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婚約破棄される予定でしたが、王太子殿下が乙女ゲームをプレイした結果、なぜか溺愛されています  作者: S@Y@


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第四十六話 揺さぶり


 翌日。


 レオンハルトは一人、学園の図書館へ向かっていた。


 目的は読書ではない。


 確かめたいことがあった。


「レオンハルト殿下?」


 振り返ると、そこにはセシリアが立っていた。


「奇遇ですね」


「ああ。」


 レオンハルトは穏やかに頷く。


「本を借りに来たのか。」


「はい。」


 セシリアは笑顔で答えた。


 その笑顔を見ながら、レオンハルトは静かに切り出す。


「少し話せるか。」


「もちろんです。」


 二人は窓際の席へ腰を下ろした。


「最近、体調はどうだ。」


「もう大丈夫です。」


「そうか。」


 短い沈黙が流れる。


 レオンハルトは机に肘をつき、何気ない口調で言った。


「リリアーナが、新しい魔道具を考えている。」


「そうなんですね。」


「名前も、変わっている。」


 セシリアは自然に相槌を打つ。


「昨日話していた『スマートフォン』もそうだ。」


 一瞬だけ。


 セシリアの瞳が揺れた。


 だが、今度はすぐに表情を整える。


「素敵なお名前ですね。」


「そうか。」


 レオンハルトはそれ以上追及しなかった。


 代わりに、本棚へ視線を向けたまま呟く。


「他にも候補があってな。」


「候補ですか?」


「ああ。」


 そして、ごく自然な口調で言う。


「『インターネット』という名前も悪くないと思った。」


 その瞬間だった。


「っ!」


 セシリアは息を呑んだ。


 目が大きく見開かれる。


 その反応は、『スマートフォン』を聞いた時よりも明らかだった。


 しかし。


「……インターネット?」


 セシリアは首を傾げる。


「不思議なお名前ですね。」


 笑顔は崩れていない。


 だが。


 膝の上で握られた手は、小さく震えていた。


「そうだな。」


 レオンハルトは静かに立ち上がる。


「時間を取らせた。」


「いえ。」


 セシリアは頭を下げた。


 ◇ ◇ ◇


 放課後。


 ローゼンベルク公爵家。


「どうだった?」


 リリアーナが尋ねる。


 レオンハルトは迷うことなく答えた。


「間違いない。」


「え?」


「『スマートフォン』だけなら偶然も考えた。」


「うん。」


「だが、『インターネット』にも反応した。」


 リリアーナは静かに息を呑む。


「つまり……。」


「ああ。」


 レオンハルトは真っ直ぐリリアーナを見た。


「セシリアの中には、この世界の人間ではない誰かがいる。」


 その言葉に、リリアーナは複雑な表情を浮かべる。


「本当のセシリアは……。」


「まだ分からない。」


 レオンハルトは静かに首を振った。


「だが、必ず取り戻す。」


 その瞳には、強い決意が宿っていた。

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