第60章
国境から届く知らせは不穏だった。
軍を起こし、戦争だと叫ぶほど急激なものではない。むしろ壁の向こうで響く、低く重い唸りに似ていた。何が動いているのかはまだ見えない。それでも、平穏が昨日終わったのでも、明日終わるのでもないことだけはわかる。距離と惰性と、相手側の準備不足によって保たれていた幻想にすぎなかったのだ。
マルヴェインはいつもの微笑みで朝の報告を持ってきたが、目は普段より注意深かった。
「ベラルの神殿が国境付近で説教を強めています。アルヴェルは、影の安定について探るため、南部の都市へ二人の交易仲介人を送りました。エストレンは今のところ、国内の役職再編に追われています。聖騎士団は小規模な偵察隊を動かしました」
「早いな」
「聖騎士団としては。国家としては違います」
マルヴェインは地図を広げた。
地図上の線は、ほとんど怠惰に見えるほどゆっくり動いていた。噂が本物の戦争へ変わるまでには、あまりにも多くの人間、街道、評議会、印章、野心、恐怖が挟まっている。
「国家には惰性があります」マルヴェインが言った。「たとえ今日、すべての王、評議会、神殿の会議が『新たな影の君主は問題だ』と考えて目を覚ましたとしても、時間は必要です。情報を集め、立場をすり合わせ、書状を用意し、貴族を説得し、倉庫を点検し、軍勢を数え直す。そして民衆が反発しないよう、新たな税を説明しなければなりません」
財務書類を前に座っていたシアナが、小さく言った。
「難しいです」
「何が?」と彼が尋ねる。
「民衆が反発しないように新税を説明することが」
マルヴェインは意地悪く微笑んだ。
「ほら、私たちにも共通の言葉がある」
「ありません」とシアナは即答した。
リラが記録の頁をめくった。
「数週間、あるいは一か月でも、国家が本格的に動くには短すぎます。しかし偵察、挑発、噂には十分です」
「聖騎士団か?」
マルヴェインに代わり、アズガルが答えた。
「昨夜、外縁線で密偵を一人捕らえた」
彼は目を上げた。
「もう?」
「ああ」
「生きているか?」
「生きている」
「賢いか?」
アズガルは少し黙った。
「十分ではない」
マルヴェインが曖昧に指を動かした。
「尋問のどちら側から見るかによりますね」
密偵の尋問は、彼抜きで行われた。
人間だった。高位の祭司でも、転移術師でも、輝く剣を持つ英雄でもない。下級の偵察員に近い。静かに歩く術を知り、祈祷の刻印を二つほど使える。弱い影を防ぐ護符、短刀、小さな毒の容器を持ち、「隊商とはぐれた交易助手」という単純すぎる身の上話を用意していた。
「ほとんど知らなかった?」
マルヴェインが頷いた。
「ごくわずかです。そして、それはおそらく事実でしょう。宮殿へ到達するのが任務ではありません。外縁領で噂を確かめ、行方不明の一行の痕跡を探し、捕虜が生きているかを調べ、合図を送り返すことになっていました」
「どんな合図だ?」
「三種類です。『一行は死亡』、『一行は捕虜』、『痕跡なし』。『影の君主本人が減税し、飛行を習っている』という第四の合図はありませんでした」
「準備不足だな」
「同感です」
リラが尋ねた。
「女祭司と術師について知っているのですか?」
「確証はありません」マルヴェインが答えた。「噂は聞いていますが、裏付けは得ていません」
「なら、与えない」
彼はマルヴェインを見た。
「どうする?」
「すぐには殺さないことです。小物すぎます。死んだ密偵が聖騎士団に伝えるのは、国境が人間を食うということだけです。生かしておけば、我々に、あるいは我々が望むなら彼らに、もっと多くを語らせられます」
「寝返らせる?」
「可能なら。慎重に選んだ恐怖を持たせて返す手もあります。あるいは、騒ぎと引き換えることも。まだ決めるには早いでしょう」
アズガルが言った。
「隔離しておく。術師と女祭司には近づけない」
「当然です」とリラ。
彼は頷いた。
「マルヴェインの創意工夫は抜きで尋問しろ」
マルヴェインは胸へ手を当てた。
「私の職業的誇りが傷つきます」
「その代わり、他人の手足が残る」
「それが利点とは限りません」
「今日は利点だ」
マルヴェインは頭を下げた。
「仰せのままに」
リラが報告書の上へ、もう一枚の板を置いた。
厚くはない。
だがマルヴェインはすぐ、それを見た。
シアナも。
アズガルは、すでに知っているようだった。
「ほかにも?」と彼が尋ねる。
「ヴァルン=ケルです」とリラ。
彼は姿勢を正した。
「カルネスか?」
アズガルが頷く。
「砦を占領した」
一瞬、部屋が静かになった。
誰も意味を理解できなかったからではない。
全員が、あまりにもよく理解したからだ。
つい先日まで、東部戦線で抜けかけた歯のようだと語っていた地図上の小さな点が、今は以前より安定した光を放っている。明るくも、勝利の炎のようでもない。
それでも、もう空白ではなかった。
「大きな戦いはなかった?」
「公然たる戦闘はなかった」とアズガルが訂正した。
マルヴェインが口元だけで笑った。
「見事な表現です」
「詳しく」
リラが報告を開いた。
「カルネス家は、『東部交易路の強化について自ら引き受けた責任の一環として』、ヴァルン=ケルの保持を回復したと報告しています。影の旗は昨日の日没に掲げられ、小規模な守備隊が入りました。城門は閉鎖可能。信号塔は損傷していますが、稼働しています。備蓄は現在十二日分で、一か月分まで増やすとしています」
「砦には誰がいた?」
アズガルが答えた。
「混成集団だ。盗賊、逃亡した傭兵二人、地下道に獣の怪物が数体。ベラルの監視役も一人いた可能性があるが、死体は見つかっていない」
「つまり逃げた」
「あるいは、何かに運ばれた」
「カルネスは、どうやって追い出した?」
マルヴェインが柔らかく言った。
「書状によれば、『断固たる機動と現地の繋がりの的確な活用』によって」
彼はマルヴェインを見た。
「訳すと?」
「買収された者もいれば、脅された者もいる。誰かは個人的に毒を盛られ、誰かには金と両脚を持って去る選択肢が与えられた。そのあと素早く入り、旗を掲げ、武勲詩でも成し遂げたかのような書状を書いたのでしょう」
アズガルが言った。
「重要なのは、砦を保持していることだ。地下道はまだ調査中だ。監察役の士官二人と工兵一人を送った。すでに向かっている」
シアナが眉をひそめた。
「治療師は?」
「一人、同行している」
彼女は頷いたが、完全には安心しなかった。
「裂け目の陣の魔法検査は?」
リラが答えた。
「要請済みです。シアナ、あなたのところから誰か任命する必要があります」
「任命します」
彼は地図を見ていた。
ヴァルン=ケル。
一つの点。
国全体から見れば、ほんの小さなものだ。
それでも、大声で交わされた十の約束より重かった。この数年、影の戦線は縮み、退き、弁明することのほうが多かった。喪失を一時的措置と呼び、弱さを賢明な慎重さと呼び、空白を複雑な情勢と呼んできた。
今、砦を取り戻した。
ただの砦を。
それでも外へ向かう一歩だった。
「国境が前へ動くのは、何年ぶりだ?」
アズガルはすぐには答えなかった。
「公式に認められた区画だけで数えるなら、十九年ぶりだ」
シアナが小さく言った。
「ほぼ二十年……」
マルヴェインは、もう笑っていなかった。
「そしてこの二十年で初めて、有力家門が、影の保持範囲を広げたと言えます。縮小の言い訳ではなく」
彼はマルヴェインを見た。
「誇りたがるだろうな」
「もう誇っています。カルネスの書状は謙虚さにたっぷり浸されています。その下で自画自賛がざくざく音を立てるほどに」
リラが乾いた声で付け加えた。
「有力諸家と国境の都市へ、短い報告を送る許可を求めています」
「何について?」
「カルネス家の力によってヴァルン=ケルの保持を回復したことを。『玉座の慈悲深いご注目のもとで』」
マルヴェインが、ごくわずかに顔をしかめた。
「慈悲深いご注目。なんと気味の悪い」
「だが、使える?」
マルヴェインはため息をついた。
「はい」
アズガルが言った。
「誇らせればいい。国境の兵には、砦は失うだけのものではないと聞かせる必要がある」
シアナが慎重に加えた。
「小領地の者たちにもです。何年も防衛費を払い、退却しか見てこなかった者たちには、特に」
リラが彼を見た。
「許可しますか?」
彼はもう一度、地図を見た。
カルネス家には首輪をつけた。
そして彼らは、その首輪を旗へ変えることに成功した。
気に入らない。
だが、彼が古い諸家に求めていたのは、まさにそれだった。古さだけを理由に対価を求めるのをやめ、役に立つことで名誉を買えばいい。
「許可する。ただし文面は直せ」
マルヴェインが活気づいた。
「どの程度?」
「彼らが満足する程度に。誰が機会を与えたか忘れない程度に」
リラはすでに書いていた。
「『玉座は、ヴァルン=ケルの保持を回復したカルネス家の断固たる行動を評価し、この一歩を、有力諸家が国境に対する責任を取り戻す重要な兆しと認める』」
「いい」彼は言った。「『最初の』と加えろ」
マルヴェインが目を上げた。
「最初の?」
「ああ。『最初の兆し』だ」
最初に理解したのはシアナだった。
「ほかの諸家に、これは始まりだと聞かせるためですね」
「そのとおり」
マルヴェインは、今度こそあからさまに笑った。
「カルネスに誇ることを許しながら、その誇りを、まだ書状しか寄越していない家々への非難に変えるのですね」
「学ばせろ」
アズガルが頷いた。
「正しい」
リラが書き終えた。
「合意した文面を送ります」
「軍への報告からは宮廷の飾りを抜け。砦を奪還。守備隊が入った。調査中。二十年ぶりの外向きの一歩。短く」
アズガルは軽く頭を下げた。
「そのように」
シアナは財務表へ目を落とした。
「このあと、カルネスは以前の権利の一部を固定化するよう求めます」
「もちろん求めますよ」とマルヴェイン。「高潔さで死んだわけではないのですから」
「求めさせろ」彼は言った。「これで少なくとも、卓上へ置けるものができた」
リラが次の板をめくった。
「では、もう一通。アルダト家からです」
マルヴェインが、ほとんど愛おしげに名を口にした。
「メイラナ」
「はい」とリラ。
彼は手を伸ばした。
書状は完璧に書かれていた。
温かくもない。
冷たくもない。
一語一語を量り、乾かし、隠れた義務が混じっていないか調べ、そのあとでようやく行へ置くことを許したような文章だった。
アルダト家は、玉座が提案した北東交易の暫定措置を、しかるべき注意をもって受け入れる。アルダト家は、古い国境路を通る限定的かつ透明な商品流通の価値を認める。アルダト家は、古き家門の有用性を過去の奉仕の記憶ではなく、現在の行動によって証明する機会を与えた玉座に感謝する。
彼はその一文で止まった。
それからゆっくり目を上げた。
「本人が書いたのか?」
マルヴェインは幸福そうだった。
「ほぼ間違いなく」
「歯を食いしばりながら」
「もちろんです。それでも文章は真っ直ぐです。実に見事な歯の使い方ですね」
シアナは交易報告の写しを取った。
「流通はすでに活気づいています」
「もう?」
「はい。大規模ではありませんが、早いです。古い市の拠点三か所が、許可品目一覧の詳細を求めています。二つの隊商一族は、商品を『政治的に疑わしい』として没収しない保証を求めました。アルヴェルの仲介人一人が、第三者を通じて、硝子は軍民両用に当たるかと問い合わせています」
「硝子?」
リラが答えた。
「アルヴェルでは神殿の灯火に使います。こちらでは実験器具、窓、時には罠にも」
「なら、両用だな」
「ですから、回答は慎重にします」とシアナ。「日用品と工芸用の硝子は許可。光学用と儀式用は個別の許可を要する、と」
マルヴェインはため息をついた。
「なんと退屈な良識でしょう」
「なんと有用な良識でしょう」とシアナが訂正した。
「異論はありません。ただ美意識が苦しんでいるのです」
彼は地図の北東部を見た。
アルダト家が街道の喉元を押さえている。
アルヴェルは見ていないふりをしている。
商人たちは、誰が見ているのかわからないふりをしている。
全員が明白なことを否定していた。
だからこそ、成り立つ可能性がある。
「メイラナは見返りに何を求めている?」
リラは書状を確かめた。
「直接には何も」
「なら、書状全体で求めている」
「はい。アルダト家を北東交易の暫定措置の調整役として、実務上だけでなく諸家への最終報告でも名指しすることを望んでいます」
シアナが眉をひそめた。
「彼女を強くします」
「すでに強くなっています」とマルヴェイン。「問題は、玉座に役立つ執行者として強化するか、それとも北東交易の救世主を自称させるかです」
彼はシアナを見た。
「金は?」
彼女は考えた。
「最初の四十日が終われば、より正確にわかります。ただ、流れが続けば、限定的な関税だけでも、古い死んだ特別優遇の一部より多くをもたらします。すぐにではありません。でも、生きた流れです。締め上げなければ育ちます」
「危険は?」
「密輸、密偵、アルダトによる取引量の過少申告、ベラルの苛立ち、同じ条件を欲しがる南部の交易家からの不満」
「つまり平常どおりだな」
シアナは咎めるように彼を見た。
「違います」
マルヴェインが言った。
「政治としては、そのとおりです」
「その言葉が嫌いになってきました」とシアナ。
「職業的成長の最初の兆候です」
リラが尋ねた。
「アルダトへ返答しますか?」
彼は頷いた。
「ああ。行動する意思に感謝する。アルダト家を北東交易の暫定措置における臨時調整役に任命する。『臨時』を二度強調しろ。ただし美しく」
マルヴェインが指を上げた。
「『第一評価期間が終了するまで』」
「使える」
シアナも加えた。
「報告要件も添えてください。品目一覧、取引量、関税、差し止めた貨物、係争事例。それにアルヴェルの仲介人を別項目で」
「公開部分では『アルヴェル』という言葉を抜きます」とリラ。
「もちろんです」
彼は口元を緩めた。
「交易しているが、交易していないと否定するわけだ」
マルヴェインは頭を下げた。
「アルヴェルは購入していることを否定し、アルダトは利益を得すぎていることを否定し、我々はこれが玉座の発案だということを否定します」
「素晴らしい。全員に仕事がある」
アズガルが暗い声で言った。
「その交易路から短剣が入ってくるまではな」
「入ってくる」彼は答えた。
アズガルが彼を見る。
「それで?」
「なら、通る可能性があると知っている場所で短剣を迎える」
アズガルは考えた。
そして頷いた。
「闇の中よりいい」
「そういうことだ」
リラがアルダトへの返書を書き終えた。
「文面を読みます」
「頼む」
「『玉座はアルダト家の感謝を受け取り、古き家門の有用性を現在の行動によって証明する意思を評価する。第一評価期間が終了するまで、アルダト家を北東交易の暫定措置における臨時調整役として承認し、国庫および官房への報告を義務づける。玉座は、商品の流通が一門の利益ではなく、影全体の安定を強めることを期待する』」
マルヴェインが小さく言った。
「メイラナは評価するでしょう」
「憎むでしょう」とシアナ。
「両立しますよ」
彼は頷いた。
「送れ」
リラが印をつけた。
国境から届く知らせは不穏だった。
だが今、その中にあるのは他者が動き始めた兆しだけではない。
再び影の旗が掲げられた砦がある。
隊商が新たな可能性を慎重に試す交易路がある。
長い年月を経て初めて、自分たちの権利を守るだけでなく、自分たちが役に立つと証明しなければならなくなった古い諸家がいる。
平穏ではなかった。
だが、もう退却でもなかった。




