第五十六話 打ち明ける時
翌日の放課後。
レオンハルトはセシリアを温室へ呼び出した。
色とりどりの花が咲く静かな場所。
そこには、リリアーナもいた。
「リリアーナ様も?」
セシリアは少し驚いたように目を瞬かせる。
「うん。」
リリアーナは柔らかく微笑んだ。
「少し話したいことがあって。」
セシリアは小さく頷き、椅子へ腰を下ろす。
しばらく静かな時間が流れた。
最初に口を開いたのはレオンハルトだった。
「セシリア。」
「はい。」
「君は、この世界が何かの物語だと思ったことはあるか。」
セシリアの肩が、ぴくりと震えた。
「……え?」
「例えば。」
レオンハルトは静かな声で続ける。
「誰かが作った物語。」
「決められた未来。」
「変えられない運命。」
セシリアの顔から、少しずつ血の気が引いていく。
「どうして……。」
小さな声が漏れた。
「どうして、それを……。」
レオンハルトは答えない。
代わりに、リリアーナがゆっくり口を開く。
「私ね。」
セシリアが顔を上げる。
「前世の記憶があるの。」
「……!」
「この世界がゲームの世界だって知っていた。」
セシリアは目を見開く。
「そんな……。」
「最初は、私も信じられなかった。」
リリアーナは静かに続ける。
「でも、本当だった。」
「そして。」
レオンハルトが言葉を継ぐ。
「私はゲームをプレイした。」
「未来を変えるために。」
セシリアは何も言えなかった。
頭が真っ白になる。
「だから。」
リリアーナは優しく言った。
「一人で悩まなくていい。」
「もし困っているなら、話してほしい。」
セシリアの瞳が揺れる。
話していいのだろうか。
信じていいのだろうか。
その時だった。
『リリアーナ様……。』
「!」
また、あの声が聞こえた。
今までで一番、はっきりと。
『助けて……。』
セシリアは思わず胸を押さえる。
「セシリア?」
リリアーナが立ち上がる。
「大丈夫?」
「私……。」
セシリアの声が震える。
「私……もしかしたら。」
涙が一粒、頬を伝った。
「誰かの身体を……使っているのかもしれません。」
その言葉に。
リリアーナとレオンハルトは静かに頷いた。
ようやく。
三人は、本当の話を始めることができた。




