第三十二話 王宮からの招待
魔力測定から数日後。
リリアーナは王宮へ招かれていた。
応接室へ入ると、そこにはレオンハルトと国王、王妃が揃っている。
「来たか、リリアーナ」
「おはようございます。レオンのお父さん、レオンのお母さん」
リリアーナが笑顔で頭を下げると、王妃がくすりと笑った。
「その呼び方も、すっかり定着してしまったわね」
「今さら変えられない」
リリアーナが真顔で答える。
「確かに、その通りだ」
国王は豪快に笑った。
「他人行儀に『陛下』などと呼ばれる方が落ち着かん」
「父上……」
レオンハルトが苦笑する。
「公の場では困りますが」
「もちろん、公の場では分かっておる」
国王は咳払いを一つすると、表情を引き締めた。
「さて、本題だ」
机の上に一通の書類が置かれる。
「セシリア・エヴァンズの魔力測定結果だ」
リリアーナは書類へ目を落とした。
光属性。
そして、極めて高い魔力量。
ゲームで見たとおりの結果だった。
「王立学園への特別推薦を正式に決定した」
「やっぱり」
リリアーナが小さく呟く。
「ああ」
レオンハルトも頷いた。
「父上から先に聞いていた」
「すでにセシリア・エヴァンズ一家には、王宮から正式な招待状を送ってある」
国王が続ける。
「間もなく到着する頃だ」
◇ ◇ ◇
しばらくして、扉が叩かれた。
「失礼いたします」
近衛騎士が一礼する。
「セシリア・エヴァンズ様、ご家族がお見えになりました」
「通してくれ」
国王の言葉に、扉が開かれる。
緊張した様子のセシリアと、その両親が部屋へ入ってきた。
三人は部屋の豪華さに圧倒されながら、慌てて跪く。
「セシリア・エヴァンズです」
「父のトーマス・エヴァンズです」
「母のエマ・エヴァンズです」
「本日はお招きいただき、ありがとうございます」
三人の声は少し震えていた。
「顔を上げなさい」
国王は穏やかに言う。
「そう緊張しなくてよい」
それでも、三人の肩の力は抜けない。
平民が王宮へ招かれるなど、滅多にあることではないのだから。
「セシリア」
王妃が優しく微笑む。
「あなたのお話は、リリアーナから何度も聞いていましたよ」
「え……?」
セシリアは驚いてリリアーナを見た。
「友達だから」
リリアーナは当然のように答える。
その一言に、セシリアの緊張が少しだけ和らいだ。
「さて」
国王は改めてセシリアを見る。
「本日呼んだ理由を話そう」
「はい」
「そなたは魔力測定の結果、非常に優れた光属性の適性と魔力量を持つことが判明した」
セシリアは息を呑む。
「その才能を評価し、王立学園への特別推薦を正式に認める」
「……え?」
思わず声が漏れた。
「わ、私が……王立学園に?」
「ああ」
国王は力強く頷く。
「学費、教材費、寮費など、学園生活に必要な費用は王国が支援する」
「そんな……」
父親が目を見開く。
「私たちには、とても払える額では……」
「だからこその制度だ」
国王は穏やかに微笑んだ。
「才能ある子どもが、生まれた環境だけで夢を諦めることがないようにな」
母親は目に涙を浮かべる。
「ありがとうございます……」
セシリアも涙をこらえながら深く頭を下げた。
「精一杯頑張ります!」
「期待している」
国王は満足そうに頷いた。
その様子を見守りながら、リリアーナは静かに微笑む。
ゲームと同じように、セシリアは王立学園への切符を手に入れた。
けれど、ゲームとは決定的に違うことが一つある。
彼女にはもう、心から信頼できる友達がいた。
その未来を守るためなら。
リリアーナも、レオンハルトも、決して運命には負けないと心に誓っていた。




