第27章
研究翼棟には、オゾンと乾いた石と薬草と、金の匂いがした。
十分深く見れば、金にも匂いがある。金属、紙、労働、監査への恐れ、助成への期待、財務官の絶望。
シアナは長卓の向こうで、三枚の記録板へ身を屈めていた。髪は適当にまとめ、頬にはまた墨の跡、袖は捲ってある。傍らには税制改革の試算、彼の魔力回路図、玉座接続用の素材一覧、とっくに冷めた何かの入った杯。
すぐには彼に気づかなかった。
珍しいことだ。
城塞の者は、たいてい彼が入室する前に存在へ気づく。だがシアナは数字と線へ完全に沈み、独り言を呟きながら、結晶を苛立たしげに動かしていた。
「駄目。ここを減税して塩で補えば、ただ非公式取引へ逃げる。通行税を使うなら道路のあと。まず道路。道路の金はどこから……」
「おはよう、シアナ」
杯を倒しかけるほど驚いた。
振り返り、固まる。
「君主様」
すぐ赤くなった。
初めは頬骨だけ。次に首、耳。
あの味わいだ。
フョードルは急がず入った。背後の扉が柔らかく、それでも完全に閉じる。シアナは音を聞いて唾を呑んだ。
「本日の診察予定はありません」
「知ってる」
「回路の不安定を感じたなら症状を。灼熱感、胸部圧迫、制御不能の〈影〉放出、ケイル・ノルの聴覚残響、玉座反応は?」
「どれもない」
「では……」
彼が近づくと、言葉が止まった。
触れるほどではない。
気配が動き始めるには十分な距離。
彼は見つめ、また味に近いものを感じた。
恐怖は細く鳴り、羞恥は暖かく甘い。注目される喜びは隠されても頑固。役立ちたい気持ちは明るく、ほぼ真っ直ぐな線。従いたい願いは暗く柔らかく、自らの形をまだ恐れている。
そうだ。
期待したとおり。
「診察に来たんじゃない」
シアナは卓の縁を握った。
「分かっています」
「本当に?」
口を開き、閉じる。
「たぶん……はい」
「何を考えてる?」
「安全陣を用意すべきか、確認しなければと」
「陣?」
「〈影〉の放出や……感情負荷に備えて」
最後は、ほとんど囁きだった。
「シアナ」
「はい?」
「実験室の陰に隠れようとしてるな」
さらに赤くなる。
「はい」
フョードルは小さく笑った。
彼女は身を震わせたが、退かなかった。
「いい。慣れた方法で逃げるのは禁止しない。爆発を防ぐには何を片づける?」
その問いが助けになったらしい。シアナはすぐ動いた。三つの結晶を片づけ、墨壺を閉じ、素材棚の防護を起動し、「急激な衝撃へ悪く反応する可能性があります」という小陣を停止する。書類まで運ぼうとしたところで、フョードルが手首を取った。
慎重に。
彼女は動きを止める。
「もういい」
「でも書類が……」
「生き残る」
「全てではありません」
「なら特に死にやすいものだけ避けよう」
ほとんど笑いかけ、すぐまた恥じらった。
彼は実験室中央の大陣へ連れていき、中に立たせた。
「ここなら安全か?」
「比較的」
「この宮殿では、それで十分という意味だ」
「はい」
ゆっくり周囲を歩く。
シアナは真っ直ぐすぎるほど直立していた。試験、処刑、重要すぎる報告を待つように。両手を前で組み、指は震える。彼を見ないよう努めるが、横へ来るたび、視線は身体、手、角、胸、帯へ滑り、すぐ逸れる。
一つ一つ見えた。
まだ舌へ触れていない葡萄酒の香りを、一口ずつ味わうようだった。
「怖いんだな」
「はい」
「帰ってほしいか?」
彼女は勢いよく顔を上げた。
「いいえ」
あまりに早い答えに、本人が怯えた。
彼は近づく。
「なら、何が欲しい?」
シアナは黙った。
気配の中で恐怖、羞恥、欲望、覚悟、それを言葉へしなければならない恐慌が混ざる。命令することもできる。あまりに容易く。ほぼ確実に従うだろう。
だが、彼が欲しいのは別のものだった。
リラはもう、自ら彼の前へ身体を差し出せる。
女祭司は権力と信仰と復讐に縛られていた。
シアナには、自分から何かを口にさせたい。
小さくても、歪でも、願いと同意の間にある言葉でも。
「言え」
組んだ手にさらに力が入る。
「正しい言い方が分かりません」
「正しくなくていい」
「私はリラではありません」
「気づいてる」
「やり方も……」
「それもな」
「君主様……」
頬へ触れた。
「シアナ。言え」
彼女は目を閉じ、数秒呼吸した。
それから、ほとんど聞こえない声で言う。
「あなたのお役に立ちたいです」
「もう役に立ってる」
「そういう意味ではなく」
彼は遮らない。
声は震えたが、続いた。
「怖いです。とても。でも見られると……見るのをやめてほしくない。あなたがお望みなら、私は……」
言葉が詰まる。
彼は少し身を寄せた。
「何だ?」
「許したいです」
間。
気配が羞恥に燃え上がる。それでも退かない。
「許すのか、属するのか?」
目を開いた。あまりに正確に言い当てられ、ほとんど絶望した目だった。
「分かりません」
「試してみろ」
彼女は囁いた。
「両方です」
そこで初めて一口飲んだ。
比喩ではある。
だがまさに、舌へ渋く暖かく鋭く、すぐには全てを見せない深さで開く味だった。
彼は口づけた。
シアナは硬直し、それからぎこちなく、貪欲に、あまりに正直に応えた。唇は震え、手は行き場を失ったあと彼の服を掴む。隠れたいのと残りたいのを同時に願う口づけ。彼は急がず、後頭部を支え、導き、見つめるだけだった彼がすでに触れているという事実へ慣れさせた。
やがて服を脱がせ始める。
ゆっくり。
羞恥の段階を一つずつ見たかった。手伝おうとする指がかえって邪魔をする。布が肩から落ちると呼吸が乱れる。そんなに見ないでほしいと目で頼みながら、視線を逸らさないことに花開く。
最初は外衣。
灰紫の布が肩から滑り、細い首、鎖骨、小さな暗い角、背へ押しつけた短い翼が見える。まだ簡素で実用的な下着は残っていたが、体形は隠せない。小柄で細く、狭い肩、くびれた腰。計算、表、議事録への注釈になろうとする彼女には生々しすぎる胸。
上の留め具を一つ外す。
シアナは鋭く息を吸った。
「心拍数が上昇しています。これは……」
二つ目を外す。
黙った。
「続けろ」
「強い感情的・魔力的圧力源との直接接触では、予測される反応です」
「俺はそう呼ばれるのか?」
彼女は唾を呑む。
「報告では、そのほうが安全です」
フョードルは笑い、布を下げた。
胸が露わになる。張りがあり、さほど大きくはないが細い身体にはやや豊かに見える。暗い乳首は硬く尖っていた。シアナは目を固く閉じ、規律で処理できることのように無理やり開く。
掌で触れた。
全身が跳ねる。
「感度が上がっています。おそらく……期待によって」
親指をゆっくり滑らせ、少し押す。
唇を噛んだ。
「それと、接触によって」
「有益な追記だ」
身を屈め、乳首へ口づける。
思考より早く、短く押し殺した声が漏れた。身体が先に答えたことへ抗議するような声。
「君主様……」
「何だ?」
「そんなことをされたら、正常に説明できません」
もう一度繰り返す。
指が肩へ食い込んだ。
「なら正常に説明しなくていい」
シアナは困惑して彼を見た。
残りの服も脱がせる。
全裸になると、すぐ両手で隠そうとした。片手を胸へ、もう片方を下へ。翼も少し前に、尾は腿へ寄せる。外衣も書類も墨もなければ、小さく細く、あまりに本物だった。淡灰の肌、柔らかな腹の線、細い腰と腿、すらりとした脚、細い手首。夜を計算に費やしてきた、執務室の魔族の女の身体。
隠し方は下手だった。
見られたがっているからだ。
鎖骨まで下りた赤み。膝の震え。隠しながら、彼が手を退けるのを息を止めて待つ姿。
彼は片方ずつ、ゆっくり手を除けた。
シアナは抵抗せず、下を見て、空気が足りないほど速く呼吸する。
「綺麗だ」
勢いよく顔を上げる。
すぐには信じなかった。
「それは……主観的評価です」
「ああ」
「検証不能です」
「今、反論したいか?」
口を開き、閉じ、さらに赤くなる。
「いいえ」
「よし」
両手で脇腹から腰、腿へ撫で下ろす。触れるたび震え、ほとんど気づかないほど手を追う。細く軽い身体だが脆くはない。魔族の肉体らしい強さが、背、腿、短い翼にある。尾が神経質に彼の手首を撫で、すぐ止まった。本人が露骨な仕草に気づいたらしい。
「無意識です」
「尾か?」
「はい」
「残念だ」
彼女は彼を見る。
そして突然、短く生きた笑みを浮かべた。
「完全には」
これだ、とフョードルは思う。
羞恥と数字と墨と正しい言葉の下には、自分で知ることさえ許さなかった、もっと恥知らずな欲望がいる。
軽々と卓へ抱き上げた。
シアナは叫んで肩へしがみつき、すぐ自分の大胆さに怯えたように手を離す。
診察台は広く、厚い暗色布が敷かれている。それでも石の冷たさは伝わる。置かれた場所に気づくと、また慣れたものへ逃げようとした。
「滅菌済みです」
彼は彼女を見る。
「よし」
「そういう意味では……」
「なら、どういう意味だ?」
仰向けに横たわり、髪を乱し、全裸で目を見開き、頬には墨の染み。妙に生活感のある姿だった。
「分かりません」
「なら急ぐな」
彼女は従った。
両手で膝を開く。
シアナはすぐ閉じようとした。本気の抵抗ではなく、隠れる習慣だ。
フョードルは止める。
「駄目だ」
一言。
彼女は固まり、それからゆっくり脚を開いた。
卓の上では、さらに小さく見えた。裸体は職務上の緊張も、胸に抱く書類も、計算へ顔を背ける機会も奪う。胸は速く不規則に上下し、呼吸ごとに腹が震える。開かれた腿は内側が柔らかく、外側には強さがある。翼は暗い布へ広がり、尾は卓の縁に沿って張りつめていた。脚の間にはもう濡れた光があり、彼が気づいたことを彼女も知った。
手で顔を覆う。
その手を除けた。
「俺を見ろ」
シアナが目を上げる。
「許して、属したいと言った」
ごく小さく頷く。
「なら隠れるな」
身体は震えた。
それでも隠れなかった。
彼は長く触れ、急いで抱こうとはしなかった。
手、唇、視線の重みで。
どこで止まり、震え、自ら近づき、その露骨さへ怯えるかを確かめる。静かでいられるうちは静かだった。やがて音が勝手に漏れ始める。初めは詫びるように小さく、次第に濡れ、困惑し、生きた声へ。
十分に準備ができ、同時に全くできていなかった。
腿の内側へ唇を這わせる。
シアナが震える。
「そこは感度が高いです。中心へ近づくほど強くなります。もし触れたら……」
触れた。
言葉が途切れ、鋭く身を反らした。翼が卓の布を擦る。
「君主様……」
「話せ」
「陰唇が……腫れています」
正確な言葉一つごとに舌を焼かれるように、赤くなりながら息を吐く。
「とても濡れていて、入口はあなたへ反応しています。クリトリスも……」
彼は目を上げた。
「それも?」
目を固く閉じる。
「今は敏感すぎます。そんなふうに見て触れられたら……すぐ制御を失います」
「失え」
答えようと口を開いた。
答えられなかった。
彼はまた、もっと遅く注意深く触れた。耐えようとする試みを、一つずつ吐息と震えと途切れた声へ変える。まだ正確でいようとし、感覚を観察結果のように述べたが、声はもう従わない。
「陰唇が……震えています。内側が締まって……もっと開きたい」
舌を強く這わせる。
彼女は啜り泣いた。
「はい……そこ。クリトリスです。離さないで」
声が変わる。
フョードルは急がず舐め続け、自分の研究対象でも魔力回路の集合でもない身体として、見られることへ慣れさせた。自分の診察台へ広げられ、正しい言葉を全て無用にされていく女として。
シアナは耐えようとした。
「舌でクリトリスを続けられたら……」
彼が続けると、言葉が砕けた。
「はい! そこです。もう黙れません」
「黙れとは言ってない」
喘ぎが大きくなる。
指が角へ伸び、掴む勇気を持てず、肩へ落ち、また卓の縁へ戻る。手の置き場が分からない。丁寧に全てを名づける習慣が壊れていくのが見えた。長い文が消え、説明が消え、称号と直接的な言葉と願いと、もう従わない呼吸だけが残る。
「君主様……お願い……」
「何を?」
彼女は目を閉じた。
彼は止まる。
シアナは勢いよく目を開いた。
「続けてください。あなたの口が欲しい。クリトリスに。私に。お願いします」
自分で口にしたことを信じられない顔だった。
「そのほうがいい」
胸まで赤くなる。
「恥ずかしいです」
「知ってる」
「それでも欲しい」
彼はまた触れた。
彼女は喘ぎへ崩れた。
その先、丁寧であろうとはしなかった。動くたび言葉は直接的に、低く、熱くなる。記録すべき研究者ではなく、長く内へ閉じ込めていた欲望が、自分ほど自分を恥じてはいなかったと知った女として頼んだ。
続けて。
もっと強く口づけて。
離さないで。
そして、ごく小さく、自分の露骨さへ怯えながら、抱いてほしいと願った。
彼は立ち上がった。
シアナは卓の上へ開かれ、赤く、濡れ、乱れ、目から意味が流れ落ちかけていた。それでも知性は残る。今起きていることを理解できるほどに。だがもう全てを支配してはいない。ただ内側から見つめ、自分の中にこれほどの欲望があったことを信じられずにいる。
脚の間へ立つと、シアナは下を見て、恐怖と興奮の混合に青ざめた。
「それ……」
唾を呑む。
「大きすぎます」
「ああ」
「解剖学的には可能だと理解しています。でも……」
「シアナ」
黙る。
「ゆっくりする」
頷いた。
「はい」
リラの時より慎重に入った。
それでも最初の圧だけで、シアナは目を固く閉じ、卓の縁を掴んだ。身体はさらに狭く、きつい。徐々に力を増し、ほとんど耐えがたいほどゆっくり押し広げる。彼女が力を抜こうとし、学者の頭が身体へ、可能だ、息をしろ、恐怖と欲望は同じ呼吸に同居できると必死に説明しているのが見える。
だが身体はうまく従わない。
彼は止まった。
「息をしろ」
「やって……います」
「俺を見ろ」
目を開く。
もう少し強く押した。
中へ入る。
シアナが啜り泣いた。
自ら許した、新しく、恐ろしく、きつすぎる侵入。それに耐えていることを自分で信じられない。
すぐには先へ動かない。
最初の満たされた感覚へ慣れさせる。
シアナは速く息をし、指を震わせ、顔を火照らせた。気配にはまだ恐怖が鳴る。その下から慎重で、疑い深く、ほとんど驚いた快楽が上がってくる。
「痛いか?」
すぐには答えない。
「はい。圧がとても強い。入口はほとんど限界まで広がっています。中には……あなたが多すぎる。形も、太さも、少し動くだけで壁を擦るのも分かります。内側から引かれて、とてもきつい。でも……」
息を詰まらせ、それでも言い切った。
「抜かないでください」
正確だ。
彼は抜かず、待った。
数呼吸のあと、彼女の腰がほんの少し動く。
「何だ?」
シアナは緊張した深い息を吐いた。
「動いてください」
次の一突きが、さらに深く入った。
一度に半分までは進めない。身体が熱くきつく締めつけ、数ミリごとに抵抗している。短く動き、止まり、もう少し、また止まる。彼女は震え、時折小さく叫び、唇を強く噛んだ。彼は頬へ触れて解かせる。
「噛むな」
「すみません」
「謝るな」
彼女は頷き、さらに深く入るとまた声を漏らした。
リラとは全く違う。
リラは力と力、欲望と覚悟、権力と自覚した帰属の衝突だった。
シアナは、開きたがりながら、鍵の一音ごとに恐れる複雑な錠のように開く。身体が少しずつ彼を理解し、恐怖が驚きと快楽へ道を譲り、気配の味から鋭さが減って暖かな深みが増していく。
やがて四分の三ほどまで入った。
彼女には、それでも多い。
大きな喘ぎが漏れると手で口を覆った。フョードルは手を退ける。
「駄目だ」
「でも……」
「聞きたい」
これ以上あり得ないほど赤くなり、それでも従った。
彼はきわめてゆっくり動いた。広げられる感覚と圧力に慣れる時間を与える。シアナは脚を開いて卓に横たわり、髪を乱し、もう恐怖を中心にはしていない目で彼を見る。恥じるべきか、もっと求めるべきか、まだ決められないように。
「黙るな」
彼女は唾を呑んだ。
「もっと……あなたが欲しい」
「正確に言え」
顔はほとんど絶望していた。
だがもう、抑制は崩れている。
「もっと深く。深く入ってください」
さらにゆっくり押す。きつい。シアナは叫んだが、今度は恐怖より快楽がはるかに大きい。身体が譲り始め、濡れた熱がより確かに包み、ようやく耐えるだけではなくなる。
「もっと強く、私を貫いて」
フョードルは目を見る。
羞恥が震えとなって走る。
それでも止まらない。
「最後まで。お願いします。あなたが最後まで入るところを感じたい」
そこで葡萄酒が頭へ回った。
制御を失わず、ゆっくり進む。シアナは身を反らし、肩を掴み、自ら腿をさらに開いた。服従する以外にも、自分で助けられるとようやく悟ったように。一突きごとに残った丁寧さが奪われ、もう言葉を選ばず囁いた。
「はい……貫いて……もっと深く……全部感じたい」
彼は律動を保つのがやっとだった。
「全部?」
彼女が頷く。濡れた目、燃える顔、途切れる声。
「入ってくるところ。広げるところ。私が締めつけているところ。中を滑るところ。あなたの血管一本一本まで分かります」
口にした途端、罪を告白したように自ら身を縮める。
彼が腰を進める。
シアナは叫んだ。
「そうだ」
彼女は腕を絡める。
「突いてください。お願い。手加減しすぎないで。こうされたい。動いてほしい」
抱いてほしいと願う段階は、もう過ぎた。
今は動作を求めている。
乱暴にではない。シアナにはまだ注意が必要だった。だが注意は欲望を抑えるものではなく、精密さになった。一突きごとに計り、深く、容赦なく。抵抗、熱、震え、少しずつ多くを受け入れる身体、恐怖が露わな欲望へ溶け、願う前から次の動きを待つ身体を感じる。
シアナはもう黙らなかった。
二十分前には欲望を感情負荷と記そうとしていた女には、あまりに生々しく露骨な言葉になった。
「全部……感じます……大きい……止めないで……貫いて……はい、君主様、そこ……」
フョードルは上から見つめた。
乱れた髪。奇跡的にまだ頬に残る墨染み。動くたび揺れる胸。開いた腿。肩へ食い込んでは卓の縁を掻く指。知性は消えていないが、ようやく身体の喉を締めるのをやめた目。
彼の感覚は重く、暗かった。
リラとは、権力が権力へ応えた。
シアナとは、精密さと羞恥と有用性の下へ何年も隠れていたものを抱いている。壊すのではない。引き出し、外へ出させる。露骨な言葉一つ一つに解放があり、単なる服従より強く彼を昂らせた。
彼女が突然、自分から身体を引き寄せた。
不器用に、必死に、ほとんど腹立たしげに。
「そんなふうに見ないでください」
「なぜ?」
「もっと強く犯してほしくなるから」
彼は笑った。
「なら見る」
彼女の喘ぎには、もう恐怖がなかった。
角度を少し変える。
シアナは鋭く身を反らした。
「はい……そこ。離れないで。もう一度、同じところ」
同じ動きを繰り返す。
綺麗に話す試みは完全に消えた。
「抱いて。そう。深く。お願い。私、もう……」
腿と腰を押さえる。
「俺を見ろ」
彼女は試みた。
ほとんどできた。
目を大きく開き、呼吸を失い、全身が張り詰める。小さな翼は暗い布の上で震え、尾は卓の縁を打ち、胸は高く持ち上がった。シアナは彼の称号を、呼びかけではなく最後の支えのように口にした。
そして波が来た。
最初は静かに。
内側から。
息を吸ったまま止まり、指を彼へ食い込ませ、唇を開くが声はない。次の瞬間、低く掠れた、書類の陰のシアナからは想像できない声が弾けた。
気配が柔らかく深く燃え上がる。ついに舌の上で全てを開いた葡萄酒のように。
彼は速度を落としながら動き続け、一人で通らせなかった。一突きごとに新しい震える声を引き出す。彼女はしがみつき、意味のない言葉を囁いた。起きていることの中で、声まで失わないために。
「君主様……お願い……もっと犯して……あと少し……離さないで……」
離さなかった。
自分の絶頂には、思ったよりゆっくり到達した。
この瞬間を壊したくない。彼女の初めてを、粗暴な力の誇示にはしたくない。受け入れられる限り深く入り、重い波が全身を通る時、彼女を身体へ抱き寄せた。
実験室の影は震えたが、暴発しなかった。
よい兆候だ。
シアナは力を失い、混乱し、目を濡らして横たわった。災害を生き延びると同時に、怖くて尋ねられなかった問いへの答えを得たように。
彼はゆっくり抜いた。
彼女が震える。
すぐ起き上がろうとした。
「身体を……整えて、陣も確認して、それから……」
胸へ掌を置き、その場へ留める。
「寝てろ」
シアナは固まった。
「はい」
布を取り、腿を丁寧に拭いてから、座るのを手伝った。目の置き場を知らない。今しがたのあとではほとんど可笑しいが、それこそシアナだった。
「痛いか?」
「はい」
「強く?」
彼女は考える。
「耐えられます。それに……痛いだけではありません」
言った途端、また赤くなる。
フョードルは笑った。
「いい報告だ」
「報告ではありません」
「進歩したな」
彼女も少し笑い、そっと彼の手へ触れた。
「君主様」
「何だ?」
「これで何が変わるのか、分かりません」
「今は何も」
彼女が顔を上げる。
「何も?」
「お前はシアナ・ヴェイルのままだ。財務、研究、報告、助言、酷い書類の山。俺は結果を求める者のままだ」
彼女は安堵の息を吐いた。
そして少し落胆したようにも見えた。
彼は気づいた。
「ほかのことは、必要に応じて理解していく」
彼女は頷く。
「はい、君主様」
頬へ触れた。
「これから俺が見るたび、恥ずかしさで死のうとするな」
「約束できません」
「それでいい」
「〈影〉の放出制御について……その、感情負荷時の指針を……」
言葉が止まる。
フョードルは笑った。
「作れ」
「書面で?」
「書面で」
「表も?」
「そのほうが楽なら」
初めて、ほぼ普通に笑った。
「楽です」
しばらくして実験室を出た。
リラは扉の前ではなく、廊下の少し先で待っていた。
監視役に見えない程度には遠く、彼が視線を探さずに済む程度には近い。
彼を見て、実験室の扉を見て、また彼を見る。
何も言わなかった。
だが全て理解した。
その「全て」は、言葉にならないまま生きたものとして二人の間へ残った。
「書類は?」
「整理済みです。緊急事項は別板に。マルヴェインからエストレンの第一報も。アレルト王子は評議会で演説し、暫定的な国境維持を確認しました。神殿は王の死の調査を要求していますが、まだ非難はありません」
「よし」
「シアナは?」
声は平静だった。
平静すぎた。
彼は目を逸らした。
「大丈夫だ。少し負荷が多い」
リラが頷く。
「いつも負荷を抱えています」
「リラ」
彼女が目を上げる。
嫉妬は愚かだと言おうとした。お前の場所は変わらないと。宮殿も、権力も、身体も、欲望も、かつての人間の習慣より広くなった。痛み始める前に理解したほうがいいと。
だが彼女はすでに理解していた。
気配には嫉妬がある。細く鋭く、ほぼ即座に脇へ除けられた。その隣には理解と規律、影の君主が自分一人のものにはならないという理由で、自分自身に敗れまいとする女の不愉快な成熟があった。
「分かっています」
静かな声だった。
何を、と彼は尋ねなかった。
彼女は全てへ答えた。
「そうか」
二人は私的翼棟へ歩き出した。
リラは右側の位置についた。
いつもより遠くもなく。
近くもなく。




