第35章
研究室では、シアナが一人で待っていた。
例の幅広い診察台には、清潔な黒い布が敷かれている。あまりにも整いすぎていた。周囲の器具はいつもより遠くへ片づけられ、薬品の容器には蓋がされている。床の防護陣は準備済みだったが、完全には起動していなかった。
シアナはその傍らで、薄い金属板を手にして立っていた。
その板が口実なのは明らかだった。
彼を平静に迎える方法を十回は考え、その十回すべてで、彼が入ってくる前から失敗していた――そんな顔をしている。
「診察だったな」
扉を閉めながら、彼は言った。
「はい」
「診察だけか?」
シアナは板を握る手に力を込めた。
沈黙が続き、それだけで答えは明らかになった。
「いいえ」
ようやく、ごく小さな声で答える。
彼は近づいた。
「もうすぐ三日になる」
彼女は目を伏せた。
「はい」
「寂しかったか?」
板を握る指がさらに強ばる。
「その表現は、あまり正確ではありません」
「シアナ」
彼女は目を閉じた。
「……はい」
これだ。
あの味が、また広がる。
ただし今度は、記憶を共有しているぶんだけ濃い。恐れはやわらぎ、羞恥は熱を増し、欲望ははっきりしていた。彼女の気配にあるのは、もう「許されるだろうか」という問いだけではない。「覚えている」「もう一度ほしい」という思いと、それをさらけ出すことへの、痛いほどの気恥ずかしさが入り混じっている。
彼は彼女の手から板を取り、台の上へ置いた。
「なら、診察を始めろ」
シアナは戸惑って顔を上げた。
「え?」
「診察のために俺を呼んだんだろう。始めろ」
彼女は数秒、彼を見つめた。
やがて意味を悟り、いっそう真っ赤になる。
「はい、君主様」
彼女は本当に診察を始めた。
彼を陣の中へ立たせ、回路の圧を測り、手首や胸、翼の付け根に測定板を当てる。肌に触れる指先は慎重だったが、もはや職務だけの触れ方ではない。手のひらがほんの少し長く肌に残るたび、気配が燃え上がり、彼女は測定値を確認するふりをした。
彼は好きにさせた。
そして、見つめた。
隠そうともせずに。
「俺に見られていると、わかるんだな」
シアナは危うく板を落としかけた。
「はい」
「邪魔か?」
彼女は答えない。
「言え」
「仕事の邪魔には……なります」
「ほかには?」
間が空いた。
「好きです」
小さく、それでも明瞭な答えだった。
彼はその視線を捉えた。
「なぜ?」
シアナが息を吐く。
「あなたがそうして見ていると、すべて見抜かれている気がするからです。身体だけではなく、恐れも、恥ずかしさも、欲望も。それでも目を逸らさず、見続けてくださる」
「興奮するのか?」
彼女は目を閉じた。
「はい」
「支配されることにも?」
こちらは、答えるまでに時間がかかった。
「……はい」
「隠さず見られ、支配されることに」
彼女は頷いた。
「言葉にしろ」
シアナは目を開く。頬は燃えていたが、今度は完全には視線を逸らさなかった。
「あなたに見られていると、興奮します。じっと見られて、隠れることを許されず、何をするか決められると」
彼はゆっくりと、さらに距離を詰めた。
「いいだろう」
彼女は息を呑んだ。
「いい、とは?」
「今日は、どちらも与えてやる」
彼はすぐには触れなかった。
まずは測定を終えるよう命じた。
それはそれで、ひどく残酷だった。
すぐ傍らに立つ彼の視線を浴びながら、シアナは仕事を続けようとした。時折、短い質問が飛び、時折、たった一言で動きを直される。
「もっとゆっくり」
「もう一度」
「俺を見ろ」
「手を隠すな」
命じられるたびに冷静さは削られ、そのぶん彼女は生き生きとしていった。
診察が終わるころには測定値はすべて記録されていたものの、最後の板の筆跡は目に見えて乱れていた。
「結果は?」
「安定性は……良好です」
シアナはかろうじて声を保った。
「胸部の回路と翼の付け根に、活性の上昇が見られます。感情的な負荷は、すでに……」
「何に影響している?」
「私に、です」
彼は小さく笑った。
「実に正確な報告だ」
シアナは板を下ろした。
彼は自ら、彼女の服を脱がせ始めた。
急がずに。
布が衣服ではなく、身を隠す最後の手段であるかのように、シアナは一つひとつの動きに震えた。彼はそれを一枚ずつ取り去り、彼女を剥き出しのまま、視線に晒した。俯こうとしたところで、指先を顎に添えて止める。
「だめだ」
呼吸が速くなる。
「はい、君主様」
彼女の身体は初めての夜を覚えていた。
二度目を恐れる気持ちは、前より少ない。
欲する気持ちは、前より強い。
彼は反応を確かめながら、核心を急がず身体に触れた。腿、腹、胸、膝の内側を指がなぞる。シアナは震え、ときおり小さく声を漏らしては、自分の声にすぐ赤くなった。彼は顔を背けることを許さない。それは、触れ方そのものより大切だった。
見られていると、理解させる。
身体だけでなく、注がれる意識そのものから支配を感じさせる。
彼は台を示した。
「そこへ」
シアナは台を見た。
それから、彼を見る。
「横になるのですか?」
「まずは座れ」
彼女は従った。
台の端に腰を下ろし、両手を脇につき、背筋を強ばらせたまま膝を揃えている。
「脚を開け」
ゆっくりと開く。
それでは足りない。
「もっとだ。もう少し」
今度は、恥ずかしさに耐えきれなくなりそうなほど開いた。閉じたい気持ちを押し殺し、命じられた姿勢を保っているのが見て取れる。
「俺を見ろ」
彼女は目を上げた。
「横になれ」
仰向けになる。
「もっと脚を開け」
彼女は従った。顔は真っ赤だったが、その目にあるのは羞恥だけではない。期待がある。飢えに近いほどの期待と、自分がそれを抱いていることへの驚きが。
彼は開かれた脚の間に立った。
すぐには入らない。
まず膝から腿の内側へ、さらに上へと手のひらを滑らせ、迎え入れる準備ができているか確かめる。シアナはきつく目を閉じ、脚を閉じようとする衝動に必死で耐えた。
「よくできた」
彼女は目を開いた。
短い賞賛の言葉一つが、触れられるより強く彼女を打ったらしい。
彼は気づいた。
そして覚えておいた。
シアナはすでに濡れていたが、それでも彼を受け入れるには狭すぎ、まだ慣れていなさすぎた。急ぐわけにはいかない。彼は入口へあてがい、ゆっくりと押し進めた。
最初の抵抗には覚えがある。
身体が強ばる。だが前回ほどではない。彼女はこの先を知っていた。痛みが快楽を消してしまわないことも、彼が急がないことも。
締まった筋肉の輪を越えた。
シアナが喘ぐ。
リラよりは小さく。
初めてのときより深く。
「目を開けろ」
彼女は開いた。
彼はもう少し深く進んだ。
シアナは台の端を掴む。
「痛いか?」
「はい」
「続けたいか?」
彼女はほとんど迷わず頷いた。
「言葉で」
「はい。続けてほしいです」
彼は進み続けた。
ごくゆっくりと。
初めてのときより受け入れやすくなってはいたが、まだ楽ではない。一センチ進むごとに止まり、呼吸を整え、彼女は力を抜こうとし、彼は自らの力を抑えなければならなかった。彼を包む身体が押し広げられ、抵抗が少しずつ譲り、痛みの味が快楽と混じって変わっていくのを感じる。
彼女は彼を見ていた。
それこそが何より大切だった。
彼が止まるたび、耐え続けてもよいという許しをその顔に求めるかのように、視線が彼を探した。彼女が自分の下で開いていくことへの悦びも、力も、飢えも、彼は隠さなかった。
それが彼女を、さらに昂らせた。
「隠れるのをやめたお前は綺麗だ」
シアナの口から、すすり泣きにも似た声が漏れた。
「君主様……」
「学術的な所見ではないぞ」
「わかっています」
「よし」
半ばほどまで入った。
彼女はもう震えていた。
だが今回は、ただ耐えているだけではない。腰が自ら、ほんのわずかに彼を迎えに動いた。ためらいがちで、見逃しそうなほど小さな動きだった。
彼は止まった。
「もっとか?」
シアナは目を閉じ、また開いた。
「はい」
「何がほしいか言え」
彼女は痛々しいほど赤くなった。
呼吸が速い。
「ほしい、です」
「何を?」
一瞬、きつく目を閉じ、それでも言葉にする。
「私を、抱いてください」
彼は指でその腹を撫でた。
「ただ……できれば……」
「なんだ?」
「今度は、もっと深く」
言葉はかろうじて声になった。
それを口にしたシアナは、何かに勝利し、同時に燃え尽きたような顔をしていた。
彼は笑みを浮かべ、望みを叶えた。
診察台は、またしても役立つことを証明した。高さはほとんど理想的だ。彼女を抱き上げる必要はなく、彼女も自分の身体を支えなくていい。開かれたまま横たわり、震え、すべてを委ねている。彼は必要なだけゆっくりと動き、一度ごとの進み方、押し広げ方、痛みと快楽の境をすべて支配できた。初めは台の端を掴んでいた彼女の手が、やがて一つ離れ、彼の前腕に置かれた。押し返すためではない。すがるために。
ようやく奥近くまで入ると、シアナは自分でも思いがけないほど大きな声を上げた。研究室の封印が一つ震える。彼女は怯えて顔をそちらへ向けた。
「封印が……」
「俺を見ろ」
視線が戻ってくる。
「そうだ」
彼は再び動き始めた。
まずは浅く慎重に、深く満たされる感覚へ慣れさせる。それから、少しずつ力を増した。一度進むごとに、シアナの身体はゆっくりと、苦労しながら開いていく。それでも、自分の身体を疑う気持ちはもう以前ほど強くない。漏れる声は隠しようのないものになっていった。手で口を塞ごうとするたび、彼はその手をどけ、自分の声を聞かせた。
「隠すな」
「無理です……」
「できる」
「あまりにも……」
「何が、あまりにも?」
彼女はなかなか言えなかった。
彼は動きを緩め、深く入ったまま、ほとんど止まる。
「シアナ」
彼女が息を吐いた。
「気持ちよすぎます」
その味は、限りなく完璧に近かった。
彼は先ほどより強く動いた。
シアナは台の上で背を反らし、翼を大きく広げた。測定板の一枚が危うく端へ滑る。彼は考えるより先に尾で受け止め、身体への順応が順調だと意識の隅で確認した。だが次の瞬間には、そんなことを考える余裕もなくなった。
彼女が認めた、支配と視線を与えた。眼差しで、言葉で、腿を掴む手で、一度ごとの深さで彼女を捉え続ける。最後にはもう、自らの欲望を恐れる慎重な研究者の姿はなかった。隠さず声を上げ、リラより小さいが初めてのときよりはっきりと求める。その「もっと」という言葉の一つひとつが、自分自身に勝つ小さな勝利だった。
絶頂に達したとき、シアナは彼の手へ自分の手を重ね、目を閉じず、まっすぐ彼を見ていた。柔らかく深い震えが全身を駆け抜ける。気配があの葡萄酒の味に開ききり、温かく濃厚な渋みを舌に残した。
彼は長く引き延ばしすぎなかった。
シアナはもう限界だった。
腿を掴み、深く入ったまま、自らも果てる。荒々しく突き上げることはしなかった。陣の縁で影が震えたが、燃え上がりはしない。封印も持ちこたえた。
その瞬間、悪魔にとって欲望や交わりは、人間よりも強く働くようにできているのだと気づいた。
単なる生理上の違いではない。
身体の反応が鮮烈なのだ。気配から伝わるものも多い。権力、恐れ、羞恥、痛み、快楽――すべてが表面に近く、すぐに別の感情へ移り変わる。悪魔の身体は、人の身体ほど綺麗に欲望と力を切り分けない。より濃密に、それらを生きている。
少し後。赤く火照り、髪を乱し、腿を震わせ、幸せそうに途方に暮れた顔で診察台に横たわるシアナへ、彼はそれを尋ねた。
「悪魔はいつもこうなのか?」
彼女はどうにか焦点を合わせた。
「何が、でしょう?」
「欲望や交わりだ。そういうものが、人間より強いのか?」
シアナは瞬いた。
そして彼を楽しませることに、こんな状態でもまともな学術的回答をしようとした。
「平均すれば、はい。悪魔は意志と魔力と肉体の回路が、より強く結びついています。欲望はしばしば肉体だけでなく、気配や服従、支配、力の交換、恐れ、地位の承認を通しても流れます」
言い終えるころには、ありえないほど真っ赤になっていた。
「かなり大雑把な言い方ですが」
「正確か?」
間が空く。
「はい」
彼は笑った。
今度の呻きは、身体のせいではなく、羞恥から漏れたものだった。
「笑わないでください」
「もう遅い」
彼女は起き上がろうとしたが、すぐには無理だった。彼は手を貸した。
「つまり俺の考えは合っていたわけだ。悪魔は何もかもが表面に近い」
「人間でも鮮烈なことはあります」
「そうだろうな。だが、お前たちはそれが魔力そのものに組み込まれているように見える」
「影は光ほど、欲望と力を厳しく切り離しませんから」
シアナは少し自信を取り戻して言った。
「そもそも悪魔の本性は、自らの衝動を否定することに向いていません。制御し、導き、法や意志で縛ることはできます。けれど、存在しないふりをすれば、かえって危険になります」
彼はじっと彼女を見た。
「役に立つ考えだ」
「はい」
「特に俺にはな」
シアナは、自分が交わり以上のことを語ったのだと悟った。
それでも言葉を取り消さなかった。
そのあと、彼はもう一度彼女を抱いた。
今度は短く、より深く。初めのような慎重さもなかった。彼女の身体はすでに開き、自ら求めるように手を伸ばし、「いいです」と囁いたからだ。最後には声が途切れ、身体は彼をほとんど奥まで受け入れた。肩へ指を置き、目を大きく開いたまま、痙攣するように息を呑んで、鋭く果てる。自分がこれほど応えるとは、本人も思っていなかったようだった。
その後しばらく、彼女はまともに口をきけなかった。
それでも数分もすると板を求め、観察結果を書き留めようとした。
彼はその手から板を取り上げた。
「だめだ」
「でも、記録が……」
「あとにしろ」
「観察は鮮度が大切です」
「シアナ」
「はい?」
「寝ていろ」
彼女は横になった。
「生きてるか?」
シアナは目を開けた。
「はい」
「診察は終わったか?」
真面目に答えようとした。
だが、無理だった。
まず笑みがこぼれ、それから両手で顔を覆う。
「隠れるな」
彼女は手をどけた。
真っ赤で、恥ずかしそうで、それでも呆れるほど幸せそうだった。
「診察は終了しました、君主様」
「所見は?」
彼女は唾を呑んだ。
「この台は有用です」
彼は声を上げて笑った。
シアナも笑った。
小さく、ぎこちなく、それでも前よりずっと自由に。




