↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の君主  作者: Svolik
35/69

第35章

研究室では、シアナが一人で待っていた。


例の幅広い診察台には、清潔な黒い布が敷かれている。あまりにも整いすぎていた。周囲の器具はいつもより遠くへ片づけられ、薬品の容器には蓋がされている。床の防護陣は準備済みだったが、完全には起動していなかった。


シアナはその傍らで、薄い金属板を手にして立っていた。


その板が口実なのは明らかだった。


彼を平静に迎える方法を十回は考え、その十回すべてで、彼が入ってくる前から失敗していた――そんな顔をしている。


「診察だったな」


扉を閉めながら、彼は言った。


「はい」


「診察だけか?」


シアナは板を握る手に力を込めた。


沈黙が続き、それだけで答えは明らかになった。


「いいえ」


ようやく、ごく小さな声で答える。


彼は近づいた。


「もうすぐ三日になる」


彼女は目を伏せた。


「はい」


「寂しかったか?」


板を握る指がさらに強ばる。


「その表現は、あまり正確ではありません」


「シアナ」


彼女は目を閉じた。


「……はい」


これだ。


あの味が、また広がる。


ただし今度は、記憶を共有しているぶんだけ濃い。恐れはやわらぎ、羞恥は熱を増し、欲望ははっきりしていた。彼女の気配にあるのは、もう「許されるだろうか」という問いだけではない。「覚えている」「もう一度ほしい」という思いと、それをさらけ出すことへの、痛いほどの気恥ずかしさが入り混じっている。


彼は彼女の手から板を取り、台の上へ置いた。


「なら、診察を始めろ」


シアナは戸惑って顔を上げた。


「え?」


「診察のために俺を呼んだんだろう。始めろ」


彼女は数秒、彼を見つめた。


やがて意味を悟り、いっそう真っ赤になる。


「はい、君主様」


彼女は本当に診察を始めた。


彼を陣の中へ立たせ、回路の圧を測り、手首や胸、翼の付け根に測定板を当てる。肌に触れる指先は慎重だったが、もはや職務だけの触れ方ではない。手のひらがほんの少し長く肌に残るたび、気配が燃え上がり、彼女は測定値を確認するふりをした。


彼は好きにさせた。


そして、見つめた。


隠そうともせずに。


「俺に見られていると、わかるんだな」


シアナは危うく板を落としかけた。


「はい」


「邪魔か?」


彼女は答えない。


「言え」


「仕事の邪魔には……なります」


「ほかには?」


間が空いた。


「好きです」


小さく、それでも明瞭な答えだった。


彼はその視線を捉えた。


「なぜ?」


シアナが息を吐く。


「あなたがそうして見ていると、すべて見抜かれている気がするからです。身体だけではなく、恐れも、恥ずかしさも、欲望も。それでも目を逸らさず、見続けてくださる」


「興奮するのか?」


彼女は目を閉じた。


「はい」


「支配されることにも?」


こちらは、答えるまでに時間がかかった。


「……はい」


「隠さず見られ、支配されることに」


彼女は頷いた。


「言葉にしろ」


シアナは目を開く。頬は燃えていたが、今度は完全には視線を逸らさなかった。


「あなたに見られていると、興奮します。じっと見られて、隠れることを許されず、何をするか決められると」


彼はゆっくりと、さらに距離を詰めた。


「いいだろう」


彼女は息を呑んだ。


「いい、とは?」


「今日は、どちらも与えてやる」


彼はすぐには触れなかった。


まずは測定を終えるよう命じた。


それはそれで、ひどく残酷だった。


すぐ傍らに立つ彼の視線を浴びながら、シアナは仕事を続けようとした。時折、短い質問が飛び、時折、たった一言で動きを直される。


「もっとゆっくり」


「もう一度」


「俺を見ろ」


「手を隠すな」


命じられるたびに冷静さは削られ、そのぶん彼女は生き生きとしていった。


診察が終わるころには測定値はすべて記録されていたものの、最後の板の筆跡は目に見えて乱れていた。


「結果は?」


「安定性は……良好です」


シアナはかろうじて声を保った。


「胸部の回路と翼の付け根に、活性の上昇が見られます。感情的な負荷は、すでに……」


「何に影響している?」


「私に、です」


彼は小さく笑った。


「実に正確な報告だ」


シアナは板を下ろした。


彼は自ら、彼女の服を脱がせ始めた。


急がずに。


布が衣服ではなく、身を隠す最後の手段であるかのように、シアナは一つひとつの動きに震えた。彼はそれを一枚ずつ取り去り、彼女を剥き出しのまま、視線に晒した。俯こうとしたところで、指先を顎に添えて止める。


「だめだ」


呼吸が速くなる。


「はい、君主様」


彼女の身体は初めての夜を覚えていた。


二度目を恐れる気持ちは、前より少ない。


欲する気持ちは、前より強い。


彼は反応を確かめながら、核心を急がず身体に触れた。腿、腹、胸、膝の内側を指がなぞる。シアナは震え、ときおり小さく声を漏らしては、自分の声にすぐ赤くなった。彼は顔を背けることを許さない。それは、触れ方そのものより大切だった。


見られていると、理解させる。


身体だけでなく、注がれる意識そのものから支配を感じさせる。


彼は台を示した。


「そこへ」


シアナは台を見た。


それから、彼を見る。


「横になるのですか?」


「まずは座れ」


彼女は従った。


台の端に腰を下ろし、両手を脇につき、背筋を強ばらせたまま膝を揃えている。


「脚を開け」


ゆっくりと開く。


それでは足りない。


「もっとだ。もう少し」


今度は、恥ずかしさに耐えきれなくなりそうなほど開いた。閉じたい気持ちを押し殺し、命じられた姿勢を保っているのが見て取れる。


「俺を見ろ」


彼女は目を上げた。


「横になれ」


仰向けになる。


「もっと脚を開け」


彼女は従った。顔は真っ赤だったが、その目にあるのは羞恥だけではない。期待がある。飢えに近いほどの期待と、自分がそれを抱いていることへの驚きが。


彼は開かれた脚の間に立った。


すぐには入らない。


まず膝から腿の内側へ、さらに上へと手のひらを滑らせ、迎え入れる準備ができているか確かめる。シアナはきつく目を閉じ、脚を閉じようとする衝動に必死で耐えた。


「よくできた」


彼女は目を開いた。


短い賞賛の言葉一つが、触れられるより強く彼女を打ったらしい。


彼は気づいた。


そして覚えておいた。


シアナはすでに濡れていたが、それでも彼を受け入れるには狭すぎ、まだ慣れていなさすぎた。急ぐわけにはいかない。彼は入口へあてがい、ゆっくりと押し進めた。


最初の抵抗には覚えがある。


身体が強ばる。だが前回ほどではない。彼女はこの先を知っていた。痛みが快楽を消してしまわないことも、彼が急がないことも。


締まった筋肉の輪を越えた。


シアナが喘ぐ。


リラよりは小さく。


初めてのときより深く。


「目を開けろ」


彼女は開いた。


彼はもう少し深く進んだ。


シアナは台の端を掴む。


「痛いか?」


「はい」


「続けたいか?」


彼女はほとんど迷わず頷いた。


「言葉で」


「はい。続けてほしいです」


彼は進み続けた。


ごくゆっくりと。


初めてのときより受け入れやすくなってはいたが、まだ楽ではない。一センチ進むごとに止まり、呼吸を整え、彼女は力を抜こうとし、彼は自らの力を抑えなければならなかった。彼を包む身体が押し広げられ、抵抗が少しずつ譲り、痛みの味が快楽と混じって変わっていくのを感じる。


彼女は彼を見ていた。


それこそが何より大切だった。


彼が止まるたび、耐え続けてもよいという許しをその顔に求めるかのように、視線が彼を探した。彼女が自分の下で開いていくことへの悦びも、力も、飢えも、彼は隠さなかった。


それが彼女を、さらに昂らせた。


「隠れるのをやめたお前は綺麗だ」


シアナの口から、すすり泣きにも似た声が漏れた。


「君主様……」


「学術的な所見ではないぞ」


「わかっています」


「よし」


半ばほどまで入った。


彼女はもう震えていた。


だが今回は、ただ耐えているだけではない。腰が自ら、ほんのわずかに彼を迎えに動いた。ためらいがちで、見逃しそうなほど小さな動きだった。


彼は止まった。


「もっとか?」


シアナは目を閉じ、また開いた。


「はい」


「何がほしいか言え」


彼女は痛々しいほど赤くなった。


呼吸が速い。


「ほしい、です」


「何を?」


一瞬、きつく目を閉じ、それでも言葉にする。


「私を、抱いてください」


彼は指でその腹を撫でた。


「ただ……できれば……」


「なんだ?」


「今度は、もっと深く」


言葉はかろうじて声になった。


それを口にしたシアナは、何かに勝利し、同時に燃え尽きたような顔をしていた。


彼は笑みを浮かべ、望みを叶えた。


診察台は、またしても役立つことを証明した。高さはほとんど理想的だ。彼女を抱き上げる必要はなく、彼女も自分の身体を支えなくていい。開かれたまま横たわり、震え、すべてを委ねている。彼は必要なだけゆっくりと動き、一度ごとの進み方、押し広げ方、痛みと快楽の境をすべて支配できた。初めは台の端を掴んでいた彼女の手が、やがて一つ離れ、彼の前腕に置かれた。押し返すためではない。すがるために。


ようやく奥近くまで入ると、シアナは自分でも思いがけないほど大きな声を上げた。研究室の封印が一つ震える。彼女は怯えて顔をそちらへ向けた。


「封印が……」


「俺を見ろ」


視線が戻ってくる。


「そうだ」


彼は再び動き始めた。


まずは浅く慎重に、深く満たされる感覚へ慣れさせる。それから、少しずつ力を増した。一度進むごとに、シアナの身体はゆっくりと、苦労しながら開いていく。それでも、自分の身体を疑う気持ちはもう以前ほど強くない。漏れる声は隠しようのないものになっていった。手で口を塞ごうとするたび、彼はその手をどけ、自分の声を聞かせた。


「隠すな」


「無理です……」


「できる」


「あまりにも……」


「何が、あまりにも?」


彼女はなかなか言えなかった。


彼は動きを緩め、深く入ったまま、ほとんど止まる。


「シアナ」


彼女が息を吐いた。


「気持ちよすぎます」


その味は、限りなく完璧に近かった。


彼は先ほどより強く動いた。


シアナは台の上で背を反らし、翼を大きく広げた。測定板の一枚が危うく端へ滑る。彼は考えるより先に尾で受け止め、身体への順応が順調だと意識の隅で確認した。だが次の瞬間には、そんなことを考える余裕もなくなった。


彼女が認めた、支配と視線を与えた。眼差しで、言葉で、腿を掴む手で、一度ごとの深さで彼女を捉え続ける。最後にはもう、自らの欲望を恐れる慎重な研究者の姿はなかった。隠さず声を上げ、リラより小さいが初めてのときよりはっきりと求める。その「もっと」という言葉の一つひとつが、自分自身に勝つ小さな勝利だった。


絶頂に達したとき、シアナは彼の手へ自分の手を重ね、目を閉じず、まっすぐ彼を見ていた。柔らかく深い震えが全身を駆け抜ける。気配があの葡萄酒の味に開ききり、温かく濃厚な渋みを舌に残した。


彼は長く引き延ばしすぎなかった。


シアナはもう限界だった。


腿を掴み、深く入ったまま、自らも果てる。荒々しく突き上げることはしなかった。陣の縁で影が震えたが、燃え上がりはしない。封印も持ちこたえた。


その瞬間、悪魔にとって欲望や交わりは、人間よりも強く働くようにできているのだと気づいた。


単なる生理上の違いではない。


身体の反応が鮮烈なのだ。気配から伝わるものも多い。権力、恐れ、羞恥、痛み、快楽――すべてが表面に近く、すぐに別の感情へ移り変わる。悪魔の身体は、人の身体ほど綺麗に欲望と力を切り分けない。より濃密に、それらを生きている。


少し後。赤く火照り、髪を乱し、腿を震わせ、幸せそうに途方に暮れた顔で診察台に横たわるシアナへ、彼はそれを尋ねた。


「悪魔はいつもこうなのか?」


彼女はどうにか焦点を合わせた。


「何が、でしょう?」


「欲望や交わりだ。そういうものが、人間より強いのか?」


シアナは瞬いた。


そして彼を楽しませることに、こんな状態でもまともな学術的回答をしようとした。


「平均すれば、はい。悪魔は意志と魔力と肉体の回路が、より強く結びついています。欲望はしばしば肉体だけでなく、気配や服従、支配、力の交換、恐れ、地位の承認を通しても流れます」


言い終えるころには、ありえないほど真っ赤になっていた。


「かなり大雑把な言い方ですが」


「正確か?」


間が空く。


「はい」


彼は笑った。


今度の呻きは、身体のせいではなく、羞恥から漏れたものだった。


「笑わないでください」


「もう遅い」


彼女は起き上がろうとしたが、すぐには無理だった。彼は手を貸した。


「つまり俺の考えは合っていたわけだ。悪魔は何もかもが表面に近い」


「人間でも鮮烈なことはあります」


「そうだろうな。だが、お前たちはそれが魔力そのものに組み込まれているように見える」


「影は光ほど、欲望と力を厳しく切り離しませんから」


シアナは少し自信を取り戻して言った。


「そもそも悪魔の本性は、自らの衝動を否定することに向いていません。制御し、導き、法や意志で縛ることはできます。けれど、存在しないふりをすれば、かえって危険になります」


彼はじっと彼女を見た。


「役に立つ考えだ」


「はい」


「特に俺にはな」


シアナは、自分が交わり以上のことを語ったのだと悟った。


それでも言葉を取り消さなかった。


そのあと、彼はもう一度彼女を抱いた。


今度は短く、より深く。初めのような慎重さもなかった。彼女の身体はすでに開き、自ら求めるように手を伸ばし、「いいです」と囁いたからだ。最後には声が途切れ、身体は彼をほとんど奥まで受け入れた。肩へ指を置き、目を大きく開いたまま、痙攣するように息を呑んで、鋭く果てる。自分がこれほど応えるとは、本人も思っていなかったようだった。


その後しばらく、彼女はまともに口をきけなかった。


それでも数分もすると板を求め、観察結果を書き留めようとした。


彼はその手から板を取り上げた。


「だめだ」


「でも、記録が……」


「あとにしろ」


「観察は鮮度が大切です」


「シアナ」


「はい?」


「寝ていろ」


彼女は横になった。


「生きてるか?」


シアナは目を開けた。


「はい」


「診察は終わったか?」


真面目に答えようとした。


だが、無理だった。


まず笑みがこぼれ、それから両手で顔を覆う。


「隠れるな」


彼女は手をどけた。


真っ赤で、恥ずかしそうで、それでも呆れるほど幸せそうだった。


「診察は終了しました、君主様」


「所見は?」


彼女は唾を呑んだ。


「この台は有用です」


彼は声を上げて笑った。


シアナも笑った。


小さく、ぎこちなく、それでも前よりずっと自由に。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。