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婚約破棄される予定でしたが、王太子殿下が乙女ゲームをプレイした結果、なぜか溺愛されています  作者: S@Y@


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第四話 秘密


 レオンハルトは今日もローゼンベルク公爵家に来ていた。


 最近では使用人達も慣れたものだ。


 王太子が来ても慌てない。


 お茶を用意する。


 お菓子を並べる。


 そして私の部屋へ案内する。


 いつもの流れである。


「リリアーナ」


「こんにちは」


「こんにちは」


 レオンハルトは満足そうに頷いた。


 私は本を閉じる。


 今日も創造魔法で何か作れと言われるのだろう。


 そう思っていた。


 だが違った。


「今日は何を読んでいる?」


「冒険譚」


「面白いか?」


「まあまあ」


 珍しく普通の会話だった。


 レオンハルトも創造魔法より本の方に興味を示している。


 どうしたのだろう。


 熱でもあるのだろうか。


「失礼な顔をしているな」


「してない」


「している」


 していない。


 たぶん。


 そんなことを話しながらページをめくる。


 すると挿絵が目に入った。


 剣を持った冒険者。


 巨大な魔物。


 その瞬間だった。


「懐かしいな」


 ぽろりと口から零れた。


「懐かしい?」


 レオンハルトが顔を上げる。


 私は固まった。


 しまった。


 完全に前世基準で考えていた。


「前にも読んだことがあるとかか?」


「そんな感じ」


「その本を?」


「違う」


「では何だ?」


 まずい。


 面倒な流れになった。


 私は本へ視線を戻した。


 だがレオンハルトは逃がしてくれない。


「リリアーナ」


「なに」


「何か隠しているな」


「別に」


「嘘だ」


 即答された。


 なぜ分かるのだろう。


 三歳児なのに鋭すぎる。


 未来の腹黒王子候補である。


「話したくないなら無理には聞かない」


 レオンハルトは少しだけ真面目な顔になった。


「ただ、お前は時々変だ」


「よく言われる」


「だろうな」


 失礼である。


 だが否定もできなかった。


 前世の記憶がある以上、どうしても普通の子供とは違う。


 考え方も。


 話し方も。


 好きなものも。


「創造魔法もそうだ」


 レオンハルトが続ける。


「見たこともない物ばかり作る」


「そうだね」


「どこで知ったんだ?」


 私は黙った。


 隠そうと思えば隠せる。


 でも。


 創造魔法の説明をする度に誤魔化すのも面倒だった。


 それに。


 レオンハルトは意外と口が堅い。


 誰かに言いふらす姿も想像できない。


「笑わない?」


「笑わない」


「本当に?」


「本当に」


 私は少し考えた。


 そして本を閉じる。


 レオンハルトも姿勢を正した。


 妙に緊張している。


 そんなに大した話ではないのだが。


「私ね」


「うん」


「前世があるの」


 沈黙。


 数秒。


 部屋の空気が止まった。


 レオンハルトが瞬きをする。


 一回。


 二回。


 三回。


「……は?」


 ようやく出てきた言葉がそれだった。


「だから前世」


「待て」


 レオンハルトが手を上げる。


「前世とは何だ」


「前の人生」


「前の人生?」


「うん」


 理解できていない顔だった。


 まあ当然だろう。


 私だって最初は信じなかった。


「生まれる前に別の人生があったの」


「そんなことがあるのか?」


「私にはあった」


 断言する。


 だって事実だ。


 前世の記憶は今でもはっきり残っている。


 学校。


 仕事。


 家。


 スマホ。


 全部覚えている。


「……本当か?」


「本当」


「証拠は?」


「ない」


 レオンハルトが黙った。


 そりゃそうだ。


 私も逆の立場なら信じない。


 だが。


「でも創造魔法で作る物は全部、その世界の物」


 そう言うとレオンハルトの表情が変わった。


 納得したらしい。


 確かに説明がつく。


 見たこともない玩具。


 見たこともない遊び。


 全部前世由来だ。


「なるほど……」


 レオンハルトは腕を組んだ。


 真剣な顔で考え込む。


 しばらくして。


「つまり」


「うん」


「お前の頭の中には、別の世界の知識が入っているのか」


「そんな感じ」


 レオンハルトの目が輝いた。


 嫌な予感がする。


 非常に嫌な予感がする。


「面白そうだな」


 やっぱり。


 私は思わずため息を吐いた。


 こうして。


 誰にも話したことのなかった秘密を、私は初めてレオンハルトへ打ち明けたのだった。

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