第四十七話 眠る少女
数日後。
放課後の王宮。
レオンハルトとリリアーナは、国王の執務室を訪れていた。
「レオン、お前から呼び出すとは珍しいな。」
国王が書類から顔を上げる。
「何かあったのか?」
「父上。」
レオンハルトは静かに口を開いた。
「少々、お話ししたいことがあります。」
その声音の真剣さに、国王の表情も引き締まる。
「……リリアーナもいるということは、ただ事ではないな。」
「はい。」
リリアーナも頷いた。
国王は側近たちへ目を向ける。
「少し席を外してくれ。」
全員が退室し、部屋には三人だけが残った。
「それで?」
レオンハルトは一呼吸置いてから話し始めた。
「セシリア・エヴァンズの様子がおかしいのです。」
「体調でも崩したのか?」
「違います。」
レオンハルトは首を振る。
「人格そのものが変わったように感じます。」
国王は眉をひそめた。
「人格……?」
「以前のセシリアなら決してしない行動を繰り返しています。」
リリアーナも続ける。
「私も同じように感じています。」
国王は腕を組み、静かに二人の話を聞いていた。
「証拠はあるのか?」
「決定的なものはありません。」
レオンハルトは正直に答える。
「ですが、私たちしか知らないはずの言葉に反応しました。」
「ほう。」
「偶然では説明できません。」
しばらく沈黙が流れる。
やがて国王は口を開いた。
「……リリアーナ。」
「はい。」
「お前は以前、『魂』について話していたな。」
リリアーナは目を瞬かせる。
前世の部屋で、魂や転生について語ったことがある。
国王も王妃も、その話を聞いていた。
「もし。」
国王は慎重に言葉を選ぶ。
「魂が入れ替わるようなことが、本当に起こるのだとしたら。」
リリアーナは静かに頷いた。
「可能性はあります。」
「……。」
執務室が静まり返る。
国王は大きく息を吐いた。
「ならば、一人心当たりがある。」
「心当たり?」
「ああ。」
国の西に住む、大賢者だ。
「精霊や魂の研究を、生涯続けている人物がいる。」
レオンハルトの表情が変わる。
「会わせていただけますか。」
「もちろんだ。」
国王は迷わず頷いた。
「もし本当にセシリアに何か起きているなら、見過ごすわけにはいかん。」
その言葉に、リリアーナは胸をなで下ろした。
ようやく。
セシリアを助けるための道が見え始めたのだった。




