第三十五話 十二歳、それぞれの一歩
それから、さらに二年の月日が流れた。
私たちは十二歳になった。
背も少し伸びた。
子どもっぽさも少しずつ抜けてきている。
そして今年。
王立学園初等部へ入学する。
◇ ◇ ◇
「制服、似合ってる」
リリアーナはセシリアを見て素直に言った。
白を基調とした王立学園の制服。
少し緊張した表情のセシリアによく似合っている。
「ありがとうございます……!」
セシリアは照れながらスカートの裾を整えた。
「リリアーナ様こそ、とてもお綺麗です」
「毎日見てるから分からない」
「分かります!」
二人のやり取りを見て、レオンハルトが小さく笑う。
「そろそろ行くぞ」
「うん」
三人は並んで馬車へ乗り込んだ。
◇ ◇ ◇
王立学園。
ゲームの舞台となる場所。
だけど今は、まだ初等部。
貴族も平民も一緒に学ぶが、恋愛だの派閥だのとは無縁の、穏やかな空気が流れていた。
「すごい……」
セシリアは校舎を見上げる。
「本当に入学できたんですね」
「セシリアの努力だよ」
リリアーナが笑う。
「私たちは何もしてない」
「そんなことありません」
セシリアは首を横に振る。
「リリアーナ様とレオンハルト殿下がいてくださったから、ここまで来られたんです」
レオンハルトは穏やかに言った。
「これからは自分の力で進め」
「はい!」
その返事は力強かった。
◇ ◇ ◇
入学式が終わる。
三人は同じ教室になった。
「よかった……!」
セシリアは心から安心したように笑う。
「また一緒」
「うん」
リリアーナも頷く。
ゲームではあり得なかった光景。
主人公と悪役令嬢が、最初から友達として学園生活を送る。
未来は、少しずつ変わっていた。
昼休み。
三人で中庭へ向かう途中、レオンハルトが静かに言う。
「学園に入ったからといって、油断はするな」
「何かある?」
リリアーナが尋ねる。
「今はまだ何もない」
レオンハルトは周囲を見回す。
「だが、ゲームの舞台はここだ」
「そうだね」
リリアーナも小さく頷いた。
初等部では何も起こらない。
問題は数年後。
高等部へ進学してからだ。
それまでは。
三人で笑い合える毎日を、大切にしよう。
誰もがそう願っていた。




