第四十三話 次のイベント
数日後。
ローゼンベルク公爵家。
レオンハルトは机の上に一冊のノートを広げていた。
ゲームを何度もプレイし、自分でまとめた攻略記録。
イベントの発生時期。
登場人物の行動。
好感度が変化する条件。
未来を変えるために、何度も書き足し、読み返してきた大切な一冊だった。
「次は……」
ページをめくる。
「中庭のイベントか。」
リリアーナがノートを覗き込む。
「どんなイベントだっけ?」
「主人公が落としたハンカチを、私が拾う。」
レオンハルトは淡々と答える。
「そこから会話が始まり、好感度が上がるイベントだ。」
「ああ、あったね。」
リリアーナも思い出したように頷く。
「前回は教材を落とすイベントだった。」
「ああ。」
レオンハルトはノートを閉じる。
「そして、セシリアはゲーム通りに動いた。」
「偶然とは思えないよね。」
「だから今回は確かめる。」
リリアーナは首を傾げた。
「どうやって?」
「邪魔はしない。」
レオンハルトは静かに言う。
「最後まで見届ける。」
「イベントが本当に再現されるのか、確認するってこと?」
「ああ。」
もし今回もゲーム通りなら。
偶然では済まされない。
リリアーナも真剣な表情で頷いた。
「分かった。」
◇ ◇ ◇
翌日。
昼休み。
セシリアは一人、中庭へ向かって歩いていた。
(今日は……ハンカチのイベント。)
ゲームでは。
風に飛ばされたハンカチを、レオンハルトが拾う。
そして二人は言葉を交わし、距離を縮める。
(今度こそ。)
セシリアはポケットから白いハンカチを取り出した。
その時。
ふわり、と風が吹く。
(今!)
セシリアは手を離した。
白いハンカチが風に乗って舞い上がる。
その様子を。
少し離れた木陰から、リリアーナとレオンハルトが静かに見つめていた。
「始まったね。」
リリアーナが小さく呟く。
「ああ。」
レオンハルトの視線は、ハンカチではなくセシリアへ向けられていた。
ゲームを再現しようとしているのか。
それとも、本当に偶然なのか。
その答えは、もうすぐ分かる。




