第五十二話 真実への一歩
翌日。
放課後。
レオンハルトはセシリアを中庭へ呼び出した。
「お話とは、何でしょうか。」
セシリアは少し緊張した様子で尋ねる。
「安心しろ。」
レオンハルトは穏やかに答えた。
「責めるつもりはない。」
その言葉に、セシリアは少しだけ肩の力を抜く。
「実は、一つ聞きたいことがある。」
「はい。」
「君は最近、"決まった未来"を変えたくないと思ったことはあるか。」
セシリアの心臓が大きく跳ねた。
(どうして……。)
そんなことを聞くの。
「……ありません。」
少しだけ視線を逸らしながら答える。
レオンハルトは静かに頷いた。
「そうか。」
それ以上は追及しない。
しばらく沈黙が流れた。
やがてレオンハルトは空を見上げ、小さく呟く。
「私はな。」
セシリアは顔を上げる。
「未来は変えられるものだと思っている。」
「……え?」
「たとえ誰かが決めた物語だったとしても。」
「人は、自分の意思で未来を選べる。」
セシリアは言葉を失った。
ゲームのレオンハルトなら。
こんなことは言わない。
「では、失礼する。」
レオンハルトはそれだけ言って歩き去る。
セシリアは、その背中を見つめ続けていた。
◇ ◇ ◇
その夜。
エヴァンズ家。
ベッドに横になったセシリアは、何度もレオンハルトの言葉を思い返していた。
『未来は変えられる。』
「……そんなはずない。」
ゲームには決まった結末がある。
だから、それに従うのが正しい。
そう信じている。
なのに。
今のレオンハルトは。
ゲームの人物とは思えないほど、自分の意思で未来を選ぼうとしていた。
「どうして……。」
小さく呟いた、その時だった。
『……たすけて。』
「!」
頭の奥で。
かすかな少女の声が響く。
『リリアーナ……様……。』
「誰……?」
セシリアは飛び起きる。
部屋には誰もいない。
けれど、その声は確かに聞こえた。
胸を押さえる。
鼓動が速い。
「今の声……。」
それは、自分の声ではなかった。
そして。
その声の主こそが、本当のセシリアであることを。
彼女はまだ知らなかった。




