表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄される予定でしたが、王太子殿下が乙女ゲームをプレイした結果、なぜか溺愛されています  作者: S@Y@


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/61

第五十七話 彼女の願い


 温室には、静かな空気が流れていた。


 セシリアは俯いたまま、小さく息を吸う。


「……信じてもらえないと思っていました。」


「信じる。」


 レオンハルトは即座に答えた。


「私たちも、常識では説明できない経験をしてきた。」


 リリアーナも優しく頷く。


「だから安心して話して。」


 セシリアは目を閉じた。


 覚悟を決めるように。


「私……気付いたら、この世界にいました。」


「最初は夢だと思ったんです。」


「でも、違いました。」


 少しずつ、言葉を紡いでいく。


「ここは、私が遊んでいた乙女ゲームの世界でした。」


 レオンハルトは黙って耳を傾ける。


「私は、主人公のセシリア・エヴァンズになっていて……。」


 その声は震えていた。


「ゲームでは、リリアーナ様は悪役令嬢でした。」


 リリアーナは何も言わない。


「だから私は……。」


 セシリアは拳を握り締める。


「物語を壊したら、みんなが不幸になると思っていました。」


「だからゲーム通りにしようとしたのか。」


 レオンハルトが静かに尋ねる。


 セシリアは涙をこぼしながら頷いた。


「はい……。」


「私には、それが正しいことだと思えて。」


「でも。」


 涙は止まらない。


「リリアーナ様は優しいし、レオンハルト殿下も全然違う。」


「ゲームと何もかも違っていて……。」


「何が正しいのか分からなくなりました。」


 リリアーナは静かにセシリアの手を握る。


「ありがとう。」


「え……?」


「話してくれて。」


 セシリアは目を見開く。


「怖かったよね。」


「……はい。」


「でも、もう大丈夫。」


 リリアーナは穏やかに微笑んだ。


「あなたは一人じゃない。」


 その言葉を聞いた瞬間。


 セシリアの瞳から、大粒の涙があふれた。


 ずっと張り詰めていた糸が、切れたようだった。


 その時。


『……ありがとう。』


 頭の奥で、少女の声がした。


 今までよりも、ずっと優しく。


 セシリアは涙を流したまま、胸に手を当てる。


「また……聞こえた。」


 リリアーナとレオンハルトは顔を見合わせる。


 本当のセシリアは。


 確かに、その身体の中で生きていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ