第七話 懐かしい部屋
扉が開いた。
ゆっくりと。
音もなく。
私は動けなかった。
レオンハルトも同じだった。
ただ目の前の光景を見つめている。
「……」
そこにあった。
本当に。
あった。
白い壁。
木目調の床。
見慣れたベッド。
机。
本棚。
カーテン。
全部。
全部、覚えている。
「……私の部屋だ」
気付けば呟いていた。
前世の。
私の部屋。
最後に見たのはいつだっただろう。
思い出せない。
でも。
間違いない。
ここは。
私が生きていた場所だ。
「リリアーナ」
レオンハルトが小さな声で呼んだ。
「入ってもいいか?」
私は頷いた。
先に足を踏み入れる。
床の感触。
空気。
匂い。
全部同じだった。
「すごい……」
後ろからレオンハルトの声が聞こえる。
彼も部屋に入ってきた。
ゆっくりと辺りを見回している。
「これが前世の世界なのか」
「うん」
私はベッドに腰掛けた。
懐かしい。
本当に懐かしい。
思わず横になりたくなる。
いや。
もう横になろう。
私はそのままごろんと寝転がった。
柔らかい。
最高だった。
「何をしている」
「懐かしんでる」
「そうか……」
レオンハルトはまだ部屋を見回していた。
本棚。
机。
壁。
順番に触っている。
その姿は、まるで宝物を見つけた子供のようだった。
「あ」
ふと。
視界の端に見覚えのあるものが映った。
テレビ台。
その横。
積み上げられたケース。
私は勢いよく起き上がった。
「どうした?」
「ある」
「何がだ?」
私は棚へ駆け寄った。
間違いない。
ゲームソフトだ。
しかも。
「うそ」
思わず声が漏れた。
レオンハルトも横から覗き込む。
「何だ?」
「これ」
私は震える手で一本のケースを持ち上げた。
見慣れたパッケージ。
綺麗な少女。
周囲を囲む美形の男性達。
タイトル。
『聖なる花と七つの誓い』
間違いない。
この世界の元になった乙女ゲームだ。
「リリアーナ?」
レオンハルトが不思議そうに私を見る。
私はしばらく黙った。
いや。
待って。
何であるの?
いや、前世の部屋なんだからあるのは当然なのか。
でも。
これを見せたら。
いや。
でも。
いずれ話す予定だったし。
いやでも。
「……どうした」
レオンハルトの声が少しだけ真剣になる。
私は大きくため息を吐いた。
面倒だ。
とても面倒だ。
でも。
もう隠せない。
「レオンハルト」
「何だ」
私はゲームのケースを抱えた。
「今から、とても変な話をする」
レオンハルトは真剣に頷いた。
「聞こう」
「笑わない?」
「笑わない」
「信じる?」
「努力する」
それは信じていないのでは。
私はもう一度ため息を吐いた。
そして。
この世界最大の秘密を口にした。
「この世界はね」
「うん」
「私が前世で遊んでたゲームの世界なの」
沈黙。
一秒。
二秒。
三秒。
レオンハルトがゆっくりと瞬きをした。
「……は?」
今日二度目の「は?」だった。




