第22章
夕食は、ほとんど無言で終わった。
リラは右側に座っていた。秘書としてではなく、ただ傍に。彼女も普段より静かだった。おそらく同じことを考えている。あるいは、その「同じこと」が制御不能の惨事へ変わらないようにする方法を。
「あの言葉を取り消すべきだったと思うか?」
やがてフョードルが尋ねた。
リラは意味が分からないふりをしなかった。
「分かりません」
「珍しい答えだな」
「正直な答えです」
「助言者としてなら?」
彼女は卓の縁へ手を置いた。
「エストレン王は危険です。その死が有益になる可能性もある。ですが隣国王の『有益な死』は、枠を設けずマルヴェインへ預けてよい考えではありません」
「もう遅いか?」
「おそらく」
彼は目を見つめた。
「リラ個人としては?」
彼女は視線を受け止める。
「今日、あなたは初めて、目の前に立つ者以外も動かせると実感なさいました」
「それで?」
「重い感覚です」
「ああ」
彼は皿を遠ざけた。
空腹はある。だが、もう食べたくなかった。
「マルヴェインは実行するか?」
「あなたが望んでいると判断すれば。あるいは必要だと判断し、結果を出せばあなたが受け入れると思えば」
「それは違う」
「彼にとっては、いつも違うとは限りません」
フョードルは笑みのない笑いを漏らした。
「危険な男だ」
「はい」
「必要でもある」
「はい」
二人はまた黙った。
夜、自室へ戻るとリラが尋ねた。
「残りましょうか?」
数秒考えた。
身体は反応している。当然だ。もう彼女の温かさ、声、肩へ頭を置く感覚、身体を開く様子、「あなたのものです」と告げる声を知っている。
だが疲労は欲望より深かった。
暗い疲れではない。ただ重い。
帯を外し、卓へ置いた。
「残れ。ただし今日は眠る」
リラはわずかに頭を傾けた。
「はい」
落胆も驚きもない。
柔らかな受容だけ。
隣室で着替え、簡素な夜着で戻ってきた。彼はすでに横になり、翼はいつもの窪みに収まり、尾は脇へ置かれていた。リラは最初、いつもの慎重な距離を空けて隣へ横になる。短い間のあと、少し近づいた。
彼が腕を上げる。
彼女は肩へ頭を載せた。
昨夜と同じ。
ただ、熱はない。
肩に載る頭の重み。
暖かい呼吸。
脇へ一部が重なる翼。
「リラ」
暗闇の中で呼んだ。
「はい?」
「明日、マルヴェインがもうエストレンで何かを始めたと知ったら、すぐ俺に言え」
「はい」
「心配をかけないほうがいいと、あいつが思っても」
「その場合は、特に」
彼は目を閉じた。
「よし」
リラはすぐには答えなかった。
やがて小さく言う。
「一日で全てをお決めになる必要はありません」
フョードルは笑った。
「世界は同意してないらしい」
「世界は滅多に合理的に振る舞いません」
「なら、俺と共通点がある」
肩口でリラが微かに笑った。
見えたというより、肌で感じた。
眠りはすぐには来なかった。
エストレンの地図が目の前に残る。街道。徴税区域。国境の砦。王の名。王子の名。全てを理解したマルヴェインの笑み。
ロガンは消したほうがいい。
今も、それがただの考えだったのか分からない。
あるいは、すでに命令の始まりだったのか。
リラの呼吸は穏やかだった。
宮殿も静かだった。
彼はその寝息を聞き続け、やがて頭の中の地図が滲んでいった。




