表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄される予定でしたが、王太子殿下が乙女ゲームをプレイした結果、なぜか溺愛されています  作者: S@Y@


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/61

第三十六話 高等部入学


 三年の月日が流れた。


 私たちは十五歳になった。


 そして今日。


 王立学園高等部の入学式を迎える。


 ゲームの物語が、本来ならここから始まる。


 ◇ ◇ ◇


「制服、久しぶりに新しくなったね」


 鏡の前でリリアーナは制服の襟を整える。


 初等部とは違い、高等部の制服は落ち着いた色合いで、大人びた印象だった。


「よく似合っている」


 レオンハルトが微笑む。


 三年前よりも身長が伸び、幼さはほとんど残っていない。


 王太子としての風格も、少しずつ身についていた。


「レオンも」


「ありがとう」


 そこへ扉が叩かれる。


「リリアーナ様、レオンハルト殿下」


 聞き慣れた声だった。


「セシリア」


 部屋へ入ってきたセシリアも、高等部の制服に身を包んでいる。


 柔らかな金色の髪を揺らし、以前よりもずっと大人びて見えた。


「お待たせしました」


「制服、似合ってる」


 リリアーナが素直に言う。


 セシリアは少し照れながら笑った。


「ありがとうございます」


 三人は顔を見合わせる。


 十二歳で入学してから三年。


 ずっと同じ時間を過ごしてきた。


 だから今さら緊張することもない。


「行こう」


 レオンハルトの一言で、三人は校舎へ向かった。


 ◇ ◇ ◇


 高等部の校舎は、初等部よりもさらに広く荘厳だった。


 新入生たちが次々と登校してくる。


「いよいよだね」


 リリアーナがぽつりと呟く。


「ああ」


 レオンハルトだけは、その言葉の意味を理解していた。


 ゲームの始まり。


 本来なら、ここからリリアーナは悪役令嬢として破滅へ向かう。


 そしてセシリアは、攻略対象たちと出会っていく。


 ――だが。


 その未来は、もう存在しない。


 二人はそう信じていた。


「教室はこちらです!」


 教師に案内され、三人は教室へ入る。


 窓際の席。


 中央の席。


 少し離れてはいるが、三人とも同じクラスだった。


「また一緒ですね」


 セシリアが嬉しそうに笑う。


「うん」


 リリアーナも笑みを返す。


 その時だった。


 教室の外から鐘の音が響く。


 キーン――。


 ほんの一瞬。


 セシリアの身体が、小さく揺れた。


「……え?」


 セシリアは額に手を当てる。


「セシリア?」


 リリアーナが声をかける。


「大丈夫?」


「はい……少し立ちくらみがしただけです」


 笑顔で答える。


 けれど、その顔はどこか青ざめていた。


 レオンハルトは眉をひそめる。


 ゲームには、こんな場面はなかった。


 だが今は入学式。


 緊張で体調を崩したのだろう。


 そう考えることもできた。


「無理はするな」


「はい」


 セシリアはもう一度笑った。


 誰も知らない。


 この小さな違和感こそが。


 すべての始まりだったことを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ