黙の質が変わった。


フョードルは理解した。


全部ではない。


だが核心は。


先代は強かったのかもしれない。古く、危険で、正統だったのかもしれない。


だが軍に補給が届かず、諸家に利益がなく、国境へ増援が来ず、玉座が時間を買えなくなれば、強さは伝説に変わる。


伝説なら子供を脅せる。


国家の腹は満たせない。


「つまり、剣だけで倒されたわけじゃない」


フョードルは言った。


「会計でとどめを刺された」


シアナが痛そうに顔をしかめた。


「粗い表現ですが……」


「正確?」


彼女はため息をつく。


「はい」


マルヴェインが柔らかな皮肉を込めて彼女を見る。


「ほら、シアナ。乱暴な言い方でも報告書三本分を節約することがあります」


「精度を壊すこともあります」


「聞く側は救われます」


フョードルが手を上げた。


「財政破綻の文体についての議論はあとだ。今は税」


シアナが素早く記録板を替える。


表が展開された。


美しい表だった。


巨大な死んだ獣の骨格を、美しいと言える意味で。


各家の名。公式税率。実収入。免除。猶予。債務。軍役義務。補償。現物納入。係争中の支払い。


そして、一目で気に入った独立欄がある。


『政治的徴収可能性』。


「いい欄だ」


シアナが目に見えて元気になった。


「はい。帳簿上の債務は、反乱、妨害、諸家間の司法紛争を起こさず実際に徴収する可能性がなければ、意味がない場合が多いので」


「俺たちはそういうのを『紙の売掛金』って呼んでた」


「何ですか?」


「あとで。続けて」


彼女がいくつかの大貴族家を指した。


「ラハト家はほぼ全額納めています。アズガルの家です」


アズガルが言う。


「私の家が義務を逃れれば、軍は秩序を要求できません」


マルヴェインが穏やかに口を挟んだ。


「美しい原則です。残念ながら、もともと規律のある者にしか感染しませんが」


シアナが続ける。


「ソル家は支払いが不定期です。ただし政治網、諜報活動、条約業務で補っています」


フョードルはマルヴェインを見る。


「君の家?」


マルヴェインは胸へ手を当てた。


「私どもは複雑な形の有用性を好みます」


「つまり、計算しにくい物を選んで何でも払う」


「君主様。税務哲学への深いご理解に感服いたします」


「あとで話そう」


マルヴェインは笑った。


「恐れながらお待ちします」


シアナはさらに三家を示した。


「この大貴族家には古い免除特権があります。一部は法的に有効。一部は解釈に争いがあり、一部はとうに廃止すべきですが、先代君主は踏み切れませんでした」


「なぜ?」


リラが答える。


「どの家も、一方面の補給を遮断する、小貴族家を動かす、条約を破綻させる、あるいは別の王位候補を支持するだけの力を持っていたからです」


「今は?」


マルヴェインが言う。


「今は笑顔で頭を下げ、即位を祝い、あなたが玉座をどの程度しっかり握っているか測ろうとします」


「弱いと思われたら?」


「助けを申し出るでしょう」


「首輪と引き換えに」


「普通は同盟と呼びます」


フョードルは鼻で笑った。


「俺の世界でもな」


シアナは全体数字へ移った。


〈影〉の税率は高い。それでも収入は、予想より低かった。


魔族が自由を愛しているからではない。


中央権力が何年も、免除、優遇、猶予、自主徴税権をばら撒いてきたからだ。地方の家々は多く集める。玉座には少ししか届かない。軍は約束を食って生きていた。研究はシアナの才覚、古い備蓄、個人的な取り決めで辛うじて維持されている。


「よくこれ全部を持たせてたな?」


フョードルが尋ねる。


シアナが瞬く。


「何を、でしょう?」


「財務、研究、適合判定、国庫、研究施設。これだけ金に穴が開いてる状態で」


彼女は戸惑った。


「ええと……再配分、支払い猶予、内部融資、優先度の低い計画の削減、隠し準備金、いくつかの供給業者との個別交渉、材料価格の見直し、三部門の一時統合……」


マルヴェインが静かに言う。


「それと奇跡です」


「奇跡は会計項目ではありません」


シアナが反論した。


「ですが、あなたは定期的に利用している」


彼女が真っ赤になる。


フョードルはリラを見る。


「この子の予算を増やせ」


シアナの顔から血の気が引いた。


「今は自由資金がありません」


「今すぐとは言ってない。増やせと言った。どこから出すかは探す」


マルヴェインが首を傾ける。


「君主様。まだ私の諸家報告をお聞きではありません。聞いた後は、予算を増やしたい相手がシアナではなく処刑人になるかもしれませんよ」


「なら始めろ」


マルヴェインが立つ。


地図は広げなかった。


薄い記録板を机へ置くと、その上に名前の網が浮かび上がる。


家。分家。同盟。遺恨。隠れた繋がり。


赤い線。銀の線。ほとんど見えない黒い線。


「簡潔に言えば」


彼は言った。


「現在、皆があなたを愛しています」


フョードルは図を見て、それからマルヴェインを見る。


マルヴェインは笑った。


「悪い知らせです。全員が新しい君主をあまりに早く愛し始めた時は、まだ誰も、どう利用するのが一番いいか決めていないということです」


「いい知らせは?」


「あなたがケイル・ノルの身体を選んだこと。おかげで、こちらの賢いつもりの連中の半分は人生が急に難しくなりました」


「なぜ?」


「最初、彼らは人間を想定していました。負傷し、混乱し、魔力は弱く、通訳と護衛と身体の提供に依存する人間を。その次は魔族の身体に入った人間。ただし、できれば犯罪者か、背景の分かりやすい志願者の身体であってほしいと」


マルヴェインは薄く笑う。


「ところが実際に現れたのは、先代君主の元大臣の身体に入ったあなたです。巨大な魔力、古い筋肉の記憶、そして誰かが簡単に所有物にできる人物ではなかったという評判まで付いている」


リラが補足した。


「ケイルを選んだことは、多くの者を同時に怯えさせ、苛立たせ、慎重にさせています」


「便利そうだ」


「はい」


彼女は言う。


「そして危険です」


マルヴェインが頷いた。


「ノル家は政治的にはほぼ壊滅しています。しかし昔の同盟者は生きている。今の彼らには分かりません。あなたをケイルの影響力の帰還と見るべきか、ケイルの完全な消滅と見るべきか。それとも、古い借りを思い出させられる新権力と見るべきか」


「答えは?」


「三つとも使われます。あなたが二つを十分説得力のある方法で禁じるまでは」


フョードルは頷いた。


「続けろ」


マルヴェインは長く話した。


首都と官庁を握る〈影〉内部の家々。


戦い疲れた国境諸家。


玉座が罰する力を持つ時だけ玉座を認める、古い公家の血筋。


敗北と屈辱の中で育ち、今すぐ〈光〉との戦争を望む若い急進派。


道さえ開いていれば誰が君主でも構わない商家。


すでに何かを送ってきた者。


沈黙している者。


沈黙より危険な祝辞を送ってきた者。


フョードルは聞いた。


時々質問し、時々、政治的な美辞麗句を普通の言葉へ訳せと要求した。


時にはマルヴェインが自分から訳した。


「『慎重な喜びを表明』とは?」


「怯えていて、金が欲しい」


「『権力移行を支援する用意がある』?」


「役職が欲しい」


「『古来の権利の維持を強く求める』?」


「税金を払いたくない」


「『軍事支援を申し出る』?」


「自分たちの兵を首都へ入れたい」


「『早期の謁見を希望する』?」


「まだあなたを甘いと思っています」


「俺は甘い?」


マルヴェインは彼の翼、爪、机の傷を見た。


「今や哲学上の問題ですね」


シアナが小声で言った。


「組織密度で言えば、確実に違います」


フョードルが彼女を見る。


口に出したことに気づいたシアナは、書類へ顔を埋めた。


マルヴェインがほとんど優しげに笑う。


「だからこそ、私たちは彼女を高く評価しているのです」


アズガルの報告は短かった。


だからといって軽いわけではない。


影軍は強い。だが薄く引き伸ばされていた。優れた指揮官はいるものの、一部は各家への忠誠に縛られている。中央軍はアズガルに忠実で、そのアズガルを通じて玉座に忠実だ。


ただし、新しい君主は早急に兵の前へ姿を見せる必要がある。


行進式ではない。行進式を好むのは都市だ。


軍が見たいのは、自分たちが仕える者が、補給と血と命令の代価を理解しているかどうかだ。


「軍の前で話す必要がある?」


「はい」


アズガルが答えた。


「いつ?」


「近いうちに」


「どのくらい近い?」


「各家が、あなたの代わりに兵へ話しかけ始める前です」


「分かった」


アズガルが脅威図を示した。


「〈光〉がただちに全面攻勢へ出ることはありません。向こうは、あなたに何が起きたのか知らない。君主が現れたことも知らない。四人組は戻らず、転移門も失われた。ただし聖騎士団が、部隊が壊滅または捕縛されたと理解すれば、偵察、現地協力者との接触、そして我々の反応を見るため国境節点への攻撃が続く可能性があります」


「時間は?」


「三日から二週間」


「素晴らしく幅が広いな」


「世界間と神殿間の連絡がどれほど速いかによります。我々も全てを知っているわけではありません」


「捕虜なら知ってるかもしれない」


「はい」


フョードルは爪で机を軽く叩いた。


また傷が一本増えたところで止めた。


「尋問はあとだ。治療しろ。俺の命令なしに拷問はするな」


アズガルが真正面から見る。


「魔術師も?」


「特に魔術師だ。生きられる可能性があると分かれば、最初に喋り始める」


マルヴェインが気だるげに言う。


「拷問の方が、口を早くすることもあります」


「情報源を壊して、拷問する側が聞きたいことだけを作らせることもある。今日はもう、問題に鉄を突っ込んで解決と呼ぶ連中にはうんざりしてる」


部屋が静かになった。


アズガルが頷く。


「命令は理解しました」


リラが記録した。


軍の次は、身体の話へ戻った。


シアナが専用の記録板を彼の前へ置く。


図が描かれている。


彼自身の図だ。


角。翼。尾。新しい回路。心臓。《刻印》の暗線。背骨と胸に沿って並ぶ奇妙な節点。


「これ、俺?」


「暫定図です」


シアナが答える。


「完全な図を作るには数日の測定が必要ですが、主要部分はもう分かっています」


「で?」


彼女はリラを見た。


リラが短く頷く。


シアナは深く息を吸った。


「ものすごく、お強いです」


フョードルは待った。


「それは床が割れた時点で分かった」


「いえ。単純な身体能力だけではありません。ケイル・ノルの身体は、候補者の中でも最上位級の魔力を持っていました。《刻印》がなくても、〈影〉の魔族では最上層に入ります。あなたとの融合と、真なる《刻印》の反応によって回路がさらに拡張されました。その上、人間だったあなたの意思が中核になり、《刻印》はあなたを抑圧せず、新しい形へ組み込まれています」


「訳して」


シアナが慎重に言った。


「……めちゃくちゃ強いです。しかも、扱い方を知りません」


沈黙。


マルヴェインがゆっくり彼女へ顔を向けた。


リラは目を伏せる。


アズガルは、評議会が始まって初めてはっきり瞬きをした。


フョードルはシアナを見る。


彼女は今すぐ死にたいと言わんばかりに真っ赤になった。ただし死亡は、本日すでに君主命令で取りやめられている。


「す、すみません」


彼女は囁いた。


「もっと、その……分かりやすい表現を、と思って……」


フョードルは笑い始めた。


最初は小さく。


次第に大きく。


新しい声のせいで、その笑いは低く、暗く、ほとんど危険な響きになった。壁際の火鉢の炎が揺れる。


シアナは、自分が失敗したのか成功したのか分からない顔で固まっていた。


「いや」


ようやくフョードルが言う。


「今ので完璧だ。短縮版にはそう書こう」


マルヴェインが口元を手で覆う。


「『君主の状態――めちゃくちゃ強い』。公文書庫は衝撃に耐えられますか?」


リラが乾いた声で答えた。


「もっと酷いものを耐えてきています」


シアナの顔はまだ熱い。


フョードルは手を振った。


「続けて。ここにいる連中と比べると、俺はどのくらい強い?」


シアナは素早く数字へ逃げ込んだ。


「純粋な身体能力では、アズガル・ラハトに劣ります。少なくとも今は。彼の肉体は戦闘という意味で成熟していて、適応も完全です。筋肉と骨格そのものが近接戦闘向けに特化しています。それに経験が桁違いです」


アズガルが言った。


「今、正面から戦えば私が勝つ」


「正直で助かる」


「ただし簡単ではありません」とシアナが付け加えた。「魔法を使うなら話は変わります」


アズガルが頷く。


「そうだ」


「魔力の潜在量では――」シアナは続けた。「あなたはアズガルを大きく上回ります。彼も強いですが、その魔法は戦闘規律と身体技術の中に組み込まれています。あなたの魔力回路は、より広く、深く、柔軟です。ケイル・ノルの時点ですでに異常なほど強力でした。そこへあなたの《刻印》が加わって……さらに、その……大きくなりました」


「また“めちゃくちゃ強い”?」


彼女は詰まった。


「……はい」


マルヴェインが小さく笑った。


「他は?」


シアナは卓上へ視線を落とした。


「それより下です」


マルヴェインが眉を上げる。


「実に簡潔だ」


「魔力の総量では、です。個別の分野なら、あなたを上回る者はいます。リラは精密干渉、速度、毒、隠匿印、儀礼魔法、文書防護。マルヴェインは網状術式、契約、追跡結縁、偽装、それから政治的な影響魔法。私は……」


彼女がまた止まった。


「君は?」


「私は戦闘員ではありません」


「それは聞いてない」


シアナは唾を飲み込んだ。


「魔法研究、魔力回路の安定化、国庫印、研究用魔法陣、それから大規模系統では強いです。でも直接的な出力では下です」


「分かった」


彼は椅子にもたれた。


そしてその晩初めて、ただ感じることを自分に許した。


力は確かにそこにあった。


表面ではない。もっと深い場所。薄い石の殻の下に眠る巨大で暗く静かな地下湖のようだった。触れれば応える。叩けば決壊する。扱い方を覚えなければ、自分も周囲もまとめて溺れさせる。


肉体ではアズガルのほうが強い。


それは理解できた。新しい身体そのものが知っている。アズガルは戦うための生き物だ。美しい決闘ではない。戦争のための存在だ。何も分からないまま近づくのは愚かだ。


だが魔法は――。


今や、まるで違う尺度で彼のものになっていた。


壁の中を走る線。防護の弱い節。卓に残る古い術式の痕跡。リラの周囲に幾重にも重なる慎重な防御。マルヴェインの隠された網。荒々しいほど活発なシアナの思考。アズガルを包む鉄のように密な輪郭。


そして不意に、視線がリラへ戻った。


彼女は右側、秘書としての定位置よりわずかに前に立ち、薄板を手にしている。髪はまとめられ、表情は静か。服は暗く厳格で、仕事に向き、そして今なら分かる――素早く人を殺すにも向いている。彼女のオーラは細く複雑だった。派手ではない。よく隠された刃のように凝縮されている。事務的な外面の下には疲労、緊張、意志、それにもうひとつ――抑え込まれた温かさが、ずっと深いところにしまわれていた。


彼は視線を留めた。


露骨すぎるほどに。


以前の身体なら、ただ男が女を見る視線だっただろう。だが今の身体、この力、オーラを見る目、魔族としての直接的な感覚を通すと、その視線には重さが生まれた。リラの筆が半秒止まったことで、彼自身にも分かった。


銀色のオーラが揺れる。


顔はほとんど動かない。


ほとんど。


それでも頬に、ゆっくりと濃い赤みが差した。


灰色の肌では、気をつけて見なければ分からないほどの色。


もちろんマルヴェインは気づいた。


シアナも気づいた。気づいてしまうだけの頭がある。そして直後、フョードルの尾の構造図を非常に熱心に調べているふりを始めた。


アズガルは、おそらく部屋の注意が移ったことだけを察し、即座に潜在的脅威として評価した。


フョードルはゆっくり笑った。


リラの手が薄板をさらに強く握る。


「君主様」彼女は恐ろしく平坦な声で言った。「次の報告事項は〈光〉の捕虜についてです」


「ああ。そうだったな」


それでも、すぐには目を逸らさなかった。


リラは真正面から彼の目を見る。


今度は秘書としてではない。


新しい君主が、自分にとって都合のいい以上のものを見ていると理解した魔族の女として。そして、それでも後ずさりたいとは思っていない女として。


やがて彼女のほうが薄板へ視線を落とした。


「〈光〉の捕虜です」今度は少し乾いた声だった。「暁環聖騎士団の女神官、上位叙任の剣士、転移術師。三名とも容体は安定しています。女神官は〈光〉側での裁判を要求。剣士は処刑を要求。術師は……おそらく話すつもりですが、保証を求めています」


「術師が一番賢い?」


マルヴェインが穏やかに挟む。


「あるいは、一番臆病か」


「臆病は交渉では役に立つ」


「全面的に同意します」


フョードルは指で卓を叩いた。


今度は爪ではなく、指の腹で慎重に。


「まず術師。次に女神官。剣士は後だ」


アズガルが尋ねた。


「理由は?」


「術師は生きたい。女神官は自分が正しいと思いたい。剣士は格好よく死にたい。この三人なら、自分の呼吸に値段があると理解してる奴から始めるべきだ」


マルヴェインが低く言った。


「本当に平凡な人生を送っていたのですか?」


「かなり平凡だった。人間はどこでも人間だ。耳の形と聖なる槍が違ってもな」


シアナが指を上げた。


「魔族の耳も、しばしば――」


「シアナ」


「はい。すみません」


彼は全員を見渡した。


疲労が波のように押し寄せていた。新しい肉体は以前よりずっとよく耐えている。だが頭のほうは、一日であまりに多くを経験しすぎた。襲撃。血。門。魔族。身体の選択。ケイルの死。融合。城塞。国庫。国境。政治。力。


「今日の総合報告はここまでだ」


リラがすぐに言った。


「緊急事項があと六件あります」


「どのくらい緊急?」


「一件は朝まで待てます。二件は明日の評議会まで。三件は今決めるのが望ましいです」


「じゃあ三件」


彼女は小さく頷いた。


「一つ目。諸家への初回謁見の正式時刻を告示する必要があります」


「明後日。明日は、自分がどこに落ちたのか把握したい」


マルヴェインが頷く。


「不満は出ます」


「結構。明後日、贈り物と一緒に持ってこさせろ」


「非常によろしいかと」


「二つ目は?」


リラが薄板を見る。


「融合の公的説明で、ケイル・ノルの名を明らかにするか決める必要があります」


「出す」


マルヴェインが即座に言った。


「彼の旧支持者に象徴を与えます」


「分かってる」


「敵にも」


「そっちも見たい」


リラが記録する。


「三つ目。新しい役職が正式承認されるまでの暫定随行班を指定する必要があります。最低限、私、アズガル、マルヴェイン、シアナ。別枠で専属護衛」


彼はアズガルを見る。


「候補は?」


「三人いる。グロムは身体的には最も信頼できるが、目立ちすぎる。残り二人はもっと静かだ。私が直接確認する」


「頼む。それと今後、リラは右。ほぼ横だ。後ろじゃない」


リラがまた半秒だけ固まった。


マルヴェインは笑いを隠すように横を向く。


「議事録に記載しますか?」


「書いたら扉の前の敷物に任命する」


「記載しません」


リラが乾いた声で言った。


「右側の位置、暫定措置として承知しました」


「よし」


彼は立ち上がった。


今度はほとんどぎこちなさもない。


翼は素直に畳まれ、尾が重心を支えた。身体は重く、強く、疲れていて、それでも生きていた。


全員も立つ。


フョードルは地図、債務、国境、諸家の名を見渡した。


「じゃあこうする。明朝は身体と魔法。次に捕虜の術師。その次が国庫。それから〈光〉の地図。その後で、何を最初に殴るか決めよう。敵か、借金か、自国の官僚制か」


シアナが小声で言った。


「借金は殴らないほうがいいです。再編したほうが……」


彼は彼女へ顔を向けた。


「ほら。もう役に立つ助言が出た」


シアナは赤くなったが、笑った。


ほんの少しだけ。


リラが薄板をまとめる。


「休息が必要です」


「ああ」


彼は彼女へ目を上げた。


今度は少し柔らかく。


それでも彼女は気づいた。


そしてまた、ほんのわずかに頬を染める。


「それと、もう一度食事を」シアナが付け加えた。リラを助けたのか自分を助けたのか、フョードルには分からなかった。「できれば夜中にも」


「最高だな。新しい世界、新しい身体、昔と同じ生活。仕事、飯、寝不足」


マルヴェインが一礼する。


「権力へようこそ、君主様」


フョードルは乾いた笑みを浮かべた。


「今のところ権力ってのは、馬鹿みたいに高価な大火事だな。そこへ空のバケツ持たされて責任者にされた気分だ」


リラが目を上げる。


「むしろ水源かと」


「この身体なら、溶岩かもしれない」


アズガルが言った。


「溶岩も敵は止める」


皆が解散し始めた。


マルヴェインが最初に出ていった。すでに明日の噂について三種類ほど筋書きを組んでいる顔だ。アズガルは一瞬残り、短く頷いて退出する。シアナは資料を集め、薄板を一枚落とし、尾で受け止め、真っ赤になってほとんど駆け足で逃げていった。


広間にはリラが残った。


そして彼。


彼女は右側に立っている。後ろではない。


彼が望んだ通りに。


「評議会が終わったなら、立ってなくてもいいだろ」


「私室へ戻られるまでは随行任務が続きます」


「儀礼?」


「それと安全保障です」


彼は頷いた。


それから静かに言う。


「見る場所さえ合ってれば、君は簡単に照れるな」


リラがゆっくり目を上げた。


赤みはすぐに戻ったが、声は平坦なままだった。


「新しい身体は、あなたに覚えさせるのが早すぎます」


「かもな」


彼女は黙った。


彼は扉へ一歩進む。


「行こう。影の君主が寝室まで歩くだけで、翼で廊下の半分を壊さない方法を教えてくれ」


リラは並んで歩き出した。


右側。


以前ほど後ろではない。


「そのためには」彼女は言った。「出入口では翼に少し力を入れて、より強く畳んでください」


「また指導?」


「ご自身で頼まれました」


「分かった。案内してくれ」


彼女は軽く頭を下げた。


「はい、君主様」


今度は、その呼び方も腹立たしくなかった。


ほとんど。

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