第13章
軍を前にした演説は、昼食のあとに行われた。
広場ではない。黒の城塞には、普通の意味での広場などなかった。石造りの穹窿の下に広大な練兵場があり、そこへ中央守備隊、士官、各家の旗手、辺境部隊の代表が整列していた。
アズガルは余計な装飾を一切加えず、彼らを並ばせた。
それがありがたかった。
鎧をまとった魔族の列。体格も、角も、翼も違う。爪、尾、獣の特徴、人間の顔、人ならざる瞳。
それでも隊列は一つだった。
厳格で、生きている。
全員が彼を見ていた。
廷臣とは違う目で。
廷臣は値踏みする。軍は重さを量る。
フョードルは高い襟も、余計な鎖も、芝居がかった外套も身につけずに前へ出た。暗色の戦装束、幅広の帯、腰には儀礼用の剣。翼は畳み、両手は空けてある。
アズガルは少し後ろの左側。
リラは右側。すでに馴染んだ位置だ。
練兵場の端にはマルヴェインの姿も見えた。当然、来ている。これを見逃すはずがない。
フョードルは長く話そうとはしなかった。
「昨日、俺は他人の予言を理由に殺されかけた人間として、この世界へ来た」
彼は言った。
「今日、影の君主としてお前たちの前に立っている」
練兵場は静まり返っていた。
「俺は、お前たちの戦争をもう理解しているとは言わない。知らないからだ。次の月までに勝利すると約束するつもりもない。初日にそんな約束をばらまく者は、嘘つきか、血の代価を知らない者だ」
アズガルが、ほとんど気づかないほど小さく頷いた。
「だが、分かっていることもある。俺は今ここにいる。背後から誰かに操られる、玉座に載った肉体じゃない。俺が――ここにいる。国境が見える。借金が見える。長年お前たちの領地を圧迫してきた〈光〉が見える。そして国庫も、諸家も、かつての権力も、軍は誓いや約束を食って生きているわけではないと忘れていた時でさえ、持ちこたえねばならなかった軍が見える」
隊列の中で何かが変わった。
注意が、密度を増した。
「宮殿の装飾のために、守備隊への補給を犠牲にはしない。辺境部隊への供給は見直す。誠実に戦線を守った指揮官の声は聞く。兵士の血を諸家の寵愛と引き換えにした指揮官は、必ず見つけ出す」
彼は間を置いた。
「俺を愛せとは言わない。まだ早い。言葉だけで信じろとも言わない。愚かだからだ。ただ一つだけ告げる。影の君主は存在する。ここにいる。そしてまず、本当に〈影〉へ仕えていた者と、その名の陰に隠れていた者を見極める」
静寂は、もう一秒続いた。
それからアズガルが拳で胸甲を打った。
一度。
重く。
士官たちが続く。
やがて練兵場の全てが続いた。
金属が金属を打ち、石が音を受け止め、穹窿の下に承認の重い轟きが立ち上がった。
歓喜ではない。
盲信でもない。
彼が望んでいたのは、それだった。
余計な言葉を重ねず、踵を返して立ち去った。
廊下へ出たところで、満足げな顔のマルヴェインが追いついてきた。
「大仰さで演説を台無しにする寸前で、見事に踏みとどまりましたね」
「褒めてるのか?」
「最大限に」
「軍は信じたか?」
アズガルが答えた。
「軍は聞きました」
「違いは?」
「行動のあとで信じます」
「公平だな」
マルヴェインが付け加える。
「その代わり諸家は、あなたが礼を受けることではなく、補給から始めると軍を通じて知るでしょう。気に入りませんよ」
「結構。今日は実りの多い日だ」
リラは隣を黙って歩いていた。
彼女が何度か自分を見ていたことに、フョードルは気づいた。昨夜のような目ではない。秘書の目でもない。
むしろ、権力について抱いていた古い像を、新しい顔に合わせて組み直そうとする者の目だった。




