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婚約破棄される予定でしたが、王太子殿下が乙女ゲームをプレイした結果、なぜか溺愛されています  作者: S@Y@


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第五十四話 打ち明けられない真実


 放課後。


 教室には、もうほとんど人が残っていなかった。


 セシリアは机に座ったまま、ぼんやりと窓の外を眺めていた。


『返して……。』


 あの声が、頭から離れない。


「……。」


 自分は、本当にセシリア・エヴァンズなのか。


 それとも。


 別の誰かが、この身体を奪ってしまったのか。


 答えは分からない。


 分からないのに、不安だけが大きくなっていく。


「まだいたのか。」


 聞き慣れた声に顔を上げる。


 レオンハルトだった。


「あ……殿下。」


「帰らないのか。」


「少し考え事をしていて。」


 レオンハルトはセシリアの向かいの席へ腰を下ろした。


 静かな時間が流れる。


「……人は。」


 レオンハルトがぽつりと口を開く。


「誰にも話せない秘密を抱えることがある。」


 セシリアの肩がわずかに震えた。


「だが。」


「一人で抱え続ける必要はない。」


 その言葉に、セシリアは俯く。


 胸の奥で何かが揺れた。


 話してしまいたい。


 助けてほしい。


 そんな気持ちが込み上げる。


 けれど。


(言えない……。)


 もし本当に、自分が誰かの身体を奪っているのだとしたら。


 知られた瞬間、この居場所を失う。


 怖かった。


「ありがとうございます。」


 セシリアは無理に笑顔を作る。


「でも、大丈夫です。」


 レオンハルトはその笑顔を見つめる。


 そして、小さく息を吐いた。


「そうか。」


 それ以上は何も言わず、立ち上がる。


 教室を出る直前。


 レオンハルトは振り返らずに言った。


「……困った時は、一人で答えを出そうとするな。」


 静かに扉が閉まる。


 教室には、再びセシリア一人だけが残された。


 その夜。


 ベッドへ入っても眠れなかった。


『お願い……。』


 また、あの声が聞こえる。


『リリアーナ様……。』


「どうして……。」


 セシリアは涙をこぼした。


「私は、どうしたらいいの……。」


 その問いに答えられる者は、まだ誰もいなかった。

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